1 急にパーティ勧誘されるようになる
昇格した翌日、俺はギルドに行った。
すると、
「なあ、俺たちのパーティに入らないか?」
声をかけてきたのは、Dランクのパーティ――つまり、俺より1ランク上の連中だ。
いきなり勧誘されるなんて初めてだった。
今まで『無能』『役立たず』『足手まとい』などと馬鹿にされてばかりだった俺が……。
とはいえ、いきなり言われても即断できる話じゃない。
さらに、
「ねえ、あたしたちのパーティに入らない?」
勧誘、二件目。
一件目のパーティに割りこむようにして、別のパーティがやって来た。
さらにさらに、
「よう。お前を俺たちのパーティに誘いに来たぞ」
……勧誘、三件目。
なんだなんだ、急にモテ始めたな、俺。
最底辺じゃなくなったとはいえ、下から二番目のEランク冒険者なんだけど、俺は……。
まあ、最近はダンジョンの下層までどんどん進んでいるし、その辺の実績込みでスカウトしているのかもしれない。
けど、俺は忘れてないからな。
お前たちがみんな、陰で俺のことを『無能』だの『底辺』だのと蔑んでいたことを。
それが、ちょっと結果を出し始めたとたんに手のひら返しは……さすがに通用しないんじゃないか?
人として――。
そう思って、俺はすべての勧誘を断ってしまった。
もちろん、ソロでやるよりも、どこかのパーティに入った方が危険は減るし、効率だってよくなる。
ただ、パーティに入るっていうのは『仲間』を得ることだ。
本当に信頼できる相手のことを『仲間』って呼ぶんだ。
とても信頼関係を築けそうにない相手とパーティを組んでも、未来はない――。
「まあ、焦ることはないか。現状、ソロでもなんとかやっていけてるし」
いつか、俺にも現れるだろうか。
心から信頼できる、真の仲間が――。
俺は彼らの勧誘をすべて断り、ギルドの窓口へと向かった。
やっぱり、以前に自分を馬鹿にしていたような連中と仲間になるのは難しいと判断したのだ。
で、窓口へ向かう最中、
「さ、次はどのアイテムを入手するか……」
俺はアイテム一覧を見ながら、思案していた。
手持ちの魔石は少しストックしてある。
もう少し貯めて強力なアイテムと交換するか。
たとえば、現状で一番強力な攻撃アイテム――『双竜牙剣』は、魔石Rが5個必要だ。
もう少し貯めないと手に入らない。
それとも消費量の少ないアイテムを大量に入手するか。
「うーん……悩みどころだな」
俺は思案を続けた。
まあ、焦ってアイテムを入手する必要もないか。
ダンジョン探索中、必要に応じて手に入れてもいいし、一覧に新たなアイテムが出てくることもあるから、そのタイミングで交換してもいい。
「よし、とりあえず現状は保留。魔石をどんどんストックしておこう」
その後、ギルドの窓口に行き、今日も『月光都市のダンジョン』の探索申請を出した。
さ、今日もがんばって探索するぞ。
そろそろ最下層まで到達する目途も立てておきたいところだ――。