3 一気に最下層まで
俺たちはさらに進む。
「ここまで来たら一気に攻略したいな」
「ですです、ゼノさん絶好調ですからねっ」
アリシアが狐耳をぴょこぴょこさせながら言った。
「Cランクダンジョンクリア、となれば、なかなかの達成報酬になるよ~」
マーヤが嬉しそうに飛び跳ねる。
「当然、割り勘ね」
ちゃっかりしてるな。
いや、異論はないけどさ。
「ゼノの活躍が大きいからな。あんたには多めに報酬を受け取ってもらいたい」
リーダーらしく、グラントがそう言った。
「むー……まあ、おおまけにまけて、ゼノの取り分をちょっぴり多くしてあげてもいいよ。あたしに感謝してね」
マーヤが渋々といった様子で提案する。
「ほら、ゼノ。あたしにお礼」
「ありがとう、マーヤ」
ん、なんで彼女に礼を言うんだ?
勢いでつい言っちゃったぞ。
あ、俺の取り分を多くしてくれるってことか。
「でも、別に取り分は割り勘でいいよ」
「やったー。ゼノ、太っ腹!」
マーヤが万歳して喜んだ。
やっぱりちゃっかりしている。
俺たちはさらに進んだ。
アバターのうち『竜戦士』はいったん異空間に引っこめて温存。
二体を展開しつつ、俺も魔剣や魔法弾などでフォロー。
さらにアリシアたちの援護も受け、破竹の快進撃を続けた。
「ここが最下層かな……?」
それほど苦労せずに最下層までたどり着く。
最初のころは十層まで行くのも苦労していたのが嘘のようだ。
やっぱり『竜戦士』のアバターの入手や、他にも全体的に今までより強力なアイテムを入手できるようになっているのが大きい。
俺自身が戦い慣れしてきたのもあるだろう。
とにかく、アイテムをどんどん仕入れて、魔石を稼いで、またアイテムを仕入れて――その繰り返しで、もっと強力なアイテムを入手できるようになっていけば、俺はさらに強くなる。
好循環ができていた。
「たぶんラスボスがいるはずだけど――」
周囲を見回す。
が、それらしい気配は感じられなかった。
「あたしが探ってみますね」
アリシアがぴょこんと尻尾を振りながら、前に出た。
感知能力なら彼女の方が優れている。
ぴょこぴょこ。
ぴょこぴょこ。
狐耳を動かしながら、アリシアは物音を探っているようだ。
うっ、耳の動き方がなんとも……もふもふをそそるっ!
いやいや、ラスボスを前にそんなこと考えてちゃダメだ。
いくらここまで楽勝ペースとはいえ、油断は禁物。
ぴょこぴょこ。
ぴょこぴょこ。
「ううううっ」
「もふもふの誘惑――」
隣でエルフ娘のカチュアがごくりと喉を鳴らしていた。
おお、分かるか。
やっぱり、もふもふしたいよな……!
「何してるんですか、二人とも?」
ふと気づくと、アリシアが俺とカチュアを見てキョトンと首をかしげていた。
しまった、もふもふに集中しすぎた。
「――来ました」
ふいに、アリシアが狐耳をぴょこんとさせた。
可愛いけど、その表情は引き締まっている。
「ラスボスか」
うおおおおんっ。
俺の声に応えるように、うなり声が鳴り響く。
そして――。
暗がりの向こうから巨大なシルエットが姿を現した。
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