〜お騒がせお嬢様でも魔法はSランクなので世界救いに来ました〜
1、start
春の桜が散っていく中、晴れて由緒正しき青の国ブルースクールへの入学を許可された生徒たちが入学式へと足を進めている。あずり・フォンシュタインもそのうちの1人だった。彼女の父親は緑の国に本社を置くフォンシュタイン銀行の総裁で、母親は倭の国で最も魔力があると言われる明神明神、終夜終夜、東雲|東雲東雲の御三家の一つである東雲家の次女だ。そのためあずりも幼いころから精霊を呼び出したり、時間戻しなどの超A級の魔法をいとも簡単に成功させてきた。まさに天才少女。
2、クローン「レオン」
「レオ〜ン!! クラス入るのすっごく緊張する! どうしよう〜」
レオンとは、あずりが2歳の時に家にお父さんが連れてきたクローン。それからずっと一緒にいるなんでも言い合える男の子。あずりが小さい時はそれに合わせてレオンも小さくなっていたのだが、あずりが成長すると共にレオンも成長し、いまでは姿を表すと誰もが二度見するほどの超絶イケメンである。あずみはこの春、A〜Gに分けられているブルースクールのC学年(18歳)に入学するため、レオンは大人っぽさ全開の年上風イケメンになっている。
「大丈夫。あずりなら誰とでもすぐに友達になれるよ」そう言ってレオンはとろけるような笑みをこちらに向けてくる。
「レオンはいいよねー。 姿を見れば誰もが振り向くイケメン!! だなんてさ。」
この度レオンはあずりの護身という目的でちゃっかりブルースクールに入学している。
その時、ふいに風が強くなった。
「こういう時って何か嫌なことが起こるんだよね」レオンがつぶやく。
「ウソ!? 変なこと言わないでよ。新しい学校生活の初日だよ? 嫌なことなんて絶対に起こってほしくない!!」
ぶつぶつぐちぐち言いながらも廊下をしっかりと右側通行し、恐ろしい段数の階段を登り切り、2人はようやくクラスへと辿り着いた。あずりはCー1組、レオンはCー2組。クラスの前に貼り出された名簿を見て自分のクラスと出席番号を確認するとレオンは大きくため息をついた。
「あーあ。クラス別れちゃったねー」
あずりはというとそんなことまるで気にしていないとでもいうようにレオンの言葉を復唱する。
「クラス別れちゃったねー」あずりの脳は時速何100キロかで高速回転していた。
ーーお父様に言われていたことを成し遂げるためには・・・・・・。
いた!その視線の奥先には別の男子生徒が立っていた。あずりが父に言われたことを実行しようとしていることに勘づいたレオンも頭を高速回転する。
ーーあずりをあまりあの男子生徒と近づけずに言われたことを成し遂げるには・・・・・・
2人が教室の前でほんの数秒立ち止まり、それぞれの教室の中に入っていく。
3、「M」
ーーよし。あの人は同じクラスね。
「おはよう。今日からよろしくね!」
ーーまずは第一印象っと。
「・・・・・・」
ーーっておい!無反応?これは手強い。
「あ、ごめん。自己紹介忘れてた。私、あずり・フォンシュタインっていうの!よろぴくね!!」
男子生徒の眉が一瞬ピクッと動く。
「フォンシュタインって名前、珍しいね。」
ーーさっそく食いついたか。
「そうかな?まあ、名前なんて正直どーでもいいし。あなたの名前は?」
男子生徒の眉がまたピクっとなる。
「名前なんてどうでもいいって言ってるのに、僕の名前を聞くなんて君、面白いね。いいよ。教えてあげる。僕の名前はM」
ーーはあ?こいつふざけてんの!?
Mと名乗った男子生徒は試すような、何か面白いことを仕掛けているような目であずりを見つめている。
「まあいいや。これからMって呼ぶね!よろぴく!!」
4、移動教室は戦闘訓練
あずりが「M」と名乗った男子と話しているのをあずりの可愛らしいハートの髪留めの中に取り付けておいた盗聴器でレオンは当然のように聴いていた。と同時に腹立たしくなっていた。
ーいくら父に言われたことを実行するからってそんなに馴れ馴れしく話さなくてもいいはずなのに・・・・・・
「みなさん、席についてくださ〜い!! 今から先生の華麗なる自己紹介をしますよ〜」
ーーなんだ、こんなまともだとは思えない奴が俺の担任なのか?
「はい!みなさん、ごきげんよう。私はC-2組担任の伊藤と申しますの。覚えてね♡」
伊藤と名乗った女性教師はここぞとばかりに生徒にウィンクや投げキッスを送ってい生徒から訝しげな視線を集めている。
「あら、今年のC学年は元気がないのかしら。もう〜困ったちゃんね。いいですか?これから新しい日々が始まるんですのよ。もっと明るくにこやかに!!」
教室内に微妙な沈黙が訪れる。そんな沈黙を破るかのように教室のドアが開け放たれた。
「あら、近藤教頭先生どうなさいましたの?」
近藤と呼ばれた小柄な女性は伊藤とは対照的な厳格そうな女性だった。
「何を言っているんですか!新学期、新学年の初日に出席簿を忘れるだなんて恥を知りなさい!伊藤先生!!」
ーー生徒の前でも関わらず怒るなんてこのおばさんすごいな。
近藤教頭はそのままハイヒールをカツカツならして教室を出て行った。
「あ〜あ。ミスっちゃったわね。まあいいわ!さて、そろそろ今学期の授業の内容を皆さんにお伝えしないとよね。え〜っと今学期の授業はまず最初に魔法動物について学んでもらい、その次に魔法戦闘の仕方を学んでもらい、さらに花譜グループという軍事用アンドロイドを開発する会社が開発した最新の飛行型戦闘アンドロイドに乗ってもらって、今学期末までにはそれを乗りこなせるようになってもらいます」
生徒たちは全員口をあんぐり開けている。
ーーこんなの軍事訓練所並みじゃないか。この学校は何を目指しているんだ。
「早速で悪いのだけれど、もうあと10分後に魔法動物に関する特別講義を受けてもらわなくちゃならないの。持ち物は何もいらないからダッシュで2回の第三講義場に向かってちょうだい!ダッシュよ!ダッシュ!!」
ーー嘘だろ。あと10分であの修羅場を潜り抜けて第三講義場まで辿り着けるわけがない!
全生徒が思ったことだった。