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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season1 ~孤独の闇の中ボクは怯えて震えてた、キミに出逢ってからボクは変わり始めた~
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1-6-2 「やっちまった」

1-6-2 「やっちまった」 耳より近く感じたい


 9月末、防災訓練終了後、運動場に集合していた生徒たちは、三年、二年、一年の順に教室に移動していく。


 音波たちも下足置き場から教室がある二階に上がるため、階段へと移動する。


「あいつだろ?3組の佐藤、田中と一緒に全クラス回って声かけてるって」

「女子の前でヘラヘラしやがって」


 階段の上から下を見下ろしながら男子が話す声がした。


 先に階段に足を掛けていた梶が気づく。

「何、あれ」

「ああ、学園祭で演るから見に来てねって、部長命令で宣伝しにいってんのよ俺と田中で」

 後ろにいた佐藤が、梶に説明する。


「佐藤は、ヘラヘラしてるんじゃ無いじゃん」

「いいのいいの、別に気にしてないから」

「佐藤は頑張ってるだけだもん!」


 何故か憤慨している梶を見て、佐藤は気になり、声をかける。

「なに怒ってんだよ梶。

 なにもお前がムキにならんでも…」


 佐藤が言い終わる前に、梶の足はもう動いていた。

「アタシ文句言ってくる!」

 そう言って梶は階段を上っていく。


「…!おい梶、待てって!」

 話をしていた相手がヤバいと思った佐藤は、梶を追いかけていく。

 音波と片山も後を追う。


 階段を上がりきった所で既に言い合いが始まっていた。

「ちょっと訂正してよ!」

「何だよ、お前は関係ねーだろ!」

「早く訂正してよ!」

「うるせーよ!離せよ!」


ドンッ!

 言うが早いか、がたいのいい男子が梶を突き飛ばす。

「え…」


 梶の体が吹っ飛んだ。


「梶!!」

 佐藤が下から梶の体を受け止める。


ドオッ!

 衝撃を吸収しようと佐藤も体を後ろに流す。

 が、足場は階段、必死に手すりを掴んだ右手は放さない。


ゴキッ…

「っ!」


 佐藤の体から鈍い音がした。


 片山が二人のそばに駆け寄る。

「啓太、」

「悪い…成斗、やっちまった、くっ…」


 佐藤の左腕が梶を離し、その場で膝をつく。

 右腕が力無くダラリと下がる。

 右肩が、異様な状態になっている。


「運動部誰か、整体の先生呼んで。

 音波は担任に知らせて、」

 片山の指示に、運動部らしき男子が急いで階段を降りていく。


「うん分かった!」

 音波も、一階の職員室へ向かう。


「啓太、動けるか?」

「…大丈夫、でも…ちょっと待って、っ!」


 僅かでも力が入ると襲ってくる激痛に汗をかきながら顔を歪ませる。


「佐藤、ごめん、アタシ、アタシ…」


 泣きながら謝る梶に心配させまいと、歪んだ顔で笑顔を作ろうとする。


「梶は突っ走りすぎ、まあ、今回のは俺のため…的な?

 ちょっと嬉しいけどな、ハハ…くっ!」


 片山に支えられながら、ゆっくりと階段を下り、一階の保健室へと向かう。

 先生達も何人か駆け寄る。


 梶は戻ってきた音波にしがみつき、更に泣きじゃくる。

「音波どうしよう、佐藤がギター弾けなくなったらどうしよう、アタシとんでもないことしちゃった…」


 少しして、学校に到着した救急車は、佐藤を乗せて病院へと向かった。



ーー

 次の日、佐藤は学校に来なかった。


 泣き腫らした顔の梶は、見ていられないくらい痛々しい。

 授業中もそうだが、昼休みも食事を摂らず机にうつ伏せては、はぁ…と溜め息をつく、の繰り返し。


 ホームルーム終了後、梶が片山のところにやって来た。

「片山、佐藤の家教えて。謝りに行く」

「実花…」

 音波は梶の背中を擦る。


 片山はバッグを机の上に置きながら言う。

「…啓太に直接チャットで聞けば?」

「聞いたけど教えてくれない。来なくていいって」

「…じゃあ行かなくていいんじゃない?」


 梶が落ち込んでいるのに、片山の言い方がキツく感じたので、音波はつい横から口を挿む。

「片山くん、そんな言い方しなくても」


 片山は、音波を無視して梶に言う。

「あー、あのさ、考えた?

 あいつが今何を1番に考えてるか。

 あいつの優先事項は何か。

 あいつ家で一人かもしれない。

 ベッドで寝てるかも。で?


 見舞いに行ったとして、ベッドから起き上がるのも大変かもしれない、

 多分あいつのことだから、女子が行ったら着替えるだろう、

 気を使って茶とか出したり」

 梶の顔がハッとする。


「梶は謝って、啓太の姿見て満足だろうけど、あいつにとって今一番必要なことって何?安静だろ。

 で、誰かのために1日も早く学校に来られるようにする…かな。

 今はキツいだろうけど、我慢して待ってやれば?学校来るの。

 そんなに泣く程想ってるんだろ?啓太のこと」


 梶はポロポロと涙を流しながら頷いた。

「うん、分かった、待つ。片山、ありがと…」

「片山くん…」

 片山の厳しくも飾らない言葉が音波の心にも刺さった。




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