第10話 まずは携帯電話で入力
簡単にネット環境を作れる機器もあるが、他の諸々を考えたら回線を引っ張ったほうがいいだろうということになった。
「回線を引っ張って、パソコンを買って、セッティングして……環境が整うまでには時間がかかるな。まずは書けたところまで、携帯電話に入力しよーっと」
日曜日はゆっくりと作業ができる。
わたしはノートをベッドの上に広げて、書けた分を携帯電話からポチポチ入力した。
「待ってるのは勿体ないもんね。でもコレ、酔う~。携帯電話どうしても動いちゃう~」
フリック入力というのは、わりとしんどい。
「まずはここまで、と。3万文字は越えたな? そろそろ公開しながら様子を見てもいいかなぁ。久美子が言うには、人気がないようなら適当に話をたたんで次へ行ったほうがいいってことだから。まずは様子見がしたいなぁ」
投稿サイトの入力画面を利用したので、そのまま公開していけば結果はすぐに分かる。
「どうしよう? 携帯電話からの入力はシンドイから、パソコンが届いてからにしようかなぁ~。悩むぅ~」
わたしは投稿サイトの画面を見ながら悩んだ。
ネット環境を整える算段はできたものの、いきなりパソコン環境が手に入るわけではない。
ノートと携帯電話の画面を見比べて、今まで書いた分の小説が正しく入力できたかどうかを確認する。
「確認作業だってパソコン画面でするほうが楽なのに~」
わたしは溜息を吐いた。
「なまじ小説を書いたことがあるからか、慣れないなー。パンツァータイプだとサクサク書けるみたいだけど。わたしは感覚派のパンツァータイプじゃなくて、ガチガチにプロットを組むプロッタータイプだから……」
嘘です。
行き詰まりやすいパンツァータイプです。
だから今回は、プロットとキャラ表をしっかり作りなさいと美香たちに言われたわけで。
本来なら携帯電話でもサクサク書けるはずなのだ。
「でも書けぬ……ウーム、ウーム。肩に力が入っているからか?」
わたしはベッドの上で上半身を起こすと、お尻を滑らせてクルンと向きを変え、タンッとベッドから下りた。
「ラジオ体操とかすれば、いい感じになるかも? 体調管理も大事だよね」
ラジオ体操を思い出しながらテキトーに動いてみる。
「どうだろう?」
わたしは首を傾げた。
そう簡単に結果が見えたら苦労はしない。
再びフリック入力に挑戦する。
時間はたっぷりあるが、なかなか書き進めることができない。
「んー……携帯電話での入力は、集中してやるよりも、隙間時間にやったほうがいいかもなぁ~」
わたしは呟きながら、肩をコキコキ回した。




