癒やしの火
明けまして!!!おめでとうございます!!!
「シシー!?どうしたんだ、真っ黒じゃないか!」
「色々あった。熱が出たって?」
「ああ、そうなんだ。アッシャー卿とモンロー卿が……って、お前、言葉が…?」
アッシャー卿とモンロー卿の部屋の前で待っている騎士たちが、足早に姿を現したシシー・ルーを見て腰を上げる。
が、服のあちこちが煤に染まり、目に怒気を滲ませたその人に何人かの体が中途半端な大勢のまま固まった。
さらに、東の訛りはあるものの単語のみの会話がなくなり、滑らかに紡ぎ出される繋がった文章が彼女の口から飛び出して来たので混乱が増していく。
ようやく真後ろに追いつき、事情の説明を求める視線たちをミグに任せ、熱の出ている2人の部屋にさっさと入って行ったシシー・ルーの後に続いた。
部屋の中に入って一歩、彼女の足が止まり、眉間の皺がわかりやすく濃くなる。
2人の様子を見るより先に四隅の香炉に歩を進め、いままでにない量の薬葉を掴んで燃やしていった。
「薬効が薄くなってる。誰か窓を開けたか」
「わ、私が。煙が濃くて体に悪いかと、換気を」
騎士の一人が恐る恐る手を挙げたのを一瞥した彼女が、ふう、とため息を吐いてほんの少し開いた窓を閉め、出来うる限り冷やされている2人を彼女が覗き込む。
さっきまで熱に揺れていた黒髪が水が滑るようにさらりと垂れた。
「熱が出たのはそのせいだ。この煙は篭らないと意味がない。朝に一度、窓を開けるぐらいがちょうどいい」
そんな、と部屋に落ちた重い声に返事はない。
寝たままの二人の目の下を引っ張って何かを確認したシシー・ルーが、こめかみを抑えてうんうんと悩み始める。
あまりに深刻そうなので声をかけたが『今考えてる』と手で制されては何も言えない。
「まとめて治すしか…いや…それだと…だから…頼むよ…」
ぶつぶつと誰かに相談するような言葉がシシー・ルーから出て来た後、疲れ果てた息を吐いた彼女は私に向き直って、小さく黒い何かを差し出した。
たった一枚のコイン。
どの国にも流通していないそれをじっと見つめ、手にとって表面を撫でれば、ドラゴンを剣で刺し殺している紋章だとわかった。
「この2人を助けられたら、その硬貨を持っている奴らを見つけて欲しい」
「…この紋章の意味は」
「分からない。ただ、どこかの国の裏組織だ。…そいつらは3年前からずっと、竜たちを捕まえてる」
「!」
はっとしてコインからシシー・ルーに視線を移せば、切実な、きっと私が部下を助けたいと願っている時と同じ感情を黒い瞳に宿していた。
黒いドラゴンに乗り、炎の熱さを物ともせず立ち向かっていた彼女の背中が脳裏によぎる。
『人間嫌い』のドラゴンがいる住処。
片翼を無くしたドラゴンは、今思えば痛みに暴れるのを宥められていたような。
医療の知識があり、薬も道具も持っているシシー・ルー。
全ての点が繋がった気がした。
彼女はドラゴンたちの傷も治しつつ、私たちの手当てもしていたのだろう。
方や巨大な体を持つ人外の痛みに寄り添い、方や見知らぬ男たちを見て回っていた。
目に見えて疲れるはずである。そして。
(彼女にとっての敵かもしれない私たちをそばに置いたのは、情報を求めていたのか)
国が裏にいるなら、下手に攻めれば国全体を敵に回す。
3年と言っていた。3年もずっと、正体不明の組織を追い、竜たちを助けて回るなど一人では雲を掴むようなものだろう。
たった一人では辿ることさえ難しい敵の正体を、彼女はずっと追っていた。
そんな時にヒュミル山脈の近くに私たちを見かけたものだから、傷の手当てのついでに手がかりを掴もうとしたのかもしれない。
いや、きっとそうだ。
ずっと『なぜ私たちを助けてくれたのか』と思っていた。
言葉を拙くしていたのは『わざと』
そうすることで『シシー・ルーは言葉が分からない』と思わせ、私たちが口を滑らせるのを待っていた。
もし『敵』ならば目的を問い詰め、生きて返さないように。
もし『敵ではない』ならば、恩を売って協力させるように。
ただの親切心だけならどう礼を返そうかと考えていたが、打算ありきの親切心だったか。
唯一の手がかりであろうコインを見せたということは、少なくとも『敵ではない』と判断されたようだ。
「…二人は助かるのか」
「分からない。ただでさえ体力が尽きかけてる。今日が山場と見て良い」
けれど『最善』を尽くす。
じっと私だけを見つめる黒い瞳が、少しだけ不安に揺らいだ。
新たに持ってこられた冷たい水で額や首に浮く汗を拭いている彼女の手に迷いはなく、脅すような不穏な気配もない。
正直に答えている。そんな彼女を信じたいが、『国』の後ろ盾のある組織を探るとなるとそう簡単に是とは言えなかった。
私は次期『辺境伯』だ。すでに領主代理を任されており、私の判断は北方の、ひいてはシドニア騎士王国も巻き込むことになる。
アッシャー郷とモンロー郷を改めて見やった。
一人は領都に妻子がおり、たしか妻は第二子を懐妊中。
一人は遠い故郷に兄弟姉妹がおり、給金の一部を仕送りしていたはず。
「、『助けられたら』の話だな?」
「そうだ」
(もし、ここで『否』と言ったなら)
国か、仲間か。
憧れの『英雄』もこのような決断をし続けたのだろうか。
逸話はいくつも、武勇伝は山のように。
大勢を優先して少数を切り捨てた話も、少数を救った結果、窮地に陥った話も、少数も大勢もまとめてすくい上げた話もある。
この場合は、どれが正解なのだろう。けれどただ一つ分かるのは。
(今の私に、仲間を見捨てて遺族に向き合う覚悟はない)
強く拳を作ってぐるぐると考えて分かったのは、その恐ろしさだった。
妻子は泣くだろう。唯一の夫と父親を同時に無くす悲しみと、これからの生活の不安で、騎士団から支給される僅かな手当ては無に帰す。
故郷の家族は呆然とするだろう。突然、兄であり弟であり子でもある男を無くし、同じくこれからの生活に苦労する。
罵られるだろう。恨まれるだろう。なぜ、どうして、助けてくれなかったのかと。
正解を目指し、理想を追いかける自分の足元が深い深い穴にはまったような心地だった。
こんなこと、初めてである。
少し想像して動揺するのだから、やはりまだ私には覚悟が足りないのだろう。
足りない覚悟は何で補えるだろう。
もう一度ぐるりと考え、一縷の望み、希望、というものに賭けることにした。
『大勢も少数もまるごとすくい上げた話』もあるではないか、と。
「、……、…………………二人を頼む」
「よし」
長い長い間を空けて『是』の答えを返したら、すぐに返事が飛んでくる。
ドアの外側からこちらを覗き込んでいる男たちの喉が一度唾を飲み込んだが、私の決定に異論は飛んでこなかった。
バルド郷が物言いたげに手を伸ばし、ぐっと唇を引き締めて言い淀んだのが見えて、一つ黙礼をする。
今は何も言うな。正しくそう伝わったようで、彼もまた一つ頷いて後ろへ下がった。
「えっ、ちょ、シシー!?何してるんだ!?」
「!?」
反射的にドアに向いていた目を前に向ければ、シシー・ルーが熱に唸るアッシャー郷を肩に担ぎ、モンロー郷の腹を小脇に抱えて部屋を出ようとしている。
相変わらずとんでもない怪力だが、今はそれどころではない。
治すと、助けると、さっき言ったばかりなのにこの狼藉である。
やはりまだ意識が戻らないのか、担がれている二人は唸るだけで抵抗する素振りはない。
「違う場所で治す」
「違う場所って、まさかドラゴンの住処でか!?」
「そうだ。あっちも時間がない。早く行かないと竜もこの二人も助けられない」
制止の声も聞かず、来た時と同様にさっさと歩き出してしまう彼女を追いかけた。
迷いもなく立ち入り禁止の暗闇へ姿が消えたので、このままついて行こうかと迷っていると、一言声が聞こえる。
「ついて来たければ来れば良い。あいつらには話をしておいた」
この短時間でどう話をつけたのかまるで分からない。
分からないことだらけだが、一度ならず二度も彼女を信じるのだ。
怖いだの、おかしいだの、考えている時間こそが無駄である。
希望者はついて来るようにと指示を出し、柄に手をかけたまま彼女の足音がする方向へ進んでいく。
私の後に続いた足音は、おそらく動ける者全てついてきたのだろう。
ひそひそという声は最初だけ。
『立ち入り禁止』の道の出口が見えたころにはしんと静まりかえった。
自分が何か、大きな事を見届けている気がずっとしている。
出口の向こう側に現れた景色は二度目だとしても、いや二度目だからこそより息を呑んだ。
この光景を初めて見る者たちからは感嘆の息が漏れる。
さっきはドラゴンと湖ばかり見えていたが、草木のあちこちに人の手を感じる。
畑も、太陽石のはめ込まれた石柱も、壁の中の穴に水を引き上げるための滑車らしきロープも、ドラゴンたちの寝床であろう洞穴の入り口にも、遠い昔の『人がいた形跡』
(『竜の民』の村、本当にあったのか)
天井の大きな穴から流れ込んでくる風に前髪が揺れた。
呆然と立ち尽くし、身を隠さずともドラゴンたちは襲ってこない。
たまに近くを飛んで睨みつけるように縦長の瞳孔を動かすドラゴンはいるが、息吹を出したり、威嚇の声を上げたりはなかった。
どうやら本当に話をつけてくれたようである。
「こっちだ」
シシー・ルーの声が左側からしたのでそちらを向けば、先ほどは目に入らなかった通路があった。
壁際を三人横一列に並んで歩けるほどの幅を持つ通路もまた人の手により作られている。
柵がないのでうっかりバランスを崩すと森の中に落ちてしまいそうだ、と思ったところで今いる場所が中々高いところに位置していることに気づいた。
そっと端の方から距離を取り、どんどん先へ歩いて行く背中を追いかける。
「!?」
突然、目の前に黒いドラゴンが降りてきた。
大人四人分ほどの大きさで、ドラゴンとしては小型の部類。
危うく後ろに倒れかけたが、何とか踏みとどまる。
大きな翼を優雅に折りたたみ、黄色い瞳をぎょろりと動かしてこちらを睨めつけ、観察しているような素振りを見せた後、体を反転させてシシー・ルーの隣に並んだ。
「そう言ってやるな。匂いはしょうがないだろ」
「グルルルルル…」
「分かった分かった。全部終わったら風呂に入らせるよ」
「ガア、ギャギャア」
「……自分でも分かってるさ」
黒いドラゴンの喉から飛び出したのはワイバーンの鳴き声と似た鳴き声だった。
コウモリの鳴き声を野太くしたような音は、まさしくそうだ。
鳴き声の事より、話している。その事実に面食らう。
人と、ドラゴンが。互いに違う音を使いながら、会話をしている。
シシー・ルーが『竜の民』なのはもう信じているのだが、いくらドラゴンと話ができる民族だと知識で知っていても実際目の前で見ると不思議な光景だった。
黄色い目が再びこちらを見やり、人が片眉を上げるように片方の目を大きくし、片方の目を小さくした後、ふん、と鼻を一つ鳴らす。
なぜか、馬鹿にするように笑われた気がした。
「今、あのドラゴンに笑われた気がしたんですが」
「奇遇だな。私もそう思う」
いつの間にか近くにいたミグがこめかみをヒクつかせながら呟いたのに同意するも、不思議と笑われたことに腹は立たない。
『竜の民』はお伽話の世界だ。伝説でしかない存在で、事実そうだ。
そのはずだった。
アッシャー郷とモンロー郷のことが気にはかかるけれど、『伝説』が目の前にあることに頬が緩まずにはいられない。
思わぬ光景に少しだけ気持ちに余裕が出たようで、彼女とドラゴンを追いかける足が軽くなる。
シシー・ルーたちが坂道となっている通路を下りきり、壁の中の空間に入って行った。
森と同じ高さの地面ではなく、私たちがいた場所を三階だとすればちょうど二階に下りてきたような高さの空間だ。
再び暗闇の中を進むと予想し、松明を持ってこなかったことを悔やむ。
けれど、空間を覗き込んでその心配は杞憂に終わった。
等間隔にならぶ、壁に埋め込まれた水晶が淡い水色の明かりを浮かべて道を照らしている。
王都でよく見るランプに似たものだ。
魔力が込められた石と、明かりを灯す魔法陣を刻まれて暗い場所で辺りを明るくする魔道具。
よく見るランプと違うのは、水色の明かりから妙な温もりを感じ、歩けば歩くほどに体が軽くなっていくこと。
「、あれ」
「どうした、ミグ」
「……………腕が」
ミグの右腕は三角巾に包まれている。
もうほとんど骨がくっついていて、感覚的には元通り、けれど実際は小さなヒビが入っているようなものだから動かさないようにしていた彼が、何を考えているのか三角巾から腕を抜いてぶんぶん振り回し始めた。
裂傷もあったはず。血は止まっているがかさぶたは今も尚、残っているはず。
ぎょっとして止めるよう言ったが、口をぱかりと開けたミグが私の腹部をつついた。
ここもまたヒビが入っているからあまり大きな動きをしないように気をつけていた所である。
驚いて背筋が伸びて痛み出すであろう腹を押さえるも、頭を突き抜けるような衝撃はない。
「あれ、朝、指を切ったはず…治ってる…?」
「俺も。まだかさぶたが柔らかかったはずなのに」
「痣が無くなった…」
口々に『傷が治った』と言う部下たち。そしてそれを実感している自分自身。
添え木のついている足先で地面を軽く叩く。
まだ鈍い感じはあるが、痛みはない。全快とまでは行かないが、確実に『今朝より』治っている。
「どういう、…まさか、全部がそうなのか、!?」
「何です、ジークハイン様、全部って何が」
「この明かりだ。ただのランプ代わりだと思ったが、おそらく全てに治癒の魔法陣が刻まれている」
「……はい!?めちゃくちゃ貴重じゃないですか!?」
魔力は魔法を使うに当たって重要なエネルギーである。
そのエネルギーを込められる石の種類は限られ、その多くがルビーやサファイヤなど、一定の輝きを持つ。
そして、石の種類によって刻める魔法の要素が限られるのだ。
簡単に言えばルビーなら『火』の要素を刻めるので火を付けれるし、サファイヤなら『水』なので水を出したりといった具合に。
実際に魔道具に組み込んで使うならもっと複雑らしいのだが、それはさておき。
『治癒』の力を持つ石はさらに限られる。
そもそも『治癒』の魔法陣が難しい。
切り傷に特化した魔法陣であったり、病に特化した魔法陣であったりが必要なため基本的に石一つに対して治癒の効果は一つ。
今のように、切り傷に骨折に捻挫にと、すべての傷に対して効果のある魔道具など国宝級の代物である。
「『竜の民』だから、でしょうか?」
「違うだろう。明らかに彼女自身の技術だ」
石が埋め込まれている位置が高くてよく見えないが、真新しいもののようだった。
新たな謎が増えてしまった、と頭を抱えつつ、傷が治って喜ぶ声たちを静める。
騒ぎを大きくして、せっかく大人しくしてくれているドラゴンたちが暴れ始めたら今度こそ一貫の終わりだ。
アッシャー郷とモンロー郷の心配をしている場合ではなくなってしまう。
水色の明かりに照らされた道はそう長くはなく、すぐにシシー・ルーに追いつくことができた。
「、こんなにいたのか」
私たちの隔離されている空間の何倍あるだろう。
縦にも横にも大きいその空間に、およそ中型のドラゴンが見える範囲で8頭、体を丸めて翼を畳み、蹲っていた。
片翼が無いものは荒く息を弾ませながらぐったりしている。
他にも、見て分かるぐらい鱗を無理矢理はがされたものや、爪を切り取られたもの。
両目から血を流しているものさえ。
ドラゴンの巣穴であるはずなのに、あまりに痛々しい光景に胸が狭まる。
これを全て『人間』がやったのかと思えば、悍ましいの一言では到底表せられない。
通ってきた道と同じように、空間全体が水色に薄ぼんやりと明るい。
空間の中央にシシー・ルーが担いでいる二人を降ろして地面に横たえた。
適当な布を丸めて首の裏に差し込んだ彼女は、さっと立ち上がって手に赤い火を灯す。
う、とアッシャー郷の呻きが木霊したのに合わせて、その火が高く、大きく燃えさかり、私たちのいる部屋と同じよう、薪に移っていった。
ただ。
「青い…?」
シシー・ルーの手から移されていく火は赤から真っ青に変わっている。
治癒のそれより濃い青だ。
その青が山のように積まれている薪に燃え広がっていき、あっという間に彼女の背を、一番近くにいるドラゴンの頭より高い場所まで輪郭を広げていった。
一気に空間が明るくなり、壁や地面の影を浮き彫りにしていく。
熱は感じるのに熱くない。温かい、というべきか。
治癒の魔法陣が刻まれた石と同じ温もりを感じた。
「ズメイ、支えてくれるか」
「グルル」
焚き火に火を移し終わったシシー・ルーが、焚き火のすぐ傍、横たわる二人の近くに座り込み、彼女の背後に回った黒いドラゴンに声をかける。
支え、とは物理的に『支える』ことのようで、ドラゴンの影に彼女の姿が重なった。
守るように傍にいるドラゴンに近づくのは躊躇われて、空間の入り口から数歩進んでその場で止まる。
何をするのか、と問いかければ『一気に治す』と答えが返ってきた。
「ここでやらなくても良いが、竜たちも時間がない。まとめて治す」
「まとめて…?一体どうやって」
「私の魔法で」
「!…治癒の魔法が使えたのか」
「言っておくが、竜にはすぐ効く。人間には効果が薄い。集中すればちゃんと効くから、話しかけないでくれ」
「、分かった。私たちはどうしたらいい?」
「何もしないでいい」
しないでいい、ではなく『するな』と聞こえたけれど、反論する気も起きない。
事実、何もできないのだ。
青い火が彼女の『治癒の魔法』だというなら、信じるしかない。
一つに括っているだけの髪を一本の棒でまとめ上げたシシー・ルーが、ポンチョを脱いで適当に放った。
袖がない造りのインナーを着ていたのか、青い色の明かりなのも相まって、見ているだけだと寒そうである。
顔の下半分を覆うマスクはうなじと鎖骨まで隠すタイプなのか、腕の寒々しさとアンバランスだ。
ふと、綺麗に鍛えられた背中に違和感があって目を凝らせば、両肩と、おそらく肩甲骨をびっしりと覆っているであろうタトゥーが見えて。
(罪人の、…………いや、違うな)
シドニア騎士王国での罪人は、罪の度合いによってタトゥーを入れられる。
軽度ならば線が一本。重度ならば幾何学模様になるように。
彼女の背中にあるものはそのどれとも違った。
ドラゴンの鱗を模した模様に小さな花が連なる不思議なデザインは、思わず魅入ってしまうほどの芸術作品である。
(…女性の体をじろじろ見るものではないな)
すらすらと話し始めた彼女はもう子どもには見えない。
若くはあるが、きちんと成人している一人の女性だ。
名残惜しく思いながら視線を外し、仲間たちの集まる場所へ戻ってその場に座る。
時間がかかることは彼女の雰囲気から感じ取っていたので、最後まで見届けるつもりで。
パン。と一人分、手を叩く音がした。
音がしたと同時に青い火がより一層、高さを増す。激しく燃えさかる。
こちらへ長く伸びる影で、シシー・ルーが手を合わせた状態のまま集中しているのが分かった。
次から目線が交互にくるようにします。(なるべくわかりやすさを心がけます…!)
シシーのタトゥーについては後々描きますので、1話分ぐらい、お待ちください~
ーーーーーーーーーーーーー
沢山のPVと評価をいただきありがとうございます。
とても励みにさせていただいています。
不定期更新で申し訳ないですが、
必ず最後まで書き切りますのでどうぞよろしくお願いします。




