1-9-6 向き合う二人
1-9-6 向き合う二人 耳より近く感じたい
音波と片山が乗った観覧車が降りてきた。
先に降りて待っていた梶と佐藤が、心配そうに迎える。
音波が先に、続いて片山が降りる。
梶が音波に言う。
「音波、気を使わなくても良かったのに」
「ううん、折角だもん。
夕日、綺麗だったね」
音波は、とびっきりの笑顔で言う。
「今度は4人で乗ろう」
梶と音波が話しながら前を行く。
佐藤が片山に聞く。
「成斗、円井と何か進展あったって顔だな?」
片山は、少し下を向く。
「あー、まあ。
…啓太の言ったとおりだった」
「何?」
音波の後姿を見ながら、片山は言う。
「あいつ、俺のこと知りたいって」
「マジか!」
「啓太、…俺、音波と向き合ってみようと思う」
片山の穏やかな表情を見て、佐藤は頷いた。
「そうか。でも、焦るなよ」
「ああ」
ーー駅構内
「俺たち3番線だから。
じゃあな、また来年」
「音波、片山、よいお年をねー」
佐藤と梶を見送り、音波と片山は1番線へと移動する。
片山が自分と一緒に1番線に行くので、音波は不思議に思い、尋ねる。
「あれ? 片山くんって、佐藤くんと同じ中学だったよね?」
「うん」
「一緒の方向じゃないの?」
「あー、俺、2番線。
実家出て、兄貴と暮らしてるから」
「お兄さんと、」
「うん」
(お兄さんと暮らしてるんだ…)
「私もお兄ちゃんがいるの」
「そう」
「うちのお兄ちゃんは、大学2年生で、一人暮らししてるんだ」
「へえ、そう」
「片山くんのお兄さんは?」
「兄貴も大学生で、今年入学した。
バンドやってて、メンバーがどうしても集まらない時とかに、俺、かり出されたりする」
「そうなんだ。
片山くんはお兄さんの影響で音楽するようになったの?」
「あー、そうなるかな? ちょっと違うかな…
最初は兄貴の影響でギターを触ってた。
ドラムを選ぶキッカケがあったのは小6の時だ。
それで、ドラムを始めた。
兄貴のバンドの人に教えて貰った」
「そうなんだ。ふーん、ふふっ、」
「…なに?」
「今まで知らなかった事を、こうやってお互いに知り合えるって、いいなと思って、ね」
「…ああ、いいな」
音波は今年の夏休みを思い出しながら言う。
「バイト帰りに片山くんに駅まで送ってもらった時のこと、思い出しちゃった」
「うん」
「最初の頃は、まだそこまで学校で直に会話してるって感じじゃなかったから、」
「ああ、啓太と梶を挟んで話してたな」
「そう。だから送ってやるって言われて正直困った。
最初の頃は、駅に着くまで何を話そうかって、必死に考えてた」
「あー、こっちから話振れば良かった?」
「ううん、違うの、なんて言ったらいいかな…」
音波は少し黙り、話を続ける。
「当たり前に一緒に帰るようになって、バイトが終わるのが待ち遠しくなってた。
片山くん、話してても顔変わらないし。
時々言葉キツイけど、ちゃんと的を射てて相手に考えさせるし。
無関心そうだけど、さり気なく優しいし。
最初の印象からどんどん変わっていったんだ。
だから、片山くんのことを、もっと知りたいなって思った」
「…音波、…フッ、お前、ホント思ってること正直に話すな」
「おかしいかな? 可笑しいよね?」
「…いや、音波はそのままで、いい」
「いいのかな?」
「うん、いい」
電車がホームに入ってくる。
「それじゃあね」
「音波、家に着いたら、なんか打って」
音波は嬉しそうに言う。
「うん。夏休み以来だね」
「あー、うん、そうだな」
片山の表情も緩む。
音波は電車に乗り込み、振り返る。
ジリリリリリーー
「啓太…つく……偶…に感……な」
(啓太がつくった偶然に感謝だな)
「え? 聞こえない」
音波には、片山の言葉が聞き取れなかった。
片山は、右手をヒラヒラさせる。
ドアが閉まり、ゆっくりと電車が動き出す。
ガタンゴトーン…ガタンゴトーン…
(今年のうちに自分の気持ちを伝えられて良かったな)
来年はもっと話そう、と音波は思った。
(あ、そうだ!)
音波はスマホを取り出し、アプリを開き文字を打って送信する。
Nami☆DOSE.ファン
「今日は、とても嬉しいことがありました
(≧▽≦)」
(なんだか、色々あって最近やってなかったな…)
ピッピッ…
(あ…)
Sei☆DOSE.N 入力中……
【Sei が Nami に返信しました】
Sei☆DOSE.N
「よかったね」
音波は直ぐに、文字を打ち返信する。
Nami☆DOSE.ファン
「ありがとう」
【SeiがNamiの返信に反応しました】
Sei☆DOSE.N 入力中……
【Sei が Nami に返信しました】
Sei☆DOSE.N
「 (・▽・) 」
(ふふっ、顔文字だ。
片山くんの顔文字に似てるな)
【NamがiSeiの返信に反応しました】




