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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-13-5 助ける理由は…

2-13-5 助ける理由は… 耳より近く感じたい2


 今度は電話だが、知らない電話番号が表示されている。

 音波は、名無しで電話を登録していない。


 数日前に、仕事場でモデルと、口頭で連絡先を教えたことを、ふと思い出す。


(あ、この間のモデルさんかな…)


 音波はかすれた声で電話に出る。

「…もしもし、」

[…円井?]

「え?」


 電話の相手は女性ではなく男の声だ。

 しかも苗字で呼ばれた。

 音波は緊張する。


[俺、中條だよ]


 思いもしない中條からの電話に驚きつつも、音波は少し安堵する。

 声だけだが、また独りでは無くなったからだ。


 音波は平静を装って中條に訊く。

「中條くん?

 どうして私の電話番号を知ってるの?

 教えてなかったよね?」


[さっき、コスの先輩のサキさんに教えてもらった。

 円井と会ったって電話がかかってきて、連絡先教えてもらったって話してたから。

 色々理由付けて俺にも教えてくれって、無理やり聞き出した]

「そうなんだ…」


[…円井、お前大丈夫か? 元気ないけど、何かあった?]

「え、」


[サキさんが言ってた。

 只野が円井に、紙切れ渡してるのを見たって。

 だから心配で電話かけた]

「サキさんが、」


[円井、声がかすれてるように聞こえるけど、お前もしかして、泣いてた?

 只野と何かあったのか?]

「…、」


[おい、まさか…何かされたのか? あの野郎、ただじゃおかねえ…]

「えっ、違うのっ、そうじゃないの、」


[だったら何だよ、何で泣いてたんだよ]

「それは…言えない」


[言えない? 人に言えないことを言われたか、されたって事だよな。

 あいつの住所調べて今から、あの野郎をぶっ飛ばしに_]

「中條くん、お願いやめて! 

 そんな事をしたら、もっと酷くなっちゃう」


 音波は、中條の激高している声に驚きながらも、慌てて中條の言葉に被せて言う。


[もっと酷く? どういう事だよ、

 話せよ円井、俺に話せないなら片山に話せ_]

「片山くんは駄目!」

 片山の名前が出て、音波は焦り、再び中條の言葉を遮る。


[何で駄目なんだよ、あいつ円井の彼氏だろ、]

「…、今大変だから、心配かけたくないの」

[何が大変だよっ、自分の彼女がピンチなのに]

 中條の声が、別の意味でキレる。


[……只野の野郎、表は誠実そうで涼しい顔してるけど、裏では泣かされたやつもいるって噂が、チラホラ出てる。

 コスのほうでも、被害に遭いそうになった女の人がいる。


 円井もそうなら、助けたい。

 片山に言えないなら、俺に話して]


 音波は、自分を心配する中條の声や言葉に感謝しつつ、言う。

「中條くんは、関係ないのに」


[ハッ、俺には関係ないだって?

 大有りだぜ、コス仲間が被害に遭いそうになったって言っただろ?


 それに…今はいいや、とにかく話せよ、

 独りで悩むより、2人の方が何かいい案が出るし、場合によっては大人の力を借りた方がいいかもしれないから]

「でも、」


[でもじゃねえって、俺、気になる事があると、放っておけねえ主義だから。

 片山に話せないってことは、佐藤にも話せないってことだろ?

 だったら、今は俺に話してよ]


 キツく聞こえがちな中條の、心配しながらも優しく話す声に、音波は涙が出てくる。


「中條くん…、」

[泣いた後でも、泣きながらでも、

 どんだけでも 話聞くから]

「うん、」


 Seiの言葉が音波を前に押す。


『 一人で悩まないで

  Namiさんなら助けてくれる人

  近くにいると思うから

  早めに誰かに相談して 』


 音波はひとしきり泣いた後、夕方起きた只野との事を、中條にも話した。



[フン、成る程ね、手は出さないけどモノは残すって事か。

 あの野郎許せねえ…円井を脅すとか]

「え? 私を何?」


[何でもねえ、今回の件、サキさんに話してもいい?

 あの人、コスプレ界で結構有名だから、顔が広くて人脈もある。

 只野のこともサキさんから聞いたし、情報くれると思うから。

 ソレ持って会社に言えば、大丈夫だろ。

 途中で契約切ったって、変な野郎と組んで後々会社の評判落とすよりマシだろ?]

「サキさんにも、迷惑かけちゃうよ」


[じゃあ、こう考えろよ。

 コス仲間の仇を取るのに、円井の件が役に立つって。

 そしたらお前も、少しは気が楽になるだろ?]

「中條くん、どうしてそこまでしてくれるの?」


[そりゃお前のこ…、だあーっ、衣装合わせの礼だよ、

 あれ、マジで助かったから。

 あの人も喜んでくれたから、円井のおかげであの人の…笑顔が見れたから]

「そうなんだ、良かったね中條くん、喜んでもらえて」

[ああ]

「ありがとう中條くん、気を使ってくれて」


[なあ円井、明日コスの撮影会あるから、お前も来いよ。

 サキさんに誘われただろ?

 お前は真面目だから、家の中で考え込んでたらコケが生えそうだし。

 気晴らしに外に出て、綺麗なモノを見て、ワイワイ騒いだ方がいいって。

 そん時にサキさんとか、大人に知恵を借りよう、色んな職種の人達がいるし。

 そうしよう、な?]


「うん、わかった。

 中條くん、ありがとう」

[よし、決まり! 地図送るから円井が使ってるアプリ教えて]

「うん、えっとね、___」


 音波は、どうしていいか分からない状況から助けてくれようとする2人に、感謝する。

 遠く知らないところから動いてくれるSei、近付いて動いてくれる中條。


 音波は、一番に片山に会いたいのを我慢する。


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