2-5-1 名前で呼ばれた日
2-5-1 名前で呼ばれた日 耳より近く感じたい2
ーー6月
総合の時間に、クラスで体育祭のどの種目に誰が出るかを決める。
足が速い人は走る種目に選出される。
前年同様、残りの人は残った種目を選ぶことになる。
音波は今年、狩り人競走になった。
「そういえば円井ちゃん、去年の狩り人競走では片山くんに連れて行かれたよね」
1年のときに同じクラスだった女子が思い出して言う。
「そうそう、片山ってさ、女子と話すときは、おい、ちょっと、アンタ、くらいしか言わないから、円井ちゃんが名前で呼ばれてて、ビックリしたんだよね」
これを聞いて音波は驚いた。
「え? そうなの?
片山くん、実花のことは梶って呼んでたよ」
「あーそれは、実花ちゃんが佐藤の彼女だからでしょ?
親友の彼女なんだから、流石に名字で呼ぶんじゃない?」
「あ…」
そうだ、音波も最初はアンタって呼ばれていた。
では、いつから名前で呼ばれるようになったのか?
音波は考える...いや、思い出す。
(そうだ…私、体育祭から片山くんに、音波って呼ばれるようになったんだ…)
「わたし今でも覚えてるよ? 円井ちゃん。
オトハ、お前だから来て
あれはドラマでいう名シーンだよ」
「えええ…///」
音波は顔を赤らめた。
2年から同じクラスになった女子達が言う。
「え、じゃあ片山のやつ、円井さんしか名前で呼んで無かったってこと?」
「なーんだあ、最初から一筋だったってワケかあ」
「だから、告白されても、バッサリ断ってたのね」
口々に言う女子達の言葉に、音波は苦笑いするしかなかった。
ホームルームが終わり、帰り支度をする音波。
中條が声をかけてきた。
「円井、今週から合わせを頼みたいんだけど、駄目な日はあるのか?」
「今週は金曜日が駄目な日。
あと、ちずちゃんもいい?
コスが好きなんだって」
中條は訝しげに言う。
「え…ちずってだれ?」
「うん、宮野千寿ちゃん」
中條は驚く。
「へ? 宮野が? 嘘だろ」
「本当だよ、千寿ちゃん来て」
音波に呼ばれて宮野が来る。
「どうも、宮野です、中條クン」
パッと見は優等生…という感じがする宮野だが、耳にはピアス穴があり、薄く化粧もしている。
眼鏡で優等生らしく見えるのだ。
「中條クンがどんな衣装を作るのか、大変興味があるので、お手並み拝見させてもらう。
邪魔はしないから、黙って見るだけだから」
「お、おう…」
中條は、音波を落とすつもりなので、ハッキリ言って宮野自身が邪魔である。
しかし、「お手並み拝見」と言われ、若干興味もわいたので、了承することにした。
中條は言う。
「今週は火曜と木曜、2日と4日。
部室でやるから」
「うん、分かった。
千寿ちゃんは?」
「わかったわ。
部室なら、オトちゃんの横で小物を作ってもいいかしら?」
「小物? いいけど?」
中條は、宮野が持ってくる小物とは何だろう? と思った。
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夜の22時を過ぎて、音波は片山にメッセージを送る。
円井
「中條くんに頼まれた
衣装合わせが始まるから
知らせておくね
今週は 火曜日と木曜日
来週は まだ決まってない
部室でするんだって
2日とも
宮野千寿ちゃんと一緒だから」
片山
「音波 ごめん
部活の方で
軽音祭の練習に
駆り出される
見に行けないかも」
円井
「うん 分かった
部活 頑張ってね」
片山
「音波も
頑張って」
円井
「ありがとう
おやすみなさい」
片山……入力中
・
・
・
(ん? 片山くん、どうしたんだろう?)
入力中と表示されたままの画面。
音波は少し心配になる。
音波が、「片山くん どうしたの?」と入力して送信しようとした時、片山からのメッセージが届いた。
片山……入力中
片山
「オヤスミ」
「(・∀・)」
(片山くん、まだ外だったのかな…)




