4 深淵で出会ったもの
「完全にはぐれた状態だよな――」
俺は周囲を見回した。
落とし穴の上部はたぶん百メートルくらい上だろう。
もしかしたら、もっと上かもしれない。
しかも上昇しようとしても、見えない力に阻まれてしまう。
とりあえず、元の場所に戻るための別ルートを探した方がよさそうだ。
俺は周囲を見回す。
前後に通路が伸びていて、それぞれがゆるやかなカーブを描いている。
その両サイドに、巨大な神像が等間隔で並んでいた。
まるで――荘厳な神殿のような雰囲気だ。
「進んでみるか……」
俺はとりあえず真っすぐ歩き出した。
と、
「誰だい?」
突然、前方から声が響いた。
清涼で爽やかな印象の声。
いわゆるイケボだ。
かつ、かつ、と足音とともにスラリとしたシルエットが近づいてくる。
「お前は……!?」
銀色の髪をした美しい少年だった。
紫色の瞳が俺を見つめている。
弓矢を背負い、狩人風の服を着ている。
「やあ、こんなところで人と出会うなんて驚きだよ。はは」
やたら人懐っこい笑顔で話しかけてくる。
「僕はルーファス。よろしくね」
冒険者……だろうか。
こんな場所を単なる通行人がうろついているわけもないし、何かの調査団って感じでもない。
ただ――こいつには何か異質な気配を感じるんだよな。
「ん、どうかしたかい?」
ルーファスが俺を見つめる。
興味深げに。
いかにも人畜無害で、爽やかな容貌。
だけど、俺の中の何かが警告している。
こいつには――危険な何かがある。
その危機察知能力は、俺が底辺冒険者だったころから磨いてきたもの。
平凡以下のステータスしか持たない俺が唯一、他者より勝っていると感じている本能だ。
「俺は――」
だけど、今ここで明確な敵意を示されているわけじゃない。
判断材料が少なすぎるし、こいつはこの場所を見知っている様子だから、まずは情報を得るためにも近づかないとな。
「ゼノ・フレイザー。冒険者だ」
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