2-14-1 2ショット
2-14-1 2ショット 耳より近く感じたい2
--土曜日(8/15)
音波は中條に教えられた公園に行く。
緑が多く、気持ちの良い場所だ。
歩いていると、遠くに車が数台停車しているのが見えてきた。
その車の周りに、コスプレをした人たちが数人いる。
(あ…あそこかな)
音波が車の方へ歩いていくと、誰かが気付いて手を振ってきた。
「おーい、コッチコッチ」
音波が更に近付いていくと、何人かが寄ってきた。
「へえ、あなたがタケルの手伝いしたんだ」
「身長以外は似てるね」
「ええっと、あの、」
初対面の人に話しかけられ、音波は緊張する。
「みんなやめてよ、円井がビビってるから」
後ろからやって来たのは女性…ではなく中條だ。
「なっ、中條くん?」
先日モデルのサキに、中條の写真を見せてもらったが、生で見る中條の姿は写真よりも綺麗だ。
「昨日は、少しでも眠れた?」
「う、うん」
女性が中條の声で話す姿…中條が化粧をして話す姿に、音波は戸惑いながらも言う。
「中條くん、綺麗」
「そりゃあどうも」
中條は音波の背中に手を当てて言う。
「先に撮影するから、円井も写真撮れよ。
あそこに居る赤い服の人がアマチュアカメラマン。
凄く気さくな人だから、聞きたいことがあったら質問すればいい。
紹介するから」
「うん、ありがとう」
中條は音波がみんなと馴染めるように、撮影中も音波に声をかける。
「円井、サキさんとの2ショット撮って」
「うん」
「円井、こっち側から撮って」
「うん」
「円井、俺と2ショット撮ろうぜ」
「うん」
-
暫く写真を撮った後、音波は木陰に座り、休憩する。
そこへ、男装コス姿のサキがやって来て、音波の横に座る。
「タケルね、小さい頃に女の子みたいって言われて虐められた事があったんだって」
「え?」
「もともとキレイなもの、可愛いものが好きで、でも男の子が可愛いのが好きだなんて知れたら気持ち悪がられるでしょ?
そんな時に、コスプレに出会ったんだって」
「そうだったんですか、」
「うん、コスプレだったら自分の好きな格好が堂々と出来るじゃない。
男でも綺麗な衣装を着て化粧して。
あ、言っとくけどタケルは女装コスだけってわけじゃないよ。
男キャラのコスプレもするよ」
「へえ、そうなんですか」
他の人と撮影し合っていた中條が、音波たちのところに来て言う。
「円井、サキさんとの2ショット撮ってやるよ」
「うん、ありがとう」
「ほら、サキさん、いつもの攻め顔して」
「お任せあれ」
「ひゃっ、」
パシャリ!
音波は、女性のサキとの写真を撮られた。
-
「そろそろお開きにしようか、着替える人は車の中で順番に着替えて」
皆、着替えや片づけをしている中、先に着替えを済ませた中條が音波のところへやってくる。
「暑い…あの衣装は夏に着るもんじゃねえ、失敗した」
「でも、凄く綺麗だったよ中條くん」
「この間の、化けた円井には負けるけどな」
「そそんなことないよ//」
「みんなが帰ったら、サキさんと話をするからな」
「うん、分かった」
サキがやってくる。
「2人ともお待たせ。場所を変えて話そうか」
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音波と中條、サキは近くのオープンカフェに移動する。
「結果から言うけど、昨日の今日で私も時間が無かったから、あまり仲間から話聞けなかったんだけど、只野弘幸の悪い過去は見つからなかった」
サキの意外な言葉に、音波と中條は驚く。
中條が言う。
「昨日コス仲間が被害に遭いそうになったって話してたじゃないか」
「うん、実はその子、弘幸と一時期付き合ってたらしいのよ。
別れた後に弘幸の人気が上がってきて、惜しいと思って復縁を迫ったら断られたから、腹いせに『ひどい目にあった』て嘘をついたんだって」
「何だよそれ、」
「SNSでも、叩かれるような事は書かれてないみたいだし。
だから弘幸に泣かされたっていう情報も、怪しいんだよね」
「じゃあ、何で円井は脅されたんだよ?
モデルをしないと、会社の仕事を降りるとか言うんだよ」
「それは私にも分からないよ、円井さんは何か心当たりは無いの?」
音波は首を振って言う。
「分かりません、受けた仕事…乗り気じゃなかったって言ってました。
私がモデルをすれば、仕事を続けるって言われて、」
「うーん、弘幸が何を考えてるのか分からないわねぇ」
中條は悔しそうに言う。
「これじゃあ、あの野郎をとっちめられねえ、チャットのスクショとかあれば、証拠になるのに…。
円井、次に仕事で会うのは何日なんだよ?」
「予定では火曜日、18日」
「口頭でのやり取りじゃ言い逃れされる可能性が大だけど、もう会社に言うしかないか」
「そうね、円井さん、結局役に立てなくて悪かったわね」
「いえ、とんでもないです。
色々と話を聞いてもらっただけでも、嬉しいです。
サキさん、有り難うございます」
「うん、それじゃあ帰ろうか、車で送るよ」
音波たち3人は席を立ち、駐車場に向かう。
駐車場に到着した時、中條が音波の視界を遮るように前に立ち、いきなり肩を掴んで引き寄せる。
「ひゃっ、中條くん? どうしたの_」
「しっ、喋るな、そのままじっとしてろ」
車を挟んで遠く向こう側を歩く2人を、中條は見る。
男と女が話しながらバイク置き場に移動する。
そして、バイクは発進し、行ってしまう。
(……チッ、)
「中條くん、肩…痛い」
(ハッ、)
「悪い、車に乗ろうぜ」
中條は音波の肩から手を放し、音波の手を掴みサキの車へ向かう。
「う、うん//」
音波は、いきなり引き寄せたり手を繋いで引っ張るように歩く中條の、やや強引な行動に驚くと同時にドキドキしながらも、何だか怒っているように見える中條の横顔を見て、不安になる。
「中條くん、どうしたの?」
「…、何でもねえよ」
2人はサキの車の後部座席に乗り込んだ。




