2 VS『侵食者』2
ぎゅおおおおっ。
『侵食者』が吠えた。
ぼこっ、ぼこっ……。
その背中が大きく盛り上がり、肉体の一部が分裂して飛びだす。
それらは空中で変形して、六本の腕を持つ怪物と化した。
そう、ちょうど『侵食者』を二回りほど小さくしたような姿だ。
数は全部で十体。
「分身体を生み出したね」
ルーファスが告げる。
「アバター……?」
「ちょうど君と同じ戦法だ」
「あのアバターも強いのか」
「さすがに本体よりは弱いけど、そこそこ強いよ」
と、ルーファス。
「分かりやすく例えるなら、一般的なドラゴンくらいかな」
「そこそこどころか、めちゃくちゃ強いじゃないか!」
俺は頭を抱えた。
本体だけでもとんでもない強さだっていうのに、さらにアバターが十体も追加されたわけだ……。
――分身体は、やはり強かった。
本体とそこまで遜色がないくらいに。
分身体に手こずっているうちに、本体から竜巻が飛んできて、俺たちは何度も吹き飛ばされた。
「本体にはとても近づけない。まず分身体を倒しつつ、何とか攻撃のチャンスを探ってみる」
「うん、いいと思うよ。がんばって」
「……完璧に応援係だな、お前」
「だって、戦えないし」
しれっと告げるルーファス。
おおおおおおおんっ!
そのとき、『侵食者』本体からまばゆい光がほとばしった。
今までの竜巻攻撃ではなく、光と衝撃波が吹き荒れる。
「うわわわっ……!」
俺とルーファスは慌てて伏せた。
周囲に破壊エネルギーが荒れ狂う。
「あー、びっくりした……」
「伏せないと吹き飛ばされてたね……」
俺とルーファスは顔を見合わせる。
「まだ戦う気かい、あれと?」
ルーファスがたずねた。
「今までの攻防で分かっただろう。はっきり言って、並のモンスターなんて比べ物にならないくらい強いよ、あれ」
「……お前が戦えって言ったんだろ」
「そうだね。けど君に従う義理はないはず。当然、断る権利もある」
ルーファスが寂しげに笑った。
「実際、『侵食者』を見て逃げ出す人間は多いよ。たとえ勇者や英雄と呼ばれるような者でもね。僕はそういう人間を何人も見てきたし、無理もないと思う。責められない」
「ルーファス……?」
「『侵食者』はそれほどまでに強い。君には、実際にその目で見てもらって、それから戦うかどうかを判断してもらいたかった」
「俺の答えはもう言ったはずだ」
こみ上げる緊張と不安を押し殺し、俺は言い放った。
「戦うさ。今――戦えるのは俺だけだ」
村の人たちが襲われているのを黙って見過ごせないしな。
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