2-9-3 電車で一緒に
2-9-3 電車で一緒に 耳より近く感じたい2
ファミレスを出て、駅に着く。
佐藤と梶は、寄るところがあると、駅で別れた。
音波の乗る電車のホームに、片山も一緒に行く。
音波は、ずっと片山の事を気にしている。
学校を出てからファミレスまで、ずっと無言だったかと思えば、音波の写真の話ではあるが、妙にテンションが高く、やけに話す。
普段であれば、佐藤と梶の予定など全く聞きもしないのに、夏休みは予定はあるか、何処へ行くか等聞いたり、また、8月の大学合同軽音祭の話など、いつもの倍は喋っていた。
ホームで電車を待つ間、片山はまた黙っている。
音波は、たまらず声をかける。
「片山くん、やっぱり変…」
言い終わらないうちに、片山が言葉を被せてくる。
「俺も乗ろうかな、電車」
「えっ?」
「音波の家、知っておきたいから…。
電車に乗って、音波んちに着くまでは、まだ一緒にいられるから…ダメ?」
そう言い、片山は音波の方に振り向く。
片山の口角は上がっているが、やはりどことなく淋しそうな目をしている。
(片山くん、何か思い詰めてる感じがする。
知りたいけど、今私が焦って聞き出してはいけないような気がする。
話してくれるまで、待った方がいいのかな?)
「うん、私の家、教えるね。
片山くんと一緒に電車に乗るの、片山くんの誕生日の日以来かも」
音波は、敢えて明るく振る舞う。
「ああ、そうだな」
電車がホームに入ってくる。
「来たよ、片山くん、さあ、乗ろう」
「ああ」
二人は電車に乗り込む。
ガターン、カタターン…
電車内は比較的空いている。
二人は空いている座席に座る。
「…去年、バイクを見に行った時に、こっちの電車に乗ったことがある」
「へえ、バイク…そうなんだ」
「うん、何駅か過ぎた辺りで…音波が歩いているのを見た。
それまで、こっち方面だって知らなかったんだ。
あの時は、もう音波と距離をとってたから…」
「片山くん…」
「そうだ、音波の夏休みの予定は?
家族や梶とかと、出かけたりしないの?
夏休みはバイトしないの?」
「うん、中條くんの手伝いとかもあって、探さなかったの。
8月までは、かかると思ってた。
まさか今日で終わりだって、何日か前まで知らなかったから。
千寿ちゃんは、事前に知ってたみたいだけど、実花と佐藤くんは、いつ知ったのかな?」
「あー、もしかしたら中條がこっそり動いていたのかもな。
俺、余裕がなくて、見に行けなかったから。
でも、音波のウエディングドレス姿が見れて嬉しかった。
今日、見れて…良かった」
「次は、△△…、」
「あ、片山くん、次で降りるよ」
「ああ、分かった」
二人は立ち上がり、降車ドアに向かう。
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駅を出て、音波と片山は、ゆっくりと歩く。
片山が音波に尋ねる。
「家まで、歩いてどのくらい?」
「20分くらいだよ」
「そう…」
少し沈黙した後、片山は語り始める。
「…音波、俺、夜の他にバイトを増やしたから、夏休みは殆んど時間取れないと思う。
会うのも、難しいと思う。
でも、軽音祭の日は会えると思う。
今回は当日以外はサポートは要らないけど、兄さんの頼みは断らないし、部活の3年生も出るから行く。
だから、その日は会おう」
「うん」
「新しいバイト先のシフト、7月はもう決まって、20日から始まる。
8月のシフトはまだ分からないけど、土日も入る。
平日は、…平日も忙しい」
「20日から、もう直ぐなんだね」
「ああ」
「何も予定が入らない日が作れて、音波の都合が良かったら、その日に写真をやろう」
「…うん、わかった。
片山くん、絶対に無理はしないでね。
疲れ過ぎたら、また熱出しちゃうかもしれないし、それに…」
音波は途中で口を閉じ、俯いてしまう。
(もし、新しい環境で、何かのキッカケで、片山くんの症状が出たら…)
片山は、音波の頭にポンと手を乗せる。
「大丈夫だよ、音波。
抱きつきなんて、早々、滅多に起きることじゃない。
それ以外は、今まで通り、上手くやる。
音波、心配しないで、大丈夫だから」
「うん、わかった」
音波は片山に尋ねる。
「新しいバイト、何やるの?」
「あー、カフェ、◯◯の近く」
「行ったら、会えるかな?」
「あー、俺はホールじゃなくて中の方だから、会えないと思うけど…」
「片山くん、料理一通り作れるって言ってたもんね。
どんな料理かな、食べてみたいな」
「場所が遠いから、無理して来なくていいよ」
「片山くんが働いてる場所、どんなお店なのか見てみたいな」
音波は、料理を作っている片山の姿を勝手に想像する。
そして、笑う。
「…、ふふっ」
「何で笑ってんの?」
「何でもない」
「あー、そう」
音波の家まで、あと半分の距離になる。
音波は、さっき片山が言ったことを思い出す。
「ねえ、片山くん、さっきバイク見に行ったって言ってたけど、バイク買ったの?」
「ああ、125ccのバイクを買った。
125だと、二人乗りできるから。
免許取って、もう一年経ったから、二人乗りが出来る。
音波を後ろに乗せて、一緒に何処か…あ!」
片山は立ち止まる。
音波も止まる。
「……、」
「どうしたの? 片山くん…、あっ」




