2-11-4 「やれた方を見ろ」
2-11-4 「やれた方を見ろ」 耳より近く感じたい2
--土曜日、午前8時半過ぎ
片山はソファーで目を覚ます。
「…、」
近くで話す声がする。
(…あ、修さんが泊まるって言ってくれたから、気が緩んで眠ってしまった…)
昨日のルリとの接触による緊張の連続で疲れた体を、ゆっくりと起こす。
「お、起きたか」
声をかけてきたのは、兄の大智だ。
「兄さん、」
大智はソファーに移動し、弟の横に座って言う。
「昨日はよく頑張ったな、修から話は聞いた。
いきなりルリの相手は、相当きつかったんじゃないか?」
片山は首を振って言う。
「あー、やっぱり俺1人じゃ駄目だったから、修さんに連絡して助けて貰った」
「それでも病院にかかる前に一歩前進できたんだ。
ダメな方に目を向けるな、やれた方を見ろ、いいな? 成斗」
そう言い、大智は弟の肩に手を置く。
片山は若干辛そうな笑顔で兄を見る。
「…わかった」
兄弟の話が済んだところで、修が片山に言う。
「ルリちゃんが風呂上がったら、ナルも入れよ。
お前、色んな汗かいたんじゃない?」
片山は多少顔を歪ませながら、
「…うん、そうする。
やっぱり夏の重ね着は、キツイね」
と言い、薄手の長袖の上着を脱ぐ。
「でも、たかが布一枚だけど、着て行って良かった」
片山は脱いだ上着を、キュッと掴んだ。
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片山が作った朝食を少し遅い時間に摂った4人は、マンションを出る。
「ほーんとゴメンね、みんなに迷惑かけて」
ルリが甘えた声で言う。
大智が言う。
「ルリ、今度から外で飲む時はちゃんとセーブしろよ。
あと、合コンとか参加するのは、俺が迎えに行ける日にしろよ」
修が言う。
「もういいじゃないか、大智。
ルリちゃんも反省してるんだし」
ルリが言う。
「そうそう、反省してる」
溜め息をつき、大智は弟に言う。
「はあ、じゃあルリは俺が送っていくから、成斗は修を頼むな」
片山は頷いて言う。
「うん、分かった」
ルリが片山に言う。
「それじゃあセイちゃん、水曜日から頑張ろうね」
「あー、うん」
大智とルリは、先にバイクで行ってしまう。
それを見送り、片山も修を後ろに乗せ、バイクを発進させる。
最初の信号待ちで、修が片山に言う。
「ナル、行先を地下鉄に変えてくれ」
「え?」
「慎司のとこに行くから、地下鉄の方が早い」
「あー、分かった」
片山は、修を地下鉄まで送る。
「修さん、本当に有り難う」
「おう、あんまり無理して焦るなよ、ナル」
修はニッと明るく言い、手を振り地下鉄への階段を下りていく。
修を見送った後、片山はバイクをわき道に移動させる。
スマホを取り出し、文字を打つ。
そして、送信ボタンを押す。
片山
「音波
今日 約束してた
写真の整理
14時頃に
そっちに着くと思う
バイクで行く」
円井
「うん わかった
14時だね 待ってる
運転 気をつけてね」
片山
「(・∀・)」
すぐに届いた音波からのメッセージを読み、いつもの顔文字を打った片山は、スマホをウエストポーチに仕舞う。
そして、バイクを発進させた。




