1-7-2 「…助かる、」
1-7-2 「…助かる、」 10月学園祭準備 耳より近く感じたい
ーー
一方、
コスプレ部の部室では、軽音学部の衣装合わせが始まる。
片山達1年も、学園祭で衣装を着る。
コスプレ部は、男子よりも女子の部員数が多い。
1年の担当は1年が受け持つことになったので、5組男子の中條と女子2人が片山達の衣装合わせをすることになった。
初顔合わせのため、部室の前で片山達は待つ。
佐藤が小声で片山に言う。
「成斗、お前中條にやってもらえ、俺と田中は女子にやってもらうから」
「…ああ」
これを横で聞いていた中條は、疑問に思う。
(何言ってんだ佐藤、女子のほうが片山をカッコよくしたいのに…。
考えなくても、普通、俺が田中だろ?
何で俺が片山担当なんだ?)
「…」
中條は片山を見る。
遅れて担当の女子二人がやって来た。
すかさず佐藤が女子に言う。
「ねえ、君たち俺と田中やってくれない?
片山に負けないくらいカッコよくしてよ、お願いっ」
田中が言う。
「へ?俺もいいの?」
佐藤が田中の肩を叩く。
「田中は前に出るんだから、女子にカッコよくしてもらわないとダメだろw」
「そう?片山、悪いな」
脱臼事件で人気が上昇した佐藤に言われ、女子たちは一つ返事で了承した。
佐藤は女子二人を連れ、田中と一緒に衣装が置いてある部室に入っていく。
中條は納得していない。
「おい片山、普通、お前と佐藤が女子だろう?何で俺なんだよ…」
「…別に、」
片山は下を向く。
そこに、三年生の女子が片山を見つけてやって来る。
「あー、体育祭の時のイケメンじゃないの。
何でワザとそんな眼鏡つけてるの?取ればいいのに」
と言って、片山の眼鏡を取ろうとする。
「ワザとじゃない、眼鏡無いと本当に見えな…」
中條に疑われたのもあり、下を向いていた片山の反応が遅れた!
(ハッ!)
「あっ、やめろ!」
バッ!
眼鏡…自分に迫る女子の手を左手で払い除け、逃げるように後ずさり、顔を右腕でかばう。
三年女子はムッとして言う。
「なによ、ケチねぇ。
そんなに嫌がらなくてもいいじゃない」
「ほんと…むり、だから…」
「…もういいわよ」
そう言い、三年女子は部室に入っていった。
「お前、…ちょっとコッチ来いよ」
片山の異様な行動を見た中條は、顔をかばう片山の腕を掴み、部室のドア近くから移動する。
廊下から死角になる所まで片山を引っ張っていく。
「離せ、中條」
「…」
死角に入ると、中條は片山の腕を掴んだまま、顔を近づけ、小声で訊く。
「片山、もしかしてお前、…女が怖いのか?」
「!…」
(…今まで何とか上手く避け続けてこれたのに、こんな事で…)
片山は何も言わず、中條から顔をそむける。
「ハッ、こりゃあ驚いた、お前みたいなイケメン野郎が、女がダメとはな」
「…っ、」
片山は、もう中條は誤魔化せないと判断し、諦めた。
中條は、言う。
「へぇー、そう、勿体無いっていうか、可哀そうっていうか。
お前なら、どんだけでも遊べそうなのにな」
「…」
中條は、掴んでいた片山の腕を離し、今度は片山の肩をグッと掴む。
「…わかった、いいぜ、お前は俺がやってやる。
どうせ女子は佐藤が上手いこと誘ったみたいだからな。
うちの部は女が多いから、出来るだけ時間ずらしてやってやる」
「え…」
最後の言葉に片山は驚き、中條を見る。
「俺、やるって決めたらやる主義だから、後で連絡先教えろよ」
中條はニヤリと笑い、きつく掴んでいた肩から手を離す。
そして、続けて言う。
「あ、そうそう、心配しなくてもいいぜ、誰にも言わねえから。
お前がボロ出してバレるのは知らねーけどな」
「…中條、」
「ほら、行くぞ」
「…助かる、頼む」
片山は、ボソッと言った。




