3話 国境の女将軍
久々になろう使ったらUIわからなすぎ浦島太郎で草。
「いやー……すごいなあ。直接触れずに、なんの触媒も使わずに磁場に物理干渉するなんて……」
「はじめてみましたよ。それにしても……今の型? みて思ったんですが、お兄さん、ひょっとして淀の人?」
「……ああ、神州の生まれだが。それがどうした?」
「ああ、やっぱり! 神州って、東州連邦の昔の呼び名でしょう。それでかあ……通りで」
「淀の末裔の人は霊性感能力が高いんですってね。巫女や剣客が昔はたくさんいたって」
「東の海の剣士は触れずにモノを斬る、って噂を聞いたことがありましたけど、まさか剣もなしに磁場干渉できるなんてね。正直、見るまで信じられませんでしたよ」
「神州ってあれか? 革命で滅んだっていう……」
「碧血隊?」
「それだ。正規軍相手にたった一部隊で叛逆したっていう、イカれた奴らだろ」
「たった200名足らずの中隊だったんだろ。それで2年粘ったって話。隊長は生身で火装戦車をぶった斬るような人外だったって」
「まさかなあ、そんな話——あれ?」
◆
ーーーー昼下がりのラキトナ市街、香辛料と火装の熱気が混ざり合う路地裏。
人だかりの奥の屋台で、アスコがぐったりとしながらスプーンで麻辣湯をかき混ぜていた。
「……終了印、もらえませんでした」
「タダ働きか」
「タダ働きです……」
「だから言っただろ、“早くふけるぞ”って。危うくバレるところだ」
「だって、すごく困ってたじゃないですか……あああ、しびれるぅ……」
「それ、お前がやらかした分だ。ちゃんと全部食え」
「ひどい……人間ですか、あなた……」
「うるせぇ。今さらだろ」
「杏仁豆腐注文していいですか……」
「お前この流れでよく言ったね」
店先で湯気が立ち上る中、アヤナは周囲を警戒しながらスープを啜った。
—-追加注文の杏仁豆腐が運ばれてくるのとほぼ同時に、軍服を着た兵士が駆け足で店の中に駆け込んできた。
「ああ、居た! よかった!!」
その声に、二人はびくりと警戒色をあらわにした。
「申し訳ありません、そこの干渉師のお二人! こちら、終了印です! 押し忘れてしまって……!」
アスコがぽかんとした顔でスプーンをくわえたまま受け取った。
「わあっ、わざわざ届けにきてくれたんですか! でもどうして……」
「……俺たちがここにいるとわかった?」
兵士たちは息を整え、敬礼するように姿勢を正すと、こう告げた。
「少将閣下が、“そのお二人には必ず払うべきだ”と。先の経緯をご報告申し上げたところ、おそらくここにいるだろうから、と」
「方面軍第七管区司令、レティシア・マリア・フォン・エルネスト少将直々のお言葉です!」
「……っ!?」
アヤナが目を見開いた。
アスコも思わず、スプーンを咥えたまま「んぶっ」と変な音を立てた。
「なぜ……」
「なっ、なんで、そんな大物が……?」
兵士が敬礼を解くと同時に、背後から踏みしめるブーツの音が近づいてくる。
ゆっくりと現れたのは、豊かな金の巻き髪を肩で揺らし、抜けるような青の軍服を纏った女将軍。
その眼差しは鋭く、それでいてどこか愉快そうに微笑んでいる。
「ふむ……剣も持たずに空間を斬る男に、スプーンで磁場を制御するお嬢さん。どうやら、聞きしに勝る面白い組み合わせのようだな?」
アヤナとアスコが同時に呟いた。
「方面司令官、レティシア・エルネスト少将……!?」
◆
──次回、”再会”編へ続く。
第七管区方面軍……カルミナ連邦陸軍の地方配備部隊のひとつで、大陸南西部のトゥライナ王国国境地帯およびその周辺海域を防衛・監視する任務を担う。「火の理論」が実践運用された中でも最古参の軍団。




