2-15-2 サポートの大切さ
2-15-2 サポートの大切さ 耳より近く感じたい2
--開演1時間前、
SHUROEのボーカル、リョウは面白くない表情で、控室を出た先の自動販売機横のベンチに座ってボソッと呟く。
「何だよ、みんな大した事ない奴らばっかりじゃん」
下を向いていると、声を掛けられる。
「あー、大丈夫ですか? 具合でも悪いんですか?」
顔を上げる。
声を掛けたのは片山だ。
「何、お前誰?」
「え、片山といいます」
「俺はリョウ、お前も出るの?」
「いえ、サポートなんで」
「サポート? 出ないのに手伝いとかやって、面白くもなんともないじゃない」
「あー、そんなことないです。
ライブを、軽音祭を成功させるために、裏方は絶対に必要ですから。
音響、PAも、設営もチラシ一枚だって、全部ステージに立つ人たちを支える大事なものですから」
「…」
片山は、自動販売機で飲み物を数本買いながら、リョウに話す。
「ライブハウスまでは手が届かないけど、音楽やってたら一度はステージで演奏したいじゃないですか。
軽音祭は、そういう人たちのためでもあるって聞きました。
音楽を続けていくって大変だから、学生時代の思い出にって参加するバンドとか、メンバーが足りなくて、なかなか形にならないバンドがこの日だけの為に結成して参加したりとか、色んな思いをもってるから。
そういう人たちの手伝いが出来るの、俺は嬉しいです」
「年下が俺に説教かよ、」
片山は頭に手をやり、リョウに言う。
「あー、すみません。
あの、SHUROEの方ですよね、SHUROEが参加するって決まって、2つのバンドが候補から外れたって、聞きました。
その人たちの分も、良い演奏を見せて下さい。 楽しみにしてます」
「…、お前は出たくないの?」
「俺は、去年ちょっとだけ叩かせてもらいました。それで十分です」
片山の顔が、リョウには悲しげに笑ったように見えた。
遠くから佐藤が呼ぶ。
「おーい、成斗ぉ、先輩たちテンパってるから、手伝って」
「ああ、わかった。 それじゃ、失礼します」
片山は会釈をし、佐藤の方へ走っていく。
そして、高校枠の控室に入っていった。
「…2バンド、」
リョウは、慎司が言った言葉を思い出す。
『 あんまり祭りを舐めないでほしいな… 』
「…っ、」
リョウはくッと下唇を噛んだ。
--大学合同軽音祭 開演 13時
いよいよ軽音祭が始まる。
ブザーが鳴り、照明が暗転する。
今年のオープニングは、とあるRPGゲームのクライマックスで流れる曲だ。
ピアノの音が徐々に小さくなって、消える。
ステージの幕が開く。
キーボードのイントロから、ドラムのカウントで爆音が会場に轟く。
ワーッ!
高校枠の演奏が始まった。
音波たちの高校は、今年は2番目だ。
音波と梶はお互いに、片山と佐藤を見ようと双眼鏡を準備する。
「ねえ音波、啓太たちステージの隅にいるんだよね」
「うん、そうだと思うよ。
でも、トラブルが起きない限り、ステージには出てこないんじゃないかな」
「そっか」
暗いステージの上で、バンドの入れ替えが終わり、音波たちの高校の番になる。
トラブルもなく順調に進み、演奏を終える。
佐藤はステージの右端_ギター側でチラッと見えたが、片山の姿は分からなかった。
段上がりにセッティングされたドラムセットの後ろに居たのだろうか。
次々に大学生バンドが演奏をしていき、SHUROEの番になる。
SHUROEは演る曲を大幅に変更した。
重くて激しい曲を止めて、持ち曲の中では比較的明るめの曲を熱演していく。
MCに入り、リョウが言う。
「今回の俺等の参加で、苦い思いをした人達の分も、
最後まで完全燃焼すっから、お前等も盛り上がってくれよな!」
ワーッ!
「一気に行くぜ! Next song …」
ワーッ!
-
ステージを終え、SHUROEのメンバーが通路から控室に戻る時、片山がリョウに声を掛ける。
「リョウさん、凄く良かったです、お疲れ様でした」
リョウは、強がって言う。
「あ? 当然だよ、コッチは場数が違うっての」
「リョウさん、いい顔してます」
「うっ、お、男に言われても嬉しくない、けど…どうも」
「フッ、失礼します」
「サポート、がんばれ」
片山と離れた後、直ぐにDOSE.のメンバーがやって来る。
大智たちがSHUROEのメンバーに言う。
「お疲れ様です」
「お疲れいっす」
「俺たちも燃えますよ」
「終わったら記念撮影あるから、残っておいて下さいよ」
SHUROEのメンバーは、頷いて言う。
「わかった」
「オオトリでコケるなよ」
「ラスト頑張れ」
「最後盛り上げろよ」
各々ハイタッチをし、別れる。
歩いていたリョウは足を止めて振り返る。
「あれ、高校枠のサポートだろ…片山ってやつ、
何でステージの方に行ったんだ?」




