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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-12-4 “君の見る世界”

2-12-4 “君の見る世界” 耳より近く感じたい2



ピンポーン


 音波の兄、樹が帰ってきた。


 父親が玄関へ行き、ドアを開ける。


「おかえり、樹」

「ただいま、父さん」


 リビングに移動しながら、父親は樹に話しかける。


「音波はどうだ? バイト頑張っているか?」

「ああ、もう基本操作の段階は済んで先に進んでるから、呑み込みは早いよ。

 月曜から忙しくなるから、音波の帰りが少し遅くなるかもしれない。

 その時は連絡するし車で送るよ。

 あとで母さんにも言っておく」


「ああ、分かった」

 父親は、樹の顔を見て思う。


(さっきのは…俺の錯覚だったのか?)


「音波は?」

「2階だ」

「来週の日程を伝えてくる」


 樹は荷物をソファーの横に置き、2階へ行く。



トントン

「音波、兄さんだ、入っていいか?」


「うん、いいよ」


ガチャリ

 樹はドアを開け、音波の部屋に入る。


「写真を見ていたのか?」

「うん、お兄ちゃん、私が撮った写真がドースのサイトに載ってるの、知ってた?」


「いや、俺は慎司にデータを渡しただけで、後は関与していない。

 音波の写真が採用されていたのか?」

「うん、こんな風に誰かの役に立つのって嬉しいね」


 音波の表情を見て、樹は尋ねる。

「DOSE.(ドース)のメンバーと知り合いになったのか?

 大学で修が音波と会ったって言ってた」


「修さんとは、去年の夏休みのバイトで一緒だったの。

 でも、池谷のライブで声をかけられるまで気付かなかったの」

「そうか」


「でもね、一番びっくりしたのは、友達がボーカルの大智さんの弟で、サポートメンバーだったの」

「…そうか、友達か」

「お兄ちゃん?」


「いや、何でもない。

 音波、これからの予定なんだが、来週から写真撮影の手伝いをして欲しいんだ。

 音波は写真が好きだから、近くで撮影の現場を見たら、色々吸収出来る事があると思ってな」


「えっ、本当? 嬉しい!」

 音波の顔が、ぱあーっと明るくなる。


「少し癖のある人だけど、音波なら大丈夫だろう。

 男性なんだが、うちのスタッフも一緒に手伝うから安心していい」

「ありがとう、お兄ちゃん」


「それと並行してデスクワークもあるから、忙しくなる。

 帰りが遅い時は、車で送る」

「うん、分かった」


 音波は、写真家の撮影現場を近くで見れると思うと、感激で胸が躍った。


(お兄ちゃんがくれた機会だから、夢に近付くためにも頑張ろう)



--週明け、月曜日(8/3)


 兄のいる会社で、写真家と初顔合わせの日。

 スタッフの後で、音波も写真家に挨拶をする。


「どうも、只野弘幸ただのひろゆきです。

 僕に付いてくれる子、君とキミ? 宜しく」


 写真投稿サイトやSNS等で、徐々に名前が売れてきた只野。

 女性の妖艶で美麗な写真を撮る事に定評がある。

 自分の顔写真もアップしており、そのルックスの良さで女性からの支持が高い。


 その只野の、一瞬舐める様に人を見る目に、音波は若干の違和感と寒気を感じる。

 だがこの時は、初対面で緊張しているせいだと思っていた。


「それでは、本日の打ち合わせはこれで終了とします。

 次回は今週の土曜日に現地集合という事で、宜しくお願いします」

「こちらこそ、宜しくお願いします」


 最初の打ち合わせが終わり、パーテーションで区切られたミーティングスペースから、ぞろぞろとスタッフが移動する。



 音波はオフィスのドアを開け、只野を外まで送る。


「短い期間ですが、どうぞ宜しくお願いします」

 音波が言い、頭を上に上げた時、只野が音波の顔の横の壁に手を当てて言う。


「ふーん、君が。

 写真を撮るのが好きなんだって?

 色々教えてやる代わりに、今度僕の頼みも聞いてくれるかな?」

「え?」


「写真、上手くなりたいんだろう?

 君の見る世界、教えてよ…色々と」

 只野はそう言った後、フッと妙な笑みを浮かべ、壁から手を放す。


「じゃあ、今週の土曜にまた会おう」

 軽く手を上げ、只野は帰って行った。


 音波は疑問に思う。

(私の見る世界って、どういう意味? 頼みって何だろう?)



 音波はオフィスに戻り、自分の席に着く。


 そこへ、樹がやって来た。

「音波、初顔合わせはどうだった?」

「うん、少し緊張した」

「そう、何か困る事があったら言うんだよ、対処するから」

「うん、分かった」


 スタッフの一人が樹を呼ぶ。

「樹、こっち頼む」

「ああ、わかった。

 じゃあ音波、作業続けてくれ」

「うん」


 音波は、スタッフの元へ行く樹の後姿を見て、誇らしく感じる。


(樹お兄ちゃん、会社でみんなから頼られてるんだ…凄いな)



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