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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-4-3 「玄関の鍵は、」 成斗の誕生日(3)

2-4-3 「玄関の鍵は、」 成斗の誕生日(3) 耳より近く感じたい2



 濡れた音波を前に、焦る片山。


 片山は必死に考える。


(音波に風邪を引かせたくない

 でも、俺と兄さんの服しかない

 何か…まともな服は……あ、ある!)


「音波、少し待ってて」

 と言い、片山の部屋のすぐ隣の部屋に入っていく。


 部屋の中から話し声がしてきた。

 音波は無意識に聞き耳を立てる。


「もしもし兄さん? 俺。

 ルリの服は何処にある?

 うん、そう、ダンボール

 雨で濡れて…うん、

 はあ?!」


 片山の声がイキナリ大きくなったので、音波はビックリする。


「…ああ、あー、わかった」


 通話は終わったのだろう。

 何かを探す物音だけが部屋から聞こえてくる。


(片山くん、どうしたんだろう…

 大声出したり、声のトーン下がったりして…)

 音波は少し不安になる。


「…あった//」


 片山が部屋からダンボールを持って出てくる。


「片山くん、大丈夫?」

「あー、うん…

 音波、こっち来て」


 片山は音波と洗面所に移動する。

 ダンボールをドサッと置く。


「音波、風呂入って、体を温めて。

 この中に、女物の服が入ってる。

 親戚のだから、…あと、

 コッチも使っていいらしいから///」


 そう言うと音波を残し、片山は洗面所から足早に出ていった。


 音波はダンボールの中を…覗く。


(…、……あっ!///)


 服とは別に可愛いポーチ、


 『ルリのお泊まりセット』


 そう書かれていた。



--


 音波が風呂に入っている間、片山は自分の部屋で濡れた服を脱ぎ、ズボンを履き替える。

 上は着ていない。


 タオルを首に掛け、部屋を出る。


(途中まではいい感じだったのに…

 最後はグダグダになってしまった…

 でも、ルリの服があって助かった)


 キッチンに移動し、コーヒーを淹れる用意をする。


(そういえば、この前音波が来た時はブラックで出したな…

 もしかしたら、もう近くにいることも出来なくなるかもしれないって思ってたから…)


「砂糖とミルク、どこだっけ…

 あと、服を入れる袋は…」


ーー

(服、お借りしたけど、可笑しくないかな?)

 音波は少しドキドキしながら、洗面所を出る。


 片山の部屋の電気がついている。

 丁度片山がトレーを持ってリビングドアを開けた瞬間だった。


「あ、音波、温まった?」

「うん、ありがとう」

「そう、よかった。

 そこの袋、服を入れるのに使って」

「う、うん、ありがとう///」


 音波は恥ずかしさを隠すために、先に服を袋に入れた。


(片山くん、上…着てない///

 目のやり場に困る…)


 音波が片山の部屋に入った後、片山はポットを持って戻ってきた。


「適当に座って」

「うん」

 音波がドア側に座ったので、片山はポットをテーブルの上に置き、ベッドの方に歩いていく。


と、その時、


「片山くん、その背中の傷どうしたの?」

 と言って音波は立ち上がり、背中の傷に触れる。


ピタッ

 片山の体が止まる。

「…」


「あっ、ゴメン!

 触られるの駄目なんだよね」

 音波はすぐに背中から手を離す。


「…ごめん、今着るから」

 片山はクローゼットからシャツを取り出して、着る。


 片山はベッドに座り、音波に聞く。

「服のサイズ、大丈夫?」

「うん、大丈夫。

 私が持ってる服より大人っぽいから、ちょっと変な感じ、可笑しくないかな…」


「うん、似合ってる…可愛いな」

「ありがとう//」


 音波は照れながら、コーヒー、砂糖の順にスティックの袋を破り、カップに入れる。

 ポットのお湯を入れたあと、最後にミルクを入れてスプーンでかき混ぜる。



 少し無言の時間が過ぎた。


 音波は決意した顔で片山に声をかける。


「隣に座っていい?」

「…うん」

 音波は立ち上がり、片山の左側に座る。


「片山くん、大分触れるようになったね」


 片山は自分の手を見ながら言う。

「…ほとんど、手だけ…だけどな」


「ううん、優しく抱き寄せてくれたり、頭を撫でてくれたり、してくれてる」

「音波だから…」


「今、ドコまでなら症状出ないのかな?」


「え?」

 片山は音波の方を向く。


「人から触られるの、」


 片山は、首を振る。

「…分からない、抱きつかれたりとかは、駄目だと思う

 パニックになって、意識が飛ぶから」


 真剣な表情で音波は言う。

「知りたい、試してみたい、確かめておきたい」

「…音波」


 片山は再び首を振る。

「音波を傷つけたくない」


「私は傷つかない、驚くかもしれないけど、逃げない、私は片山くんを支えたい」

「音波…」


 真っ直ぐに見つめる音波の目。

「お願い」

「……、」


 片山は立ち上がり、部屋のドアを全開にする。

 そして、音波の隣に座る。


 気持ち辛そうな顔で、片山は音波に言う。


「玄関の鍵は、かかってない。

 …何かあったら、俺に異変が出たら…

 お願い音波、直ぐに逃げて」


「うん、分かった」

 音波はコクリと頷く。


 そして…

 音波は、右手を上にあげた。




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有澄 奏 mimichika Project「耳より近く感じたい」小説補完用個人Webサイト  https://uzumi-sou.amebaownd.com/
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