第四章:祝! 人間化!!4
それからどのくらい、アークリルの家で過ごしただろうか。
家主の存在は感じつつも、あまり姿をみかけない。
時折魔物のような存在が二階に食事を運んでいるようで、部屋からでてこない様子。
(……いったい何してるんだろう)
不思議には思いつつも、特に用事がないので訪ねにはいっていない。
そんな暇もなく、毎日リルが慌ただしかった。
「ねぇねぇ、これ読んで!」
(……また難しいのを持ってくるな)
一階の散策は、目が覚めた次の日に済ませてしまった。
玄関の入り口から始まってリビングに調理場、それとお風呂場がある。今となっては寝室として使わせて貰っている一室と、もう一部屋。
それだけでも広いのに、地続きに謎の扉が一つ。
その先には、全面ガラス張りの温室があった。
外の一面銀世界とは異なり、様々な植物の緑とカラフルな花や果実。中には触れるのも躊躇う禍々しい色合いのモノもあって、好奇心旺盛のリルを手放しにするには危険と判断して安易に立ち入っていない。
それもあって一日の大半をリビングで、リルとソファでまったりしている。
どこから引っ張ってくるのか、かなり分厚く古びた表紙が印象的な本を読む。
もとい、ただ単にページを捲って、読むふりをしてあげていた。
言葉を発せられるようになったが、残念なことに文字が読めないでいる。
(魔物の生態について、かな……?)
それでも文字に目を通す環境が、知識と見識を広げることができた。
何となく書かれていること、添えられた絵を見ながら想像を膨らませていく。
「リル、おいで」
「はぁ~い」
リルを膝の上に乗せて、魔物のような存在が用意してくれる譜面台に本を広げた。
たったそれだけでもリルは嬉しいのか、鼻歌交じりで両脚をバタつかせる。
(……こんな日がいつまでも続けばいいな)
今となっては魔物の姿をしていた時、常に神経を張り巡らせていた。気を抜けば自身の命はなく、ただ生きるために他の魔物を狩って喰らう。
そんな日々が続くかと思いきや、こうして人間の身体を手にしている。
まだまだ分からないことばかりだ。
ただ一つ言えるのは、膝の上に座っている存在がかけがえもない。
「ねぇ、次のページ」
「わかった」
肩越しに見上げてくる視線に頷き、指示された通りにページを捲った。




