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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season1 ~孤独の闇の中ボクは怯えて震えてた、キミに出逢ってからボクは変わり始めた~
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1-8-4 ‥‥の傷痕

1-8-4 ‥‥の傷痕 耳より近く感じたい


ーー保健室、


ガラッ

 保健室の扉が開き、担任と音波の父親が入ってくる。

「音波~、迎えに来たぞ」

 長身で少しウェーブのかかった栗色の伸びた髪を、首より若干上で結び、ジャケットを着た父親が、明るい声で名前を呼ぶ。

「お父さん」

 音波がベッドから下りる。


 片山は直ぐに丸椅子から立ち上がり、音波の父親の方へ行く。

「片山です。

 俺が原因で彼女に怖い思いをさせてしまいました。

 申し訳ありません。」

 と言い、深々と頭を下げる。


 横で佐藤と梶は静かに見守っている。

「片山くん」

 音波が父親と片山の間でオロオロしていると、父親が口を開いた。


「君が娘を見つけてくれたそうじゃないか。

 担任から聞いたよ。

 顔を上げなさい」

 父親に促され、頭を上げる。


「…こんなにドロドロになって…」

 片山の汚れた姿を見て、父親は溜め息をつく。


(寒い中、びしょ濡れになりながら探してくれたのか…)


「取り敢えず君、そんな格好じゃ風邪を引くからコレに着替えなさい。

 娘を助けてくれた礼だ」


 そう言って、音波の父親は服が入った袋を片山に差し出す。


「いえ、俺は大丈夫です。 お気持ちだけいただきます」

「君が肺炎をおこしたら、音波が泣くから着替えなさい」

「俺、丈夫なほうなんで、」


「お父さん、」

 二人のやり取りを聞いていて音波は心配になってきた。

 音波の父は、時に無茶苦茶な事を言って、相手をねじ伏せてしまうことがあるのだ。

「お父さんしつこいから、片山くんゴメン」


「君のご家族に心配と迷惑をかけることになるから」

「いえ、心配とかないんで」

「…」

「…」


「着替えてくれないなら、音波を転校させちゃう」

「!」

「えええ?」

 この発言には、音波は勿論だが、梶も佐藤も担任も流石に驚いた。


「……、」

 …片山の負けである。


「ほら、着替えて!」

「…ご厚意、感謝します…」

「はいっ!お父さんの勝ち」

 とびっきりの笑顔で、音波の父親は袋をグイッと片山に押し渡す。


「先生、こっちの部屋って使っていいのかな?」

「構いませんよ」

「音波は帰る準備をしておきなさい。では行こうか!」

 片山は、成されるがままに、音波の父親と部屋を移動する。


「なんか、音波のお父さん面白いね」

「転校とか、ぶっ飛んでるっしょw」

「もう、恥ずかしい」

 音波は、顔を真っ赤にした。



 別室で着替え始める片山。

 袖が汚れたシャツを脱ぐ。

 と、その時、


「ちょっと待った! 君…この傷痕どうしたの!?」

 片山の肩を掴み、背中を凝視する音波の父親。


「あー、子供の頃、女の子と一緒に生き埋めになりかけたときの傷です」

「…そうか、」

「上から色々落ちてきて、頭から背中まで刺さったり切れたり、ガラスとか」

「その時の女の子も怪我したの?」


「いや、分かりません。

 俺の下になるように覆い被さってたらしいんで…、無事だったと思いたいです。

 その時の記憶はぶっ飛んでてあまり覚えてないんで…

 あの、着てもいいですか?」

「あ、ああ、悪かった、着てくれ」


 着替えている片山を見ながら、音波の父親は少し考え込む。


「着替え終わりました、 有り難うございます」

 片山の言葉で記憶の探索は中断された。

「じゃあ出ようか」


 別室から音波の父親と片山が出てくる。

 音波は私服の片山を見たことがあるが、お洒落も好きな父親がチョイスした服は、とても格好良く、それを着ている片山も凄く(さま)になっている。


 校門で別れ際、音波の父親はみんなにお礼を述べ、続ける。


「みんな、娘の為に残ってくれてありがとうね。今度、家に遊びに来てよ」

「ホントにゴメンね、ありがとう」

 片山が音波たちに向かい、言う。

「今日は本当にすみませんでした。

 音波、ごめん」

「ううん、もう気にしないで。また来週ね」

「うん」


「それじゃあ帰ろうか、我が娘よ!」


 雨は止み、途切れた雲の合間から、月が恥ずかしげに見え隠れしていた。



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有澄 奏 mimichika Project「耳より近く感じたい」小説補完用個人Webサイト  https://uzumi-sou.amebaownd.com/
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