1 新たな町へ
「ここが『雷鳴都市』ジードシティか……」
前の町――『月光都市』エルドシティよりもはるかに規模が大きい。
『町』というより、完全に『都市』である。
「都会ですねー」
狐耳をふよふよと動かし、周囲を見回すアリシア。
「あたし、こんなに人がたくさんいる町は初めて見ました」
「俺も。なんか落ち着かないな……」
「ですね……」
俺たちは顔を見合わせた。
「とりあえずギルドに行こう」
そこなら気分を落ち着けられそうだ。
ジードシティ冒険者ギルド。
大きな都市のギルドだけあって、前の町のギルドとは規模がまったく違う。
行き来する冒険者の中には、きらびやかな鎧をまとっていたり、豪華そうなローブを着ていたり……明らかに高ランク冒険者と思われる者が何人もいた。
「まずダンジョン探索の許可申請を出そう」
俺はアリシアに言った。
――ダンジョンの由来は何か。
太古の昔、聖神ゼルクが世界中に光を放ち、その光が落ちた跡がダンジョンになった、という伝説が残っている。
半分おとぎ話みたいなものだけど、考古学者たちの研究によると、真実である可能性が高いそうだ。
「神の領域……か」
そういえば『月光都市のダンジョン』最下層で出会ったラスボス『炎の武人』がそんなことを言っていたな。
ダンジョンっていうのは、神の聖域なんだろうか。
だとすれば、ダンジョン探索を生業にしている俺たち冒険者はなんなんだろう。
神の領域を侵す不届きもの――。
「どうしたんですか、ゼノさん?」
アリシアが俺を見ていた。
「険しい顔をしてましたよ」
「ああ、ちょっと考え事を……」
言いながら、俺は小さく息を吐いた。
考えてたって答えが出るわけじゃないし、そもそも俺は考古学者じゃない、冒険者だ。
ダンジョンの由来や成り立ちを調べるのは彼らに任せて、俺は今まで通りに探索するだけだ。
俺たちは申請窓口に行き、ここにある『雷鳴都市のダンジョン』の探索許可申請書を出した。
このダンジョンのランクはD。
『月光都市のダンジョン』はEランクだから、それより難度が高いダンジョンってことになる。
ダンジョンランクは最高位のSから最下位のEまで六段階に分かれていて、難度としては下から二番目。
とはいえ、最下位のEランクだって中ボスやラスボス相手にはかなり苦戦したし、下から二番目といってもまったく油断はできない。
実際、DやEランクのダンジョンでも命を落とす冒険者はいくらでもいる。
気持ちを引き締めてかからないとな――。





