5 ルーファス1
「俺はパーティでダンジョンを探索している途中、ここに迷いこんだんだ。なんとか仲間と合流したい……」
「じゃあ、僕が出口まで案内するよ」
「出口?」
「ここはEXステージ。ダンジョン内にあるもう一つの迷宮さ」
微笑むルーファス。
「ダンジョン内のあちこちにここへ通じる『穴』があるんだ。一方通行だから、その『穴』からは元の場所に戻れない」
「なるほど……」
俺は落とし穴を上昇しようとして見えない電流にやられたことを思い出した。
「どうすれば戻れるんだ?」
「出口まで行けばいいのさ」
俺の問いにルーファスが答えた。
「出口を出れば、元のダンジョンに戻れる。『穴』の向こう側にね」
「要は――俺が落ちてきた場所に戻れる、ってことでいいのか?」
「そういうこと」
ルーファスがにっこりうなずいた。
こいつの言うことが本当だとしたら、俺がこれからやるべきことは出口にたどり着くことか。
「随分と詳しいんだな、お前」
俺はルーファスを見つめた。
「この場所を知ってるのか」
「ここは僕の庭みたいなものだよ」
ルーファスは満面の笑顔だった。
「間違えた道を進むと一生出られない」
「それは困る……」
「大丈夫。僕が案内するからね」
ルーファスがニコニコ笑顔で言った。
「妙に嬉しそうだな……」
「そりゃ嬉しいよ。ここに人間が来るなんて久しぶりだもの。退屈してたんだ」
と、ルーファス。
「それに、人と話せるのは楽しい。僕は、人間が好きだからね」
口ぶりからすると、こいつは人間外の存在――ということだろうか。
外見は人間そっくりだが、雰囲気があまりにも超然としている。
一体、何者なんだ――?
俺たちはしばらく通路を進んだ。
「なあ、ルーファスもどこかから迷って、ここに落ちてきたのか?」
「『落ちる』……か。うん、そうだね」
ルーファスはなぜか遠い目をした。
「僕も、ここに落ちてきたんだ」
「……随分と思わせぶりだな」
「ふふふ」
「なんか隠してないか、お前」
「ふふふ」
「明らかに隠してるよな?」
「まあね。簡単に全部話しちゃったら面白くないでしょ。おいおい話してあげるよ」
ルーファスは悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「まったく……」
どうにもつかみどころのない男だ。
ただ、不快感はなかった。
こいつと話していると、やけに心地がいい。
なんというか……リラックスできるのだ。
出会って間もないというのに、まるで十年来の友人と過ごしているような気分だった。
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