9 ダンジョン制覇!
2章終了まであと1話! このあと20時に更新予定です!
「やった、ついにEランクダンジョンのラスボスを倒したぞ!」
「やりましたねー!」
俺とアリシアはパンとハイタッチした。
正直、ぎりぎりの戦いだった。
俺一人では勝てなかっただろう。
「アリシアが一緒に戦ってくれたおかげだ。ありがとう」
「そんな! あたしの方こそ、いっぱいお礼を言いたいです!」
アリシアが両手を振り、何度もぺこぺこと頭を下げた。
「ありがとうございます、ゼノさん!」
『炎の武人』撃破によって手に入れた魔石はR10個である。
大盤振る舞いだ。
今までの道中と同じく、俺とアリシアで半分ずつ分け合った。
「やっぱり、あたし……半分はもらいすぎのような」
「何言ってるんだ。パーティなんだから、半分ずつでいいだろ」
「でも、ゼノさんの方が活躍してますし……」
「活躍の度合いとか考えてたらキリがないし、どっちが活躍したかっていうのを正確に判定するのも難しいだろ。単純に等分でいいんじゃないかな」
俺はアリシアを諭した。
ちなみにこの問答も、もう十回以上はやっている。
アリシアからすると、どうしても気が引けるらしいのだ。
「……分かりました。とりあえず今回は均等に。ありがとうございます、ゼノさん」
「二人で勝ち取ったんだから、礼なんていいよ。仲間だろ?」
「仲間……そうですね!」
アリシアの表情が明るくなる。
――その後、俺たちは最下層の一番奥の部屋までやって来た。
『ダンジョンコアの間』と書かれてある。
ダンジョン最下層には『ダンジョンコア』というものがある。
それに触れると、最下層到達者の名前がコアに記録されるそうだ。
冒険者の身分証ともいうべきギルドカードにも同じように記録が残るから、それがダンジョン制覇の証拠になる。
俺たちはこのダンジョンのコアに触れ、記録を終えると、また地上に向かって歩き出した。
さあ、ギルドに戻ろう――。
「あいつら、たった二人でEランクダンジョンをクリアしただと……?」
「まさか、嘘だろ……」
「いや、どうも本当らしい。ダンジョンボスの素材を換金していたぞ」
などと、背後から冒険者たちのヒソヒソ話が聞こえてくる。
奴らの、俺たちを見る目は完全に変わっていた。
今や俺とアリシアは単なる底辺パーティじゃない。
まあ、冒険者ランクとしては下の方だけど、『月光都市のダンジョン』制覇者という称号を得たんだ。
もっと上のランクの冒険者でも、このダンジョンを制覇してない者は多い。
彼らから、俺たちに一目置いているような雰囲気が漂ってくる。
ようやく『無能』と馬鹿にされない日々が本格的に訪れたのかもしれないな――。





