6 最下層
「逃げるぞ、アリシア!」
「は、はいぃっ」
俺たちは一目散に逃げだした。
スライム系は剣などの武器が効きにくい。
倒すなら、火炎系の魔法かスキル、あるいは同じ属性攻撃ができるアイテムや魔法武具――などが必要になる。
俺の手持ちには、どれもない。
まあ、アイテムに関しては一覧を探せばあるかもしれないが……今、ゆっくり探している暇はないからな。
それにスライムを攻撃できるアイテムがあったとしても、手持ちの魔石で入手できるかどうかも分からない。
まずは――逃げる。
それが最善の手だろう。
ごうっ……!
突然、俺の視界が赤く染まった。
同時に、背後で悲鳴が聞こえる。
ジャイアントスライムの――悲鳴。
「えっ……!?」
振り返ると、ジャイアントスライムが燃えていた。
「な、なんだ……!?」
俺は戦慄とともに前方に目を凝らした。
ジャイアントスライムを炎で倒したモンスターが、そこにいるはずだ。
そして、おそらくそいつは――。
「ゼノさん……」
「油断するなよ、アリシア」
俺は彼女に言った。
「奴がおそらく――このダンジョンのラスボスだ」
ずしん、ずし……ん。
地響きを立てて、何かが近づいてくる。
「ゼノ……さん……」
アリシアが不安げに俺の手を握る。
柔らかな手だ。
俺はそっとその手を握り返した。
「大丈夫だ、アリシア」
「……はい」
俺の一言に小さくうなずくアリシア。
やがて緩やかにカーブした通路の向こうから、そいつが現れた。
「これが――」
俺は戦慄とともに奴を見上げた。
全身に鎧をまとった武人像である。
その身長はおおよそ七メートルといったところか。
鎧の各所からは炎が吹き上がっていた。
さっきジャイアントスライムを焼き殺したのも、この炎なんだろう。





