2-8-4 祭りまで、あとひと月
2-8-4 祭りまで、あとひと月 耳より近く感じたい2
ーー7月第3週月曜日(7/13)
東光大学の学生食堂で、話をしている大智とバンドのメンバー。
慎司がノートパソコンの画面に出しているスケジュールを見て言う。
「…この日と、この日と…この日に集まって合わせるだろ?
19日と26日は?」
栄太郎が首を振る。
「26は俺、夜まで来れない、親戚の結婚式だから」
修が聞く。
「そっか、仕方ないからその日だけは、昼から夕方までナルに来てもらうか?」
大智は険しい顔をして言う。
「いや…、まだ確約できない。
バイトが決まると、分からない」
栄太郎が聞く。
「夏休み、バイトするのか?
週5でやってなかったか?」
大智が言う。
「ソッチは続けて、もう一つバイト増やすって言ってた。
俺がバイトしてるから、生活は大丈夫なのに、何で増やすのか分からない」
修は言う。
「デートとかで金がかかるとか?」
「それくらいは今でも十分。
バイク買った後も、バイトは続けてるし」
「来年受験だから、今のうちに貯めとくとか?」
「…少し前から、アイツ変でさ」
栄太郎が大智の肩に手をやる。
「大智、ナルと一回ちゃんと話せよ。
お前が集中出来ないんじゃ、俺達も困る。
今回はサポート要らないけど、近いうちに呼べよ。
アイツが何か溜めこんでるなら、叩いて発散させないとな」
「ああ、そうだな…
夜、聞いて見るよ」
大智はスマホを操作し、弟、成斗と共有しているカレンダーを確認する。
そこで、大智のスマホが電話の着信音を鳴らした。
「ちょっと向こうで話してくる」
大智は席を立つ。
大智が電話で席を外した後、慎司が栄太郎と修に話す。
「11月に最低でも1回は出来るように、今ライブハウスと交渉してる。
日程が決まったら、直ぐにSNSに出す」
修が訊く。
「場所は?」
「下北沢」
「キャパは?」
「オールスタンディングで250人」
「え、…まさか、ワンマンでするつもりか?」
「まさか、いくら何でも。
池谷はたまたま決まったようなもんだし、対バンが常連だったから、800でもやれたと思ってる。
ライブハウスでの経験は池谷の1回だし、まだ挑戦しないつもりではいる」
「つもりって、」
「日にちによっては、可能性がある。
池谷でのライブの動画、ナルに撮って貰っただろう?
それ以外に客がスマホで撮ってたみたいで、何本も動画サイトに上がってて、結構ハートがついてる。
それで、店の人が今度の軽音祭を見に来るって言ってる」
栄太郎が言う。
「祭りまであとひと月か、気合入れて演らないとな」
慎司は2人に言う。
「11月の事は、まだ大智には言わないでくれ。
集中できてないあいつに、現時点で余計な情報を入れさせたくない。
ライブを決めるために、先ずは軽音祭を成功させないといけないから。
修、大智の様子を見て、話せる時が来たら、例の件を話せ。
タイミングは修に任せる」
修は困り顔で言う。
「あいつがすんなり受け入れてくれるといいんだが」
-
大智は食堂から移動しながら電話に出る。
[…もしもし? 大智?
いきなりごめんね?
お願いがあるんだけど…]
電話を掛けてきたのは、親戚のルリだ。
「ルリ? 何、お願いって、今忙し_」
[ダメ! この間服あげたでしょ?
お古だけど。
助けてあげたんだから、コッチも助けてよぉ]
「服?」
(服って何のことだ?)
[そうそう、あれでセイちゃん助かったんだから、
大智からセイちゃんにお願いしてほしいの]
(成斗が助かった?
…ああ、雨の日の)
「お願いって、何を?」
[ん? バイト]
「バイト? 成斗にバイト?」
[そう、一人男の子が急に欠けちゃって。
今、手当り次第声かけてるけど、決まらなくて…。
20日新規オープンだからピンチなのよぉ]
(変なバイトだったら成斗は無理だ)
大智は確認する。
「…どんなバイトなの?」
[ん? カフェ、夜なら賄いも付いてるけど。
今やってるタコ焼き屋は夜でしょ?
10時オープンからお昼挟んでのシフトお願いしたいって。
4時間以上。
時給は✕✕✕円以上、いいと思うよ
私も同じ時間帯だから]
「…あいつがするか分かんないけど、話してみるよ」
[やったぁ! ありがと大智。宜しくねー]
ブツッ、
(ルリが一緒なら様子を聞けるけど…
成斗がするかな、)
大智は直ぐに、弟に電話をかける。
プッ、ツー、ツー、ツー…
話し中だ。
もう一度かける。
プッ、プルル…
今度は繋がった。
プツッ、
[…兄さん、何?]
「成斗、お前今、何処に電話を掛けてたんだ?」
[…別に]
「まあいいや、バイト新しいの探すって言ってたけど、もう決まった?」
[…まだだけど]
「ルリが…カフェのバイトやらないかって、さっき電話がかかってきた」
[…うん]
「午前から午後で、最低4時間」
[…時給いくら?]
「✕✕✕円から」
[…場所は?]
「あ、悪い、聞いてない」
[…自分で聞くから、あとでルリ姉の番号送って]
「ああ、あと成斗、夜お前のバイト終わって帰ってきたら、少し話そう」
[…わかった]
プツリ、
(…やっぱり成斗のやつ、変だ
親父に会ってからか?)
「…だから親父には成斗を会わせたくなかったのに」
大智は悶々としながら、ルリの電話番号を弟のチャットに送り、メンバーのところに戻った。




