17 帰還と旅立ち
俺とアリシアはギルドに戻ってきた。
さっそく窓口に行き、ダンジョン踏破の報告をする。
削り取ったダンジョンコアの欠片も提出した。
「『雷鳴都市のダンジョン』をクリアしたのですか!?」
受付嬢が驚いた顔をしていた。
「で、では、コアの確認と報酬の準備をいたします。少々お待ちください……」
あたふたと奥に引っ込んでいく。
同時に周囲がざわめいた。
「あいつ、この間来たばっかりの奴だよな……?」
「しかも、たった二人で……?」
俺に注がれる視線は、もはや『無能』扱いだったころのそれとはまったく違っていた。
と、受付嬢が戻ってきた。
ダンジョンコアが本物だという確認が取れたのだろう。
「はい、間違いございません。そして――ダンジョン踏破おめでとうございます」
にっこり笑顔で報酬の金貨を出してくれた。
「あ、それと――」
受付嬢の笑みが深まる。
「Eランク、Dランクと立て続けにダンジョンを攻略していますし、おそらく近日中に冒険者ランクが上がると思いますよ」
「冒険者ランクが――」
おお、次はC級になるのかな?
一気にB級――までは、さすがに行かないか。
ただ、昇格しそうな見込みなのは嬉しい。
「次はCランクダンジョンに挑もうと思う」
宿屋に戻ると、俺はさっそくアリシアに言った。
「一つずつランクアップ、ですね!」
「ああ。一番近いのは、北方山脈のふもとにある『氷結都市のダンジョン』だ。そこに行こうかな、って」
「異議なしです」
うなずくアリシア。
それから俺に近づいてきた。
「ん、なんだ?」
「出発の前に――」
アリシアが微笑みながら、さらに体を寄せる。
なんだなんだ……?
俺は戸惑いながらも、胸の鼓動が高まっていくのを感じた。
ふわり、と甘い匂いが漂ってくる。
彼女の、香りだ。
「ア、アリシア……?」
ここまで接近されると、なんだかドキドキするぞ……?
目の前にはアリシアの可憐な顔があった。
ぷるんと光沢のある唇は、どこか俺を誘っているかのように軽く開かれ――。
「もふもふ、していいですよ?」
「へっ?」
「もふもふです。その……Dランクダンジョンを攻略したお祝いに」
「あ、ああ、もふもふか? そうだよな、もふもふだよな……?」
べ、別にやらしいこととか、俺は何も考えてないぞ!
本当だからな!
「どうかしました、ゼノさん?」
キョトンとしているアリシアはどこまでも無垢な感じで、俺は邪まな考えがよぎった自分が恥ずかしくなった。
なんというか……罪悪感がある。
「も、もふもふだ! 思いっきりもふらせてもらう!」
「です。どうぞっ」
アリシアが軽く頭を近づける。
ぴょこん、と狐耳が可愛く揺れた。
「じゃあ、遠慮なく――」
もふもふ。
もふもふ。
もふもふもふもふぅっ!
俺は思う存分アリシアのもふもふを堪能した。
翌日、俺たちはさっそく出立した。
行先は、北方山脈のふもとにある『氷結都市』。
そこにあるCランクダンジョン攻略を目指して。
いや、さらに先にはB、A、そしてSランク――最難度のダンジョン攻略をいずれ目指して。
俺たちの旅は、まだまだ続く。
これにて第一部完結です! ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
第二部は6月18日(金)12時から投稿開始予定です。
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