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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-16-1 日を改める

2-16-1 日を改める 耳より近く感じたい2


--9月第1週、火曜日(9/1)


 二学期が始まる。

 今学期の主な行事は、9月に防災訓練、10月に修学旅行、11月に学園祭である。

 修学旅行は一大イベントだが、学園祭の為に9月から準備を始める部活もある。

 軽音楽部もそのひとつだ。

 高校2年の二学期は、忙しい。


 始業式の日、音波が電車を降り改札を出て階段まで行くと、柱の周りに数人の女子達が集まっている。


 前にも見た光景、音波はもしやと思い急いで階段を下りる。

 柱に近付くと、やはり片山が背中を除き、左右と前を女子達に取り囲まれていた。


「軽音祭に居ましたよね」

「ドースの人と仲がいいんですか?」

「なんで、ギター渡してたの?」

「メンバーとどういう関係?」


 女子達の立て続けの質問攻めに、片山はバッグを手前に持ってなんとか距離を保っている状態。


「ちょっと待って、頼むからそれ以上近付かないで、お願いだから、」


 先日の軽音祭で、片山は眼鏡を掛けてDOSE.のサポートをしていた。

 それで軽音祭を見に来ていた同じ高校の女子達に知られたのだ。


 音波は慌てて声を掛ける。

「片山くん、大丈夫?」


 片山は音波の姿を捉えて言う。

「ああ、音波、」


 片山は盾にしているバッグで、端に居る女子を少し押し戻して、音波のところへ行く。


「音波が来てくれて助かった、早く行こう」

 そう言うと、片山は音波の手を握り、その場から逃げるように少し早めに歩き出す。


「えっ、う、うん」

 残された女子達の視線を又もや痛く感じながら、音波は引っ張られて歩く。


「音波、信号が変わる。走るよ」

「う、うん」


 点滅している信号を走って渡り、後ろの女子達から逃げる。

 信号が赤に変わり、女子達は横断歩道の向こう側で残念そうにしている。


 音波は片山に訊く。

「あの人たち、DOSE.のこと言ってたけど、どうしたの?」

「あー、俺、軽音祭当日に兄さんたちのサポートしただろ? 

 兄さんにギターを渡すのに前に出たから、それで分かったみたいで、

 色々聞かれて…参った」


「そっか、片山くん眼鏡掛けてたもんね。

 さっきの人達、DOSE.のことが好きなのかな? だったら嬉しいね」

「うん、でも俺に色々訊いてくるのは勘弁してって感じ」

「どうして?」

「メンバーの裏側を色々知ってるから、どこまで話していいか分からないし」

「そう、裏側…」


 音波は、先日の軽音祭で大智が演奏後に、プレッシャーから解放されて床に寝ていたのを思い出す。

 そして、口に手を当てて笑う。


「ふふっ」


 音波が笑うのを見て、片山は尋ねる。

「どうしたの? いきなり思い出し笑いして」


 音波は答える。

「ん? 片山くんを待っている間にね、佐藤くんがDOSE.のいる控室に連れて行ってくれたの。

 そしたら、大智さん、床で伸びてた」


「あー、兄さん本番には強いほうだけど、終わった後はいつも脱力してる」

「そうなんだ、意外だな」


 二つ目の信号を渡る。


 片山は音波に言う。

「音波、梶の事だから多分、帰りに何処か寄ろうってチャットが入ると思う。

 ホームルームが終わったら、啓太と部活に顔を出すから、梶と一緒に少し待っててくれる?

 そんなに時間はかからないと思う」

「うん、わかった。 何処で待ってればいい?」

「日陰とか、涼しいところ、教室でもいい」

「だったら、保健室前の木のところで待ってるね」

「ああ、わかった」


 学校に着く。

 音波たちは階段を上り、1組の教室前で別れる。


「それじゃ、また後で」

「…ん」


 片山は右手をヒラヒラさせ、2組の教室に入っていく。

 音波も1組の教室に入る。


 それを、後から来た中條が見る。

「…余裕ぶっこいてんじゃねえか、片山」


--

 始業式後のホームルームが終わった。

 グループチャットに、梶からメッセージが届く。


「帰り4人でどっか寄ろうよ」


佐藤

「俺と成斗は部室に用事あるから

 ちょっと待たせるけど いい?」


円井

「私は大丈夫だよ

 実花 保健室の木のとこで待ってようよ」


「りょーかい」


片山

「 (・∀・) 」


 音波は笑顔になりながら思う。

(ふふっ、片山くんの言った通りだ、実花からチャットが来た)


 スマホをバッグに仕舞おうとすると、左横から声を掛けられる。


「円井、ちょっといいか?」

 声を掛けたのは中條だ。


 音波は言う。

「うん、少しならいいよ。 何?」


「バイト先、どうなったのかなって思って。

 お前、全然電話してこねえまま、夏休み終わっちまったから。

 あの後、何もなかったのか?」


「うん、月曜の撮影で終わりだったみたいで、只野さんとは会ってない」

「そうか、なら良かった」

「中條くん、話を聞いてくれたり外に連れ出してくれたり、本当にありがとう」

「ああ、いつでも聞いてやるし、いつでも連れ出してやるよ。

 円井、あ_」

 中條が言いかけたところで、梶が1組の教室にやって来た。


「音波、お待たせ、行こう」

 後ろのドアから音波を呼ぶ。


 音波は梶に返事をした後、中條に言う。

「うん、わかった。

 中條くん、ごめん、もう行くね」

「ああ、また明日な」


 音波はパタパタと梶の元へ行き、教室を出る。


 音波を見送った中條は、独り言を呟く。


「やっぱり新学期初日は無理か、日を改めるとしよう」


 音波と梶は、階段を下りながら話す。

「ねえ音波、夏休みは片山と何処か行った?」

「ううん、行ってない」

「え、音波も? アタシも啓太と何処も出かけなかった」

「実花も? そうなんだ」


「啓太ってばバイト三昧でさ、全っ然遊んでくれなかったんだよ。

 夏休みで会えたの、軽音祭だけなんだよ? ひどくない?」

「えっ? そうなの? 佐藤くんは実花と遊ぶと思ってた」


「やっぱり、この前怒らしちゃったの、啓太…引きずってるのかな」

「そんな事ないんじゃない? 軽音祭では普通だったし」

「そうかなぁ」


 下足置き場で靴を履き替える。


「ねえ音波、啓太たちが来たら何処に行く? ファミレス? モルド?」

「何処にしようかな…」


 音波たちは話しながら、保健室前に植樹されている樹を囲っている石に座って片山たちが来るのを待つ。


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