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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-4-4 今なら、大丈夫かも 成斗の誕生日(4)

2-4-4 今なら、大丈夫かも 成斗の誕生日(4) 耳より近く感じたい2



 ベッドから足を下ろして横並びに座る音波と片山。


 上に上げた音波の右手が、片山の頭に触れる。

 片山は目を瞑っている。

「…」


 頭を撫でる。

「…」


「片山くんの髪の毛、まだ湿ってる」

「…うん」


 次に音波は、片山のシャツ越しの左肩に手を置く。

「…」


 片山の肘のすぐ上を…肌を直に掴む。

「…」

 音波が触れた場所が熱をもつ。

(…温かい)


 手首を掴む。

「…」


 片山の手の甲の上に、手を乗せる。

「…」


 音波が片山の太ももに右手を乗せた瞬間、


ビクッ!!

「あっ!」

(いやだっ、)

 全身に痺れと悪寒が走る。


 カッ!と片山の目が開く。

「っ!!」

 音波の右手首を思い切り掴み上げる。


「きゃっ…」

 音波は発した声とともに体勢を崩し、体が後ろに流れる。


 瞬間的にモヤがかかった片山の視界が音波を捉える。


ハッ!

 と我に返った片山は、音波を支えようと音波の肩に手をかけるが、間に合わない。


ドサッ…、


 音波の肩には手、右手は掴んだまま、ベッドの上で音波を押し倒しているような状態…。

 二人の顔が、近い。


 片山は情けなさと申し訳無さで一杯になる。


「…ごめん、音波、俺は…」


 音波は、優しく言う。

「ううん、いいの。

 意識…飛ばなかったね。

 また片山くんのことが分かって、私嬉しい」

「!」


(…音波、お前ってやつは本当に…)


 音波の空いている左手が、片山の右の頬にそっと触れる。

「コレは、大丈夫?」


トクン、トクン、トクン…

 さっきの嫌な感じは、今はない。

 嬉しい、恥ずかしい、愛しい…。

 僅かだが、恐怖感、嫌悪感が薄れていくような、削れていくような、今はまだ何とも説明できないが、片山の中で、光が射したような…気がする。


 自分の頬に触れる音波の手を握り、片山は言う。

「ありがとう、音波」


 音波は笑顔で言う。

「うん、私もありがとう」


 掴んでいた音波の右腕から手を放し、

 片山は思う。


(…今なら、大丈夫かもしれない…)


 片山は音波の前髪をかき上げて言う。


「…音波、俺も確かめたい。

 キスしたい…抱きしめたい」


「え…」

 音波の顔が真っ赤になる。


「プレゼント…いい?」

「…、うん///」


 音波の額にキスをする。

 そして、口にキスをする。

 僅かに触れるだけではない、

 お互いの唇と唇が重なった、確かなキス。


 そして、片山は音波の背中に手を回し、自分の体に引き寄せる。


「…音波、」



 優しくふんわりと包み込むのでは無い、


 片山は、”初めて”音波をギュッと強く抱きしめる。


 震える声で、片山は言う。

「やっと、…やっと抱きしめる事が出来た…、

 俺の腕の中に、音波がいるなんて…、

 夢じゃないんだっ、

 大好きだ音波、ありがとう」


「…うん、嬉しい///」


 音波は、片山のシャツを掴み、ただ…抱きしめられた。



ーー

 夕方、16時過ぎ


 ベッドに背を当てて、床に座る2人。


「俺、2人でのデートってどんなのか分からないから、何処か一箇所行って、昼食べて、駅まで送って…、そのくらいしか考えてなかった」

 片山は話しながら、無意識に音波の髪の毛先をいじっている。


「雨降って、音波を濡らして、どうしようって思ったけど、音波の気持ちを知れて、俺自身のことも知れて」

「私も」


「雨が降ってくれて感謝してる」

「うん」


「音波の体、細いんだな。

 柔らかかった」


「え、そ、そうかな?///」

 柔らかいと言われて、音波は顔を赤くする。


 片山はベッド横の窓から外を見る。

 雨は止んでいる。


「雨、止んだみたい。

 暗くなる前に…駅まで送る」

「うん、ありがとう」


 二人は床から立ち上がった。


ーー

 駅まで歩く2人。


 音波が話し出す。

「写真展のこと、お父さんに話したらビックリするかな?」

「あー、そうだな」

「あっ、でも話したら、デートしたの分かっちゃうね」


 片山は、音波を見てく。

「…音波んちって、オープンなの?

 学校のこととか、友達のこととか、家族に話したりするの?」


「クラスにどんな子がいるかとか、友達と出かけるとか、話すかな」

「…そう」


 音波は、思い出しながら話をする。

「去年の夏、バイトを続けるか悩んだときに、お父さんに言われたの。

 目的がバイトすることなのか、友達と会うためなのかって」

「…」


「私の気持ちがフワフワしてるのは駄目だ、焦らずゆっくりと友達のこと知っていきなさいって言われたの」

「そう」


「その友達って、片山くんのことだったの…名前は出してないけど」

「…え」


 片山はフウッと息を吐く。

「音波んち、親と仲がいいんだな」

「片山くんは?」

「俺の親は…」


(俺の親父は…外面が良くて、体面を気にして、疑惑の目で俺を見て、信じてくれない…

 ただ、今は、金だけは出してくれてる…)

 片山は、小声でボソリと言う。

「……疎外」


「え? なんて?」

「俺の親は、放任主義、ある意味自由にさせてもらってる…かな」


 駅に着く。


「家に着いたらなんか打って」

「うん、わかった」


 片山は右手をヒラヒラさせた。



ーー

「ただいま」


 音波は家に帰り着き、直ぐに洗面所に向かう。

 そして、濡れた衣類を袋から取り出し、洗濯機に入れ込む。


 丁度蓋を閉めたところで、兄の樹がくる。

「おかえり、音波」


 バッと振り向く音波。


「あっ、樹お兄ちゃん、帰ってきてたんだ」


「ああ、何処か出かけてたのか?」

「う、うん、友達と出掛けてて…。

 雨で濡れちゃったから、服を貰ったのっ」


 そう言うと、音波は樹の横をサッと通り過ぎ、階段を上がっていった。


「……、」

 樹は疑問に思う。


 いつもなら、玄関に樹の靴があれば、すぐに来て抱きついてくる。

 なのに今日は…。


 『 "帰ってきてたんだ" 』


「音波…」

 樹は洗濯機の蓋を開ける。

 中にはグッショリ濡れた服。


(あの着ていた服装、音波が選ばないような大人びた服、髪の毛を垂らしたまま…)


「随分と背伸びした友達がいるんだな」


と、独り言を口にはしたが、疑いは晴れない。


 服をくれる友達…

 音波の好みとは違う服…


(…男?)


「音波が…変わっていく…」


 樹は、自分の握りこぶしにギュッと力を入れた。



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