2-15-3 挨拶は次の機会に
2-15-3 「挨拶は次の機会に」 耳より近く感じたい2
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大学合同軽音祭、今年オオトリを飾るのはDOSE.(ドース)だ。
DOSE. 定番のBGMが流れ、銅鑼の音で止まる。
グワァーン! グワァーン! グワァーン!
ギターのリフから入る曲、先の池谷でのライブで演った新曲からのスタート。
そして、ドラムとベースが加わり、ステージ上が照明で一気に照らされる。
ワァーッ!!
観客席のあちこちで、赤いタオルが振り回される。
持っているハンカチや帽子等、何か自分も振れるものは無いかと考えたのだろうか?
赤いタオルと一緒に、色んな色が振られる。
一曲目が終わって、ダイチのMCになる。
「D O S E ドースです。
みんな、初っ端からタオルや、色んな色で染めてくれてありがとう!
祭りは楽しんでるかい?
今日も みんなに 一回分の✕✕✕を用意したから、最後まで楽しんでってちょーだい!
それじゃあ、次の曲行くぜー!
BORDER!」
カンカンカンカン
ジャーン!・・・
ワァーッ!!
2回目のMCで、ダイチは弟に渡されたエレアコを準備しながら話す。
「最初からいる人も、途中から来てくれた人も、楽しんでくれてるかい?
今日参加したみんなが強い思いで届けた音を、みんな受け取ってくれたかい?
音楽を通じて繋がった仲間、DOSE.始動の曲そして、
夢を諦めないで、求めて今に繋がる曲、2曲続けて聞いてください。
BLUE、& …」
ワァーッ!
BULEのアコースティックバージョン、ダイチがステージで初めてギターを弾く。
いつものテンポと違う曲に、ファンは序盤戸惑ったようだが、直ぐにタオルを揺らす。
真ん中でギターを弾きながら歌うダイチ。
ソロに入り、配信で弾いたアコギのソロを弾く。
オサムが横に来て、エレアコのソロに合わせてリフを弾く。
シンジも横に来て、優しくベースを合わせる。
エイタロウは、MC中に移動したワンバスのドラムセットで、腹に響くバスドラムを打つ。
音波は、この日持ってきた一眼レフカメラで写真を撮る。
遠くから、ズームをしながら撮る。
そして片山は、兄・大智がステージでギターを弾く姿を見て、嬉しく思う。
同時に羨望の眼差しで、DOSE.のメンバーを見る。
「いよいよ最後だけど、今日で終わりじゃない、
来年も再来年も、この軽音祭はずっと続いていくから、
みんな、また次も祭りに戻ってきてくれよな!
ラスト2曲、みんな、用意はいいか!
行くぜ! Tell Me、Over DOSE.!…」
ワァーッ!
DOSE.の演奏が終わり、一旦幕が下りた後、再び幕が開く。
参加バンドが一斉にステージになだれ出る。
そして、記念撮影が始まる。
各バンドのサポートをしている人や運営スタッフが写真を撮る。
その光景を見ながら、音波も2階席から写真を撮る。
みんなの高揚した表情が、輝いている。
音波はズームで、何枚も写真を撮った。
ー本日はお越し頂きありがとうございました。
お帰りの際は、係の指示に従って、順番にご退場下さいますよう、お願い申し上げます。
繰り返します、お帰りの際は…ー
音波と梶は、椅子に座って伸びをする。
「んーっ、疲れたぁ~、今年は去年より時間が長かったからかな」
梶の問いに音波は答える。
「うん、そうだね。
開演時間が去年よりも早かったからね」
「啓太に、2階に居るってチャット入れとくね」
「うん」
音波が、出口へ流れる客とステージで機材の片づけを始めるスタッフを交互に見ていると、音波のスマホが振動した。
音波は画面を確認する。
「あ、お兄ちゃんだ」
兄の樹からの電話だ。
音波の言葉に梶が反応する。
音波は電話に出る。
「もしもし? 樹お兄ちゃん、どうしたの?」
[音波、今何処にいるんだ?]
「2階席にいるよ」
[そうか、ちょっと手を振ってくれないか?]
「え、うん」
音波は樹に言われた通り、2階から1階を見下ろし手を振る。
[場所が分かった。友達も一緒か?]
「うん、一緒だよ」
[そうか、今からそっちに行く]
「え、うん分かった」
プツッ、
梶が訊く。
「音波のお兄さん?」
「うん、今からこっちに来るって」
「へえ、音波のお兄さんかぁ、カッコいい?
あ、啓太からチャットが来た。
片山遅れるってさ、ほら」
そう言って、梶は音波にスマホの画面を見せる。
佐藤
「今から行く
成斗は遅れるから
円井に伝えといて」
梶
「りょーかい」
暫くして、帰る客の流れに逆らいながら、樹がやって来た。
「音波、ここにいたのか。やっと見つけた」
「お兄ちゃんは何処に居たの?」
「あそこ」
樹は2階の上を指さす。
音波が見上げると、ガラス越しに清香が手を振った。
樹が言う。
「お友達? 兄の樹です、音波と仲良くしてくれて有り難う」
梶は樹に手を差し伸べられ、握手する。
「梶 実花って言います、宜しくお願いします」
そこへ、遅れて佐藤がやって来た。
「みーかー、円井、おまた・・・せ、 あ!!」
振り返る樹を見て、佐藤は驚く。
今年の1月に、音波と一緒に帰った男が目の前に居るからだ。
緊張した面持ちで佐藤が樹を見ていると、音波が佐藤に紹介する。
「あ、佐藤くん、お疲れ様。
紹介するね、樹お兄ちゃんなの。
お兄ちゃん、こっちは佐藤くん、軽音楽部で先輩の手伝いで来てるんだよ」
佐藤が驚いた後、後半安堵したように言う。
「へ? 円井の…お兄さん?
…なんだ、そうか、お兄さん…だからか」
音波と樹は、ホッとしている佐藤を見て不思議がる。
「俺が、何か?」
「佐藤くんどうしたの?」
佐藤は頭に手をやり言う。
「いや、何でもない、気にしないで」
(兄妹だったのか、だから車で…)
樹はイヤホンで呼ばれる。
樹は上を見て清香に手を挙げた後、音波に尋ねる。
「音波、4人でご飯を食べるって言っていたけど、もう一人は?」
「あのね、遅れるんだって」
「そうか、上に呼ばれたからもう戻る。挨拶は次の機会にするよ」
「うん、樹お兄ちゃん、またね」
「ああ」
樹は佐藤と梶に軽く頭を下げ、片山とは会えずに戻っていった。
佐藤は言う。
「そうだ、円井、DOSE.と一緒に写真撮ったことないだろ?
まだ着替えてないだろうから、今から行ったら写真撮れるかもよ」
音波は言う。
「えっ、控室に行ってもいいの?」
「大丈夫っしょ、面食いの実花が好きそうなSHUROEもいるし。
SHUROEの写真はライブに行かないと撮れないからな。
成斗も、もう少し時間かかりそうだし」
梶が速攻で言う。
「行く行く! 早く連れてって」
「私も行きたい」
「じゃあ、行きますか」
音波達は佐藤に先導され、控室に向かった。




