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◆おまけ◆

甘々なものが書きたくなって、蛇足ですが。

 この人がわたしの婚約者殿、ねえ。


 王太子殿下の執務室の隣に与えられた部屋の隅で、お茶を飲みながらフィルの仕事が一段落するのを待っていたわたしはぼんやりと彼を見遣る。真剣な顔で書類を読み、時折り眉をひそめながら違う山から資料を引っ張り出して眺める。立ち上がったかと思うと書棚に向かい、本を取り出してぱらぱらと捲り、目的の頁をじっと眺め、また元の書類へと戻る。何かを書きつけたり、印を押したり。そうしてようやく次の書類へと向かう。


 剣を持ち近衛騎士と演習しているフィルもとても強くていつまでも見ていられると思っていたが、こうした文官然とした彼を見るのもまた良し、である。


「エルヴィーラ、エル?」


 はっ。すっかり見惚れてしまっていたわ。いつの間にかやるべきことは終わったようで、机の上はすっきりと片付けられていた。


「私の顔が何か?」

「いえ、あんまり素敵過ぎて、わたしなんかでは釣り合わないなぁと」

「……エル」


 形良い眉を寄せ皺を作ったフィルは、ソファに座るわたしの真横に腰を下ろし、肩を引き寄せた。


「私の愛しいエルヴィーラのことを貶めるのは感心しない」

「……だって」

「私はそのままのエルが好きなんだ。わたしなんか、などと言わないで。愛してるよ」

「…………」


 婚約してからというもの、万事この調子でフェルはわたしを褒め称えて想いを隠さずぶつけてくる。少々重いそれを受け止めきれずにあわあわしているわたしを見て、嬉しそうに口角を上げてえくぼを窪ませ、愛しげに目を細めるのだ。


 そのまま頬に手を添えられ美麗な顔が近づいてくる。こういう甘い空気にいつまで経っても慣れないわたしは恥ずかしさのあまりぎゅっと目を瞑る。笑いを含んだ吐息が唇にかかり、遅れてしっとりとした柔らかなもので塞がれる。あっという間にフェルの腕の中に囲われて、こちこちに固まったわたしを宥めるかのように大きく温かな掌が頭を撫で髪を梳き、背中を這って腰に回される。心臓の鼓動が跳ねているのが伝わりそうと思うだけで余計に身体に熱が溜まる。本当に、心臓に悪い人だ。どこまでいっても慣れそうにない。でも。


 抱き締めてわたしの髪にすりすりと頬を寄せているフェルの背に、そっと腕を回した。控え目過ぎるわたしの愛情表現に応えて、ますます力を籠めて抱きしめ返してくれたのだった。



ただいま婚約破棄だと言い放った第二王子のその後を書いています。

よろしければブクマを外さずそのままお待ちくださいませ。

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