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「耳より近く感じたい1~3」 ~ボクの命がたとえ繋がってたとしても、キミと出逢う為に生かされたと信じる~  作者: 有澄 奏
season2 ~全て拒絶してたボクの空っぽな心が、キミが触れるたびに温もりで満たされる~
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2-9-1 ペナルティは終わり

2-9-1 ペナルティは終わり 耳より近く感じたい2


ーー終業式(7/18)


 終業式後、音波の高校のコスプレ部部室内では、中條がソワソワしていた。

 音波が衣装を着替えているからだ。


 だが、中條は多少腹も立っていた。

 何故なら、片山は一回も様子を見に来たことがないからである。


 体育祭後は、ほぼ毎日一緒に登校している片山たち。

 放課後に少しくらい時間をとって、様子を見に来てもいいだろうに…。


 今日で一学期も終わり、夏休みに入るので学校には来ない。

 中條も、今日衣装を持ち帰る。


 中條は音波に訊く。

「なあ円井、お前片山に日程ちゃんと伝えてるのか?

 あいつ、全然来ねえじゃねーか」


 音波は、部室の隅のカーテンで仕切られた更衣エリアから答える。

「全部伝えてるよ。

 放課後は、部活に出たあと一旦家に帰って、直ぐにバイトだから忙しいんだよ」


「…はーん、今日で最後なのにな。

 見られなくて残念な奴だ」


(今日も来ないなら、本当に円井のこと奪うぞ…)


 中條は三脚を立て、音波が着替え終わって出てきたら、直ぐに撮影出来るようにした。


 カーテンの中では、椅子に座っている音波に宮野がメイクをしている。

 もし今日がイベント本番であれば、もっと手を掛けたメイクをする。


 だが、メイク道具一式を学校に持ってくるわけにいかなかったので、事前に撮っていた音波の写真を見て、必用なメイク道具を用意した。


 同じく、カーテン内で見ていた梶が、シビレを切らす。

「千寿ちゃん、そろそろ…いい?」


 何がそろそろなのかというと、理由はこうだ。


 今日は土曜日なので、片山のバイトは無い。

 1ヶ月後の軽音祭に参加する軽音楽部の部活を利用して、佐藤がそれとなく片山を呼び出す。


 梶から連絡が来るまで時間を引き伸ばす。

 準備が整ったら、部室に連れて行き、音波のドレス姿を片山に見せること。


 この計画は、宮野も事前に知らされていた。


「ええ、もう大丈夫よ」

「うん!わかった!」

 梶は直ぐに、佐藤にメッセージを送った。


「片山を連れてきて!

 着替え終わったから」


佐藤

「りょーかい!

 10分待って」


 佐藤からは、秒で返事が届いた。


 部室内には、音波たち以外にコスプレ部の部員達は居ない。


 音波の心臓が速くなる。

 着る衣装はドレスとしか、片山には言っていない。


 恥ずかしくて見られたくない、普段では絶対にしない姿を見てほしい…

 相反する気持ちを抱きつつ、佐藤が片山を連れて来るのを待つ。


(片山くん、私の姿を見て…どう思うかな?

 どんな顔するんだろう?)


ガチャッ、

 部室のドアが開いた。


 

「実花ー、連れてきた」

 佐藤が片山の腕を掴んだ状態で入ってくる。


 梶だけカーテン内から出てきた。

 中條は、突然入ってきた佐藤たちに驚くが、直ぐに片山に声をかける。


「やっと来たか、待たせやがって。

 俺、気合い入れて作ったからな。

 今日で終わりだから、よーく拝んで目に焼き付けろ」


「え、何で今日が終わりなの…?」


 中條は片山に、「夏のイベントで着る衣装」と言っていたが、

 片山は中條が放った「学園祭までに円井を…」という言葉が強く残り、11月までかかると勘違いしていたのだ。


 自分の誕生日以降考えることが多すぎて、時間がとれて様子を見に行こうと思った日は、合わせが無い日で、タイミングも逃した。



 カーテン内から、宮野が言う。

「それじゃあ、開けるわよ」


シャーッ、

 ブーケを持ったウェディングドレス姿の音波が、更衣エリアから前に進む。


 全体の色は白に見えるシルバー。

 光の加減で布地がキラキラ光る。


 胸元から肩にかけて、ラメ入りの糸で一枚一枚細かく刺繍された羽根が輝く。


 ドレスの丈は前方が膝の少し上。

 同じ羽根が等間隔で弧を描きながら後ろの方が長くなるように縫われている。


 膝から上が隙間からチラチラと見え隠れする。


 ブーケの花は、ゲーム内で設定された、実際には存在しない花だろうか。

 薄紫色で花びらは7枚。

 雌しべは白で雄しべは赤い。


 頭の飾りは、花と羽根を束ねたものが、左右の耳の上になるように留めてある。


 宮野が音波に施したメイクは、キャラクターの顔をそのまま再現するのではなく、音波の顔が艶やかになるように、若干色を変えた。


 アイシャドウは紫系では無くピンク系に、口紅は深紅では無くピンクにして、ラメ入りのグロスを重ねた。


「あ!!…」

 音波の姿を見た片山は、息を飲む。


 中條は、宮野がメイクをした音波に感嘆する。

「これは凄いや、化けた」


 中條はパシャパシャと撮影する。

 佐藤も音波の変容ぶりに驚いている。


 片山の前に来た音波が言う。


「片山くん、ゴメンね。

 ドレスって言ったけど…コレなの、

 可笑しくないかな…」


 恥ずかしそうにしている。


「あ…、おと…は、…」

「うん」

「…」


 片山は、言葉が出てこない。


 音波のウエディングドレス姿が余りにも美しい。

 親戚の大人っぽい服を着た音波も見てはいるが、今回のは比べようも無いほど綺麗で、美しい。


(このまま氷で固めて、誰にも触れさせず、この姿を留めておきたい…)


「音波、…綺麗だ、凄く綺麗だ…」

 片山は、周りを気にせずに言う。


「あ、ありがとう///」

 音波の顔が真っ赤になる。


「音波…」

「何?」


 片山はゆっくりと音波に近付く。

 そして、ふんわりと包み込むように、抱きしめる。


「音波…俺、頑張る…頑張るから」

「うん…?」


 片山は既に頑張っている。

 更に何を頑張るのか?

 音波は不安になった。


 佐藤と梶は、片山たちを微笑ましく見る。


 中條は、思う。

(見せつけやがって…。

 もうペナルティは終わりだ…片山)



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有澄 奏 mimichika Project「耳より近く感じたい」小説補完用個人Webサイト  https://uzumi-sou.amebaownd.com/
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