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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-2-2 「何でも訊いてよ」

2-2-2 「何でも訊いてよ」 耳より近く感じたい2



--翌日、月曜日

放課後、


 音波は駅の中の本屋で佐藤を待っている。


 普段はそんなに手にしないパソコン雑誌や音楽雑誌を手に取り、パラパラとめくる。


 欲しい情報は、ネットやスマホで事足りているからだ。


 時間を潰していると、佐藤がやって来た。


「悪い円井、待たせたな」


 佐藤は相変わらずの明るい笑顔で、音波に言う。


「こっちこそごめんね、佐藤くん」

 音波は佐藤を見て、少し感心する。


 今から多分、凄く重たい話をするのに、こうやって明るく振る舞ってくれる佐藤。


 音波は、佐藤のこういう一面を見習いたいと思った。


 佐藤が音波に話しかける。

「時間が惜しいから、直ぐ近くのカラオケボックスに移動していいか?」

「うん、分かった」

 音波は頷く。


 二人は早速、カラオケボックスに移動する。


 入店して個室に入る音波と佐藤。


 二人っきりで会うのは、もしかしたら初めてかもしれない。


 音波は少し、緊張する。


 佐藤がメニュー表を音波に渡す。

「取り敢えず、飲み物くらいは頼もうぜ」

「う、うん」


 佐藤はジャスミン茶を、音波はオレンジジュースを注文する。


 佐藤は、カラオケのタブレットを見ながら、音波に言う。

「飲み物が来てから話すから、何でも訊いてよ」

「うん」


 数分後、スタッフが注文した飲み物を持ってくる。


 もう、いつでも話は…始められる。


 音波は話し始める。


「私が最初に訊きたいのは、片山くんの症状の出方についてなの。


 4月2日に、片山くんから話を聞いたあと、帰る時に、大智さんに言われたの。


 『成斗の症状は、君が見たアレだけじゃない、時に出方が変わるから』


 そして、私が見た片山くんの症状は、”当たり”だったって言ってた。


 佐藤くんが、学園祭の時に片山くんを助けた、正気に戻したって聞いた。


 だから、佐藤くんに話を訊きたいと思ったの」


 音波は不安そうに、佐藤を見る。


「……、」

 佐藤は、音波を信じてみると決めた以上、ギリギリまで話すことにした。


「わかった、学園祭の時の成斗の様子を、話す」


 そう言って、佐藤はソファーにもたれ掛かり、くうを見ながら話し始める。


「機材の搬出で、俺が講堂の中に引っ込んだ後、外から叫ぶ声がした。


 成斗独りにしてたから、まさかと思って急いで外に出たら、もう女に抱きつかれてた状態だった。


 俺は急いで成斗から女を引き剥がした。


 でも、あいつは、既に意識が飛んでいて、顔は真っ青だし、目の焦点は合ってないし、完全にパニック状態になってた。


 俺が必死に成斗の肩を掴んで体を揺すっても、全然正気に戻らなかった。


 あいつは俺から逃れようと抵抗して、喚きながら暴れて、俺が圧されそうになった。


 あいつの手が…俺の首に伸びた時、成斗のチカラが弱まったから、俺はあいつをぶっ叩いた。


 それで、何とか正気に戻す事が出来た。


 あの時が、俺が成斗の症状を見てきた中で、一番酷かった…。


 多分、すげえ久し振りに症状が出ちまったから、記憶とか感覚とか、そういうのが反動で激しく出ちまったのかな、

 こればかりは本人じゃないから、俺の想像になるけどな。


 あいつが…入院してた時の事を思い出すくらいの、症状の出方だったよ」


 佐藤は一通り話し終わり、音波を見る。


 音波は言う。

「だから、大智さんは私には ”当たり” て言ったんだね。


 2月は、片山くん具合悪くて、体が全然動かなかったから、薬を飲むのを嫌がる時に首を振って抵抗するのが、やっとだったんだ…」


 音波は下を向く。


 佐藤は音波を心配して、声を掛ける。

「今俺が話したのを聞いて、ショック受けたか?」


 音波は首を横に振る。

「ううん、片山くんの事を知れて、良かった。

 ありがとう、佐藤くん」


 音波は、佐藤に笑顔で礼を言う。


 それを見て、佐藤は思う。


(あ…円井のやつ、本気で成斗と向き合うつもりだ、

 円井なら成斗を救えるかもしれないと思ったけど、

 本当に…こいつは本気なんだ、本気で成斗の事が好きなんだ…)


 佐藤は優しく言う。

「円井、お前は本当に凄いな、普通の女なら引いて逃げる話なのに。

 成斗の事が、本当に好きなんだな。


 分かった、俺が絡んでる話なら、何でも話すから。

 遠慮なく訊いてくれ」


 音波は、真剣な顔で頷く。

「うん、それじゃあ、色々教えて。

 佐藤くんが片山くんの前を歩いてた理由は?」


「成斗が女に触れないように、絡まれないように、俺が女子をかき分けて道を通るためだ。

 学校では、そうしてた。

 今はクラスが違うから心配してる。

 成斗、田中と同じクラスだけど、田中はあいつの事情は知らないからな」


 音波は次の質問をする。

「私は片山くんと手を繋いだことが何回もあるけど、他の女子は全くダメなの?」


「ああ、今のところは駄目だ。

 仮人競争で円井を選べて、成斗はマジで助かったと思う」


「そうなんだ」


 音波は、自分が閉じ込められた時の片山の様子を佐藤に話す。

「片山くんが助けに来てくれた時、私…怖くて堪らなくて、片山くんにしがみついちゃったの。


 その時は、優しくふんわりと包むように、私の事抱き留めてくれて、背中を擦ってくれて、それで私、安心しちゃって気を失ったの」


「え…?」

 これを聞いて、佐藤は驚く。


「お前、…成斗に抱きついたのか?!」




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