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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-7-1 夏休みまでは、一緒に

2-7-1 夏休みまでは、一緒に 耳より近く感じたい2


ーー体育祭後、週明け月曜日


 音波はいつも通り電車を降り、改札を抜け東口の階段まで行く。


 同じ制服の女子が数人、一箇所に集まっている。

 まだ初々しい感じがするので、多分1年生だろうか。


 柱の向こうに誰か立っていて、その人に女子が話しかけている。

 階段を降りていくと、聞き慣れている声がしてきた。


「…悪いけど、それ以上俺に近づかないでくれる?」


(…あ!片山くんが女子に囲まれてる)


 音波は急いで駆けつける。

「片山くん!」


 片山は、にじり寄る1年女子の前に、バッグを持って壁を作っている。


「ああ、音波」

 眼鏡をかけている片山は、音波が来てくれてホッとした顔になる。


 周りにいた1年生が、

「誰、この人、どういう関係?」

 という表情で、音波のことを上から下まで見る。


 1年生たちの視線を痛く感じながら音波は言う。


「どうしたの? 片山くん、

 今日は約束してなかったよね?」


 すると、片山は恥ずかしがらずに平然と口にする。


「俺が音波に早く会いたかったから」


「…、エエェェ?!」

「うそ、その人…彼女なんですか?」

「ショック…」

 1年生は、口々に言う。


 片山は音波に近づき、片手で優しく抱き寄せる。

「おはよう、音波…2日ぶり」

「ひゃっ、」


ザワッ…

 周囲の人の注目も集めてしまった。


(また、片山くんったら…恥ずかしい…)


 音波の顔は真っ赤になる。


「行こう」

 1年生たちの質問をそのままにして、片山は音波と手を繋いで歩き出す。


 片山の行動、接し方は独特だ。


 恋人同士になって、思う事…。

 人前を気にせずに抱き寄せたり、

 平気で照れるような言葉を口にしたり、

 音波に対しての愛情表現がストレート過ぎる。


 ドキドキするような経験も、淡い恋心を抱くことも一切無い中学時代を過ごしたからだろうか。


 多感な時期に男友達とナニの話をすることもなく、ただ普通に学校に行けるように、女子に怯えなくなるように、接触しないように、必死だったからか…。


 接触回数を増やして、慣れる事。

 片山が普通の人と同じように、スキンシップをとれたり出来るように…


 音波は、改めて決意した。


「片山くん、覚えてる?

 去年の体育祭明け、片山くんがメガネ無しで登校した日」


「あー、覚えてる。

 あの日は、トイレ行くのも啓太の手を借りないといけなかった」

「トイレ?」


「ああ、だって、3組からトイレまで、あの長い廊下、一人じゃ無理。

 ”感”で歩いて、女子とぶつかったりしたら大変だしな。

 ゴメンだけじゃ…済まないかもしれないし」


 音波は思う。

(ああ、こんな普通の些細な事にも、神経を尖らせていなくてはならないなんて…)


 片山はボソリと言う。

「…チキンカツ」

「え? なあに?」


「…音波、今度俺のチキンカツ、食べてみる?」

「え…、片山くん料理出来るの?」

 音波は驚いて片山を見る。


「ああ、兄さんと暮らすのに必要だったからな。

 母さんが一通り教えてくれた」

「お母さんが…」


「ああ、男二人で毎日外食とか弁当買ってたら、体壊すし…金かかるしな」


「ふふっ、片山くんがエプロンしてキッチンに立ってるとこ、想像しちゃった」


 片山は首を振りながら言う。

「あー、エプロンはしない」


「そうなんだ、ふふっ。

 うん、食べてみたい」


「ああ、わかった。

 音波はムネ肉とモモ肉、どっちが好き?」


 音波は直ぐに答える。

「私はムネ肉のチキンカツのほうが好き。

 でも、どっちも好きだよ」


「俺もムネ肉の方が好きだ」

「そうなんだ。同じだね」

「うん」


 片山と、鶏肉の話をするとは思いもしなかったので、音波は凄く新鮮で不思議な気持ちになる。


 片山は、さっきまでとは違う声のトーンで音波に言う。


「…音波、”夏休みになるまで”は、毎日一緒に登校しよう。

 柱のトコで待ってるから」

「うん、わかった」


 今日もまた、知ることができた。


 片山は料理ができる。


 だが、音波は少し違和感を感じる。

 片山の口数が、少し多い気がする。

 話が盛り上がるのは嬉しいが、いつもより少し明るい。


(片山くん、土曜日に何かあったのかな…?)



『夏休みになるまでは、毎日一緒に登校しよう』


 この時音波は、片山のこの言葉を普通に受け取った。


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