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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-10-1 届いたレターパック

2-10-1 届いたレターパック 耳より近く感じたい2



--7月第4週


 カフェでのアルバイト時間が終わり、着替えを済ませ、片山は裏口から店を出る。


 バイクを置いてあるスタッフ専用駐車場へ向かおうとすると、後ろから声を掛けられる。


「セイちゃん、お疲れ」


 片山は背後を取られないように、直ぐに振り返る。


 親戚のルリだ。


「ああ、ルリか、お疲れ」


 ルリは片山の横に並んで話しかける。

「ねえ、これから帰るんでしょ?

 私も一緒に連れてってよ」


 歩きながら片山は質問する。

「…え、ルリ、何で?」


「何でって、大智に話があるからに決まってるでしょ?」


 ルリは親戚だといっても、ハトコ以上の遠い続柄である。


 大智とルリが何故仲が良いのか、それは、大智が高校2年の時、親戚の結婚式でルリと出会ったのがきっかけだった。


 ルリは大智と同じ年だが、1年浪人して今年大学に合格し、地方から出てきた。


 結婚式には片山は出席しなかった。


 大人の女性が沢山集まる場所など、片山は到底無理だったからである。


 ルリとは以前から面識はある。


 大智が高校の時から、ネットで画面越しに会話したりしていたからだ。


「ほら、ヘルメットはちゃんと持ってきてるから。

 ね? いいでしょ?」


 片山はルリの頼みを、

「いや、無理、電車で来れば?」

 と断り、バイクのカギをズボンのポケットから取り出す。


「えー、いいじゃないの、後ろにのっけてよぉ」


 そう言ってルリは、片山のむき出しの左腕を直に掴み、絡みつく。


ビクッ!!

「あっ!」


 片山の身体が反応し、バッ!とルリの腕を勢いよく振り払う。


チャリーン、

 バイクのカギが、片山の左手から落ちる。


「きゃっ! 何すんのよぉ」

 ルリは、少しムッとした顔で片山を見る。


「…あ、ルリ、ごめん」


 下を向いて謝る親戚に、ルリは疑念を抱く。


「な…に? 今の、無理ってどういうコト?

 ねえ、セイちゃん、言いなさいよ、成斗っ」


 少しの沈黙の後、片山は答える。


「俺、…女に、触られるのが、ダメなんだ…」

「え、」


 片山は、ルリが掴んだ部分を、自分の手で押さえる。

 夏の暑さとは違う汗が、片山の額を濡らす。



 ルリは直ぐに謝る。

「知らなかったとはいえ、いきなり触ってごめんね」

「……、」


 ルリは訊く。

「セイちゃん、いつから? 大智は知ってるの? 家族は?」


「…中1から、兄さんと母さんは知ってる。

 父さんは…、この間初めて俺の症状を見て、知った」


「中1からって…、」

 ルリは絶句する。


 4年近くも苦しんでいて、しかも父親が息子の状態を知ったのが、つい最近だというのだ。


 片山は、落としたカギを拾う。

「……」


「後ろに乗っけてもらうのは、また”今度”にする。

 とにかく、今から大智には会うから。

 タクシー拾って行く」

 そう言って、ルリは通りの方に歩いて行った。


(バイト先でバレたのがルリで良かったけど…、

 やっぱり、キツいな…)


「ハァっ、」

 片山は、深い溜め息をついたあと、ヘルメットを被り、バイクのエンジンをかけ、マンションに向けて発進した。

 


--

 マンションに戻った片山は、ドアに鍵を挿して開錠する。


ガチャリ

 玄関のドアを開け、靴を確認する。


 兄の大智の靴は無い。

 ルリもまだ来ていない。


 片山は、着替えの服を部屋に取りに行く。

 夜のバイトの前に、一度シャワーを浴びる。


 準備を終え、再び出かけようと部屋から出た時、兄の大智が帰ってきた。


「あ、成斗、今からバイト?」

「あー、うん。

 ルリねえが来るってバイト先で言ってた」


 大智は言う。

「ああ、さっき連絡があった。

 ルリが飯作ってくれるって言ってるけど、お前、食べれそう?」


 片山は首を振りながら言う。

「あー、初めてだから分からない。

 作り置きとか、冷凍してるやつとか、適当に食べるから。

 俺の事は大丈夫、気にしないで」

「ああ、わかった」


 片山は靴を履き、玄関のドアを開ける。

「それじゃ、行ってくる」

「ああ」

「…ん」

 

 玄関のドアが静かに閉まる。



 弟を見送った大智は、ハアッ、とため息をつき、リビングに入る。


 キッチンへ移動し、冷凍庫を開け、中を確認する。


 冷凍うどん、小分けにされた鶏もも肉、グラム分けされた水戻しパスタ麺。

 そして前もって作っておいた、あとはもう揚げるだけのフライ類。

 タッパー類は温めるだけでいい。


「これ、何のフライだ?」


 大智が手に取って確かめようとした時、インターホンが鳴った。


 ルリが来たんだろう。


 大智は冷凍庫を閉め、モニターを確認する。


 ルリではなかった。


「宅配です。片山さんのお宅で間違いないでしょうか?」


(宅配何て珍しい、成斗がネットで買い物でもしたのか?)


「今、開けます」


 玄関のドアを開け、宅配物を受け取る。


 何かの資料かパンフレットが入っているような、レターパック。

 ずい分と分厚い。


 送り主を確認する。


 母親の名前だ。


「この字は…?」


 開封しようとするが、またインターホンが鳴る。


 大智はモニターを確認せずに、直ぐにドアを開ける。


 今度はルリだ。


「大智ぃ、来たよぉ」

 入るなり、買い物袋を置いて、いきなり抱きつくルリ。


「うわっ、」


 突然の事で、多少よろめきつつも、大智はしっかりとルリを抱き留める。


「久しぶりだなルリ、4月以来か。元気だった?」

「ううん、元気じゃなかった。

 せっかくコッチに出てきたのに、会えなさ過ぎて死ぬとこだった」

 甘えた声で、ルリは言う。


「それ、大げさ過ぎw」


 ルリは大智から離れて言う。

「大智、セイちゃんのことで話がある」


 一転、甘えた顔から真面目な顔に変わるルリ。


 大智は、ピンときた。


(バイト先が弟と同じ、ルリのことだ。

 成斗と接触してしまったんだろう)


「…分かった、あっちで話そう」


 レターパックを持った大智と、ルリは買い物袋を再び持ち、リビングに移動した。



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