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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-11-2 何も起きない保証

2-11-2 何も起きない保証 耳より近く感じたい2



--

 日付が変わった午前0時過ぎ

 

 個室のドアが開く。


「悪い、ナル、待たせたな」


 そう言って入ってきたのは、修だ。


「修さん、迷惑かけてごめん」

 片山はソファーから立ち、申し訳なさそうに言う。


「なーに、気にするなって」


_片山は駅近くのカラオケボックスでバイトをしている修に、助けを求めたのだ 。


 修のバイト時間が終わるまで、カラオケボックスの一室でルリを寝かせておく。


 その後は、タクシーで片山のマンションに向かう。


 ルリの住むマンションに送っても、鍵はかけられないからだ。_



 修は片山に明るい声で言う。

「ここから先は、俺が彼女をるから」


 ソファーで横になっているルリの体を起こし、修はルリをおんぶする。


「じゃ、帰るとするか」

「…うん」


 片山と、ルリをおんぶした修はホールに出る。


 修がカウンターに行き、スタッフの1人に声を掛ける。

「タクシー頼んでくれた?」


 修に訊かれた男は返事をしながら、片山を見る。

「仁井田さん、もうすぐ来ると思いますよ…」


「ん? あいつがどうかしたか?」

「いえ、何でも…お疲れ様です」

「? サンキューな、お疲れい」


 修は片山の元に行き、一緒に店を出る。

 そして、丁度到着したタクシーに乗り込んだ。


--

片山のマンション


ガチャリ、

 玄関のドアを開け、片山はルリをおんぶした修を中に入れる。


 靴を脱ぎ、電気を点け、リビングドアを開ける。

 エアコンをつける。


 修は取り敢えず、ルリをリビングのソファーに下ろし、履いたままのヒールを脱がす。


 ルリのヒールを片山に渡しながら、修は言う。

「ナル、俺に連絡して正解だったな。

 お前、相当きつかったんじゃない? 店に着くまでの間。


 彼女、おんぶしてる時も首閉まるくらい腕を絡めてくるし、

 タクシー乗ってる間も、大智と間違えてくっ付いてくるし」


 ヒールを受け取った片山は、下を向く。


「……、修さん、本当に助かった。

 靴、置いてくる」

 片山はリビングを出て、玄関にルリのヒールを置きに行く。


「…はぁ、」

 片山は深く溜め息をつき、自分の手を見る。


(情けないな、全く…

 酒で酔ってるとはいえ、弱ってる女の人の面倒を見る事も出来ないなんて…

 この身体が恨めしい)


 目をギュッと瞑って手を下し、頭を左右に振る。


 リビングに戻ってきた片山に、修が話しかける。

「なあナル、彼女どんだけ酒飲んだのかね。

 全然起きる気配が無いぜ。


 これじゃあ、合コンとかに参加したら、確実に『お持ち帰り』されちまうな」


「え…それ危ないでしょ」

「大智が帰ってきたら、ナルと彼女が合流してからの様子をちゃんと話しとけよ」

「あー、分かった」


「親戚、リビングに布団敷いて寝かすか」

「わかった」


 片山は、納戸に布団を取りに行き、持ってくる。


 修は片山に訊く。

「ナル、お前晩飯食ったの?」


 片山は布団を敷きながら答える。

「あー、食べてない」


「何か胃に入れとかなくて大丈夫か?」

「今、食欲ない、」


「そお? そっち終わったらコーヒー淹れて。

 親戚を布団に移すから」

「わかった」


 布団を敷き終わり、片山はキッチンに移動する。


 修はソファーに寝かせているルリをお姫様抱っこし、布団に移す。


「んん~、大智ぃ、」

 ルリが修にしがみつく。


「おっと、こりゃあ相当好きなんだな、大智の事」

 修は言いながら、まとわりつくルリの手を外して布団に寝かせ、夏掛けを掛ける。


 コーヒーカップを2つ持って、片山が言う。

「修さん、コーヒー何処で飲む?」

「ソファーで飲む」

「ん、」


 リビングのテーブルにカップを2つ置く。


 片山はソファーに座り、息を吐く。

「はぁ、ドッと疲れた…、修さんごめん、俺、」


 修はソファーに移動しながら言う。

「もう謝るなって、デカいアンプに比べたら、女ひとり抱きかかえるのなんて余裕だぜ」


 続けて修は言う。

「それと、俺も今夜はココに泊まるから、安心しろ」


「え、」

 片山は、修を見上げる。


「その方がお前も”安全”だろ?

 途中で起きた彼女が、大智とお前を間違えてどんな動きをするか。

 大智が帰ってくるまで、何も起きない保証はないからな」

 

「! 修さん、…っ」

 片山は肩を震わせ、下を向く。


 修は片山の傍に座り、片山の背中を擦る。


「ナルが小4の頃からお前んちに入り浸ってたんだぜ。

 大智は俺にお前の体の事を隠してたつもりだけど、

 あいつ誤魔化すの下手だから、俺には”最初”からバレバレだっての」

「…、そっか」


 修は片山に優しく言う。

「ナル、俺にもお前は弟みたいなもんだ。

 今日、頼ってきてくれて…嬉しかったよ」


 片山は嗚咽を堪え、震える声で言う。

「っ、だからルリの引っ越しの時も、今までも…気にかけてくれてたんだ。

 迷惑かけてごめん、修さん、あり…がとうっ、」



--深夜、3時半過ぎ


 兄の大智が帰ってきた。


 玄関のドアを開けて、最初に目に飛び込んできたのは女もののヒール。


「え…!」


 大智は慌てて靴を脱ぎ、急いで弟の部屋のドアを開ける。

「成斗!」


 暗い、部屋には居ない。

 直ぐにリビングに向かう。


ガチャッ、

「成…斗、?」


 ドアを開けて目に入ってきたのは、布団。

「え、な…んで、布団が?」


 誰かを確認する為、布団に近寄る。

 寝ているのはルリだ。

「え…ルリ?」


 大智は戸惑いながらも、弟の姿を探す。


 ソファーの端に、修の長髪をゴムで束ねた後姿がある。


「は? 修が何で…、」

 大智はソファーに近付く。


 弟の成斗は、長袖の上着を着たまま、修の膝を枕にして寝ていた。


 大智はボソリと言う。

「…なに? どういうこと?」


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