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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-5-3 「母さんの為に」

2-5-3 「母さんの為に」 耳より近く感じたい2


ーー6月第一週金曜日


 音波と片山、佐藤、梶は久しぶりに4人で集まっている。

 学校近くのファミレスで、各自飲み物を注文する。


「体育祭、みんな何に出るの?

 アタシは、また400mリレー」

 梶に続いて佐藤が言う。

「俺もリレー」


「音波は? 何に出るの? 玉入れ?」

 梶の質問に答える。

「私、狩り人競走になっちゃった」


「マジで? お題が楽しみだな。

 で、成斗、お前は何に出るのよ?」

 片山を見ず、佐藤は聞く。


「あー、俺もリレー400」

「…え、」

 佐藤が固まる。


 片山がリレーに出る。

 しかも400mに…。


 佐藤は天を仰いだ。

「あー、今年は負けるだろうな。

 成斗が出るんじゃなあー」


 佐藤の諦めの言葉に、音波も梶も頭の上に「?」マークを浮かべる。


「え、ナニそれ。

 片山って足、速いの?

 走ってるの見たことないんだけどアタシ」

「私も片山くんが全力で走ってるの見たことない」


「こいつ、俺より速いから。

 去年はダルいって言って、タイム計るときに緩くしか走らなかったから、走る種目には選ばれなかっただけ」


 音波以外、みんなリレー…

 音波は少しだけ寂しさを感じた。


 片山は言う。

「あー、狩り人になるより走ったほうが楽だから」


 音波は3人に尋ねる。

「3人とも、何番目に走るの?」

「アタシ3番目」

「俺、2番目」

「あー、俺、最後」


「最後…私、応援するね!」

 音波の顔がぱぁーと明るくなる。

「…自分のクラス、応援しなくていいの?」


 片山に言われて、音波は「あっ、」と思ったが、好きな人が走るのだ。

「心の中で応援するから、いいの」

 音波は舌を出して言った。


プルルル…

 誰かのスマホが電話の着信音を鳴らす。


「…俺か、」

 片山がスマホをポケットから出して、画面を見る。


「…」

プツッ

 片山は着信相手を確認した後、…切った。

 そして、スマホを操作する。


「電話に出ないで、よかったの?」

「…」

 音波が尋ねるが、片山は何も言わない。


 マナーモードに変更したのか、バイブ音が鳴り続ける。


「…、はぁ、ちょっと外出る」

 片山は席を外し、店の外へと出ていく。


 音波は佐藤に訊く。

「電話の相手、誰だろう?

 佐藤くんの知ってる人かな?」


 佐藤は片山の後ろ姿を見て、音波に明るく言う。

「…、成斗に電話っていったら、大智さんくらいっしょ。

 あとは、DOSE.(ドース)の修さんか栄太郎さんとか?」


「…うん」

 その人達では無い気がする、音波はそう思った。


ーー

 店の外に出た片山は、音波たちからは見えない位置に移動する。

 そして、着信履歴から電話をかける。


プップップップッ、プルル…

プツ、

「…もしもし、成斗です…」


[なぜ電話に出なかったんだ]

「…さっきは先生と話してたから出なかった、」


[高校は行ってるんだろうな、ちゃんとやってるんだろうな]

「行ってる、ちゃんとやってる」


[問題が起きたりしてないだろうな、迷惑かけてないだろうな]

「…迷惑は、かけてない、何もおきてない」


[来週の金曜に戻るから、土曜日は帰ってこい、大智の様子も聞きたいから。

 午前中に来い、わかったな]

「わ(かった)」

ブツッ!


「……、ハァっ、」

 片山は大きく溜め息をついた後、スマホのマナーモードを解除する。


(…毎回毎回、最後まで聞かずに切りやがって…

 来週は父さんの機嫌取りか…)


「母さんのために、帰らないと…」

 ボソリと呟き、スマホをポケットに仕舞う。


 片山は店内に戻る。

 そして席に着く。


「片山くん、大丈夫?」

 音波は心配そうに片山を見る。


「…大丈夫、何でもない」

 片山は、前に座る音波に向かって、手をヒラヒラさせて、誤魔化した。




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