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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season1 ~孤独の闇の中ボクは怯えて震えてた、キミに出逢ってからボクは変わり始めた~
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1-12-4 録音を聞く~…が感じた

1-12-4 録音を聞く~…が感じた 耳より近く感じたい


 部屋着に着替え、眼鏡をかけた片山は、リビングに入る。

 兄の大智が難しそうな顔をしている。


「…兄さん」

「お、来たか。そっち座れ」


 片山はソファに座る。


 テーブルの上には大智のスマホが置かれている。


 兄の大智が、申し訳なさそうに話す。

「成斗、ごめんな、アレが出るまで無理させてしまって、

 俺、お前が高校入ってずっと落ち着いてたから、大丈夫なのかなって気を抜いてた。

 この通り、悪かった、」

 大智は片山に頭を下げる。


「やっぱり出たんだ、あの症状が…」

 片山は下を向く。


(音波の前で症状が出た、見られた)


 俯いたまま少し沈黙する。


「…、まだ見られたくなかった…音波には、まだ知られたくなかった、

 帰れって言ったのに、あいつ…帰らなかったんだ…」


「そうだ、帰らなかった」

 大智が言う。


「俺と啓太が来るまで、あの子は帰らず待っていた」

「ー、そう」

「昨日の成斗の様子を話してくれた」

「…」


「黙って録音してたことは、あの子は知らない」

「…え?」

 顔を上げ、兄を見る。


「お前の意識が混濁状態の時の様子が分かるし、その時のあの子の様子も分かる」

「…」

「聞くか?」


(もうバレてしまったから、今後の接し方を考える参考にでもなれば…)


 片山は決めた。

「……聞く」

「分かった」

 兄の大智は、自分のスマホ画面の再生ボタンを押した。


「事の経過を端折(はしょ)らずに全て話してくれないかな」

「はい…」


「…薬を飲むのを凄く嫌がって、体を起こそうとしたら急に様子がおかしくなって。

 うわ言か呪文みたいに同じこと言い続けて、その時はもう朦朧(もうろう)としてたと思います」


「薬を飲ませたと聞いたけど?」


「はい、私がいつも常備してる頭痛薬を一錠飲ませました。これです」


「で、嫌がる弟にどうやって飲ませたの?」


「!…そ、それは、」

「薬を喉の奥まで入れて…すぐに水を飲ませました」


「吐き出さなかったのか?」


「くっ、口で…塞いだので…その、飲んでくれました」


「口移しで水を飲ませたんだ」

「君、振り払われなかった?」


「え?」


「意識のない弟に突き飛ばされたり、邪険に扱われたりしなかったか?」


「それは全く無いです。

 薬を飲んだ後は、うわ言も言わなくなって、

 少ししたら呼吸も落ち着いてきました」


「…そうか、分かった。ありがとう、弟の世話をしてくれて」


「いえ、私の方こそすみませんでした」


「円井、一緒にいるなら、いるって何で連絡しなかったんだよ。

 成斗の扱いなら俺がしたのに」


「うん、そうだよね、佐藤くんごめん」


「ここで終わり」

 大智は停止ボタンを押す。


「…、症状が止まった?」

 片山は驚く。


「薬も飲んだ…のか、」

「ああ、そうだ。

 お前が触るなどうだと唸ってる間に、あの子は薬を飲ませちまったんだよ。

 逃げもせず、狼狽(うろた)えはしたかもしれないけどな」

「…」


「あと、家のタオル使って汗とか拭いてくれたみたい。

 それと、看病の途中でかわからないけど、飲み物とか熱冷ましの貼るのとか、テーブルの上にあった」

「…」


「この録音を聞いて、他に何か思い出せることはあるか? 成斗、」


(思い出せること…?)


 片山は再び記憶を振り返る。


「…、音波が薬を飲めって言って、その時にはもう、あの嫌な感覚がきてて…、

 体が動いた時に、意識が飛んで…その後、耳に…」

「耳?」


(朦朧の中、何か聞こえた…

 耳が感じた息…声)


「…あ、!!」


 思い出した衝撃で片山の体が震える。


「…声を聞いた、耳元で…音波の声を」

「声?」


「音波の声が、大丈夫って…」

「成斗、」


「大丈夫だから、安心してって…優しい声で…。

 意識無いはずなのに、声が聞こえたんだ…音波っ!」

 片山は両手で顔を覆う。


「…成斗、お前あの子のことが…。

 そうなんだな?」

「……」

 コクリと片山は肯いた。


「…最初、あいつの笑顔を見ると懐かしい気持ちになった。

 それだけ、それだけだった。

 好きにはならないと…思ってた。

 兄さん、俺…俺は…


 …年末に言ったんだ、音波が、

 もっと知りたいって言ったんだ、

 俺のこと知りたいって…


 …だから、俺も向き合おうって。

 いつか話すから待ってと言った。

 でも…言う前に見られた、音波に…」


「成斗…、あの子に好きだって伝えたのか?」

「…言ってない」


「あの子はお前のこと、好きなのか?」

「…分からない」

 片山は首を振る。


「…そうか」

 大智は溜め息をつく。


「兄ちゃん、バイクで送ってく時にあの子に言ったんだ。

 成斗とは友達のままでいてくれって」

「…そう」


「そしたら、黙っちまった」

「…そっか」


 大智はくうを見る。

「あの沈黙は何だったのかな…」


 大智は目線を弟に戻して言う。

「成斗、人を好きになるのは自由だからな。

 実る実らないは別だけどな」

「…」


「もし、あの子が“本気で”お前の事を知りたいのなら、知ってもらえ。

 リスクはあるけどな…」

「…」


「ああ、そうだ、

 成斗、お前、寝てる時にあの子の手をしっかり握ってたぞ」

「…え?」


「俺たちが到着しても、俺たちに挨拶する時も、あの子…お前に手、握られたままだったよ」

「…音波、」


「明日学校行くなら、知らないフリしろよ。

 録音聞いてないことになってるからな」


「なに?」

 片山は顔を上げて兄の大智を見る。


「口移しで水、あの子が成斗にキスしたって事」


「は?……、あ!」

 片山の顔がみるみる赤くなっていく。


「ハハハ! そんなんじゃバレるぞ?

 ま、頑張ってみろよ」


 大智は弟の肩を叩いてエールを送った。


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