5 第二十四層
『魔導加速装置』のクールタイムが終わるのを待って、俺たちは二十四層へと降り立った。
「次が最下層か……」
「ですね……」
俺たちは慎重に周囲を見回しながら進む。
どうやら近くにモンスターの気配はないようだ。
前方には下に続く階段が見える。
「お、この階層はバトルなしで通過できそうだぞ」
俺はアリシアに言った。
「じゃあ、モンスターが来ないうちに行っちゃいますか」
「だな」
俺たちは階段へと向かう。
と、そのときだった。
ごごごご……ごごご……っ!
足下がいきなり振動する。
「な、なんだ……!?」
次の瞬間、俺たちが立っている場所が崩れ出した。
「これは――」
罠か、それともダンジョンの床が老朽化していたのか。
「う、うわぁぁぁっ……!?」
床が崩落していく――。
俺たちは下の階層へと落ちていった。
「いてててて……」
「うう、腰打っちゃいました……」
「大丈夫か、アリシア」
「はい、なんとか……ところで、これ、なんでしょう?」
「ぷよぷよしてるな……」
そう、俺とアリシアが着地した場所はぶよぶよとした何かだった。
これがクッションになり、落下のダメージはほとんどない。
「なんだ、これ……?」
見回し、やがてそれの正体に気づいた。
全長十メートルはあろうかという青いスライムだった。
スライムの中でも随一のサイズを誇る『ジャイアントスライム』だろう。
俺たちはモンスターの上に着地していたわけだ。
「うわぁぁぁぁっ……!」
俺とアリシアは悲鳴を上げながら飛び降りた。
「あー、びっくりした」
「ぶよぶよして気持ち悪かったです」
「けど、あいつがクッションになってくれて、俺たちは助かったみたいだな」
「なるほど……ありがとうございました」
「礼を言うぞ、スライム」
俺たちはいちおうスライムに向かって一礼する。
とはいえ、モンスターといつまでも一緒にいるわけにはいかない。
今はおとなしいけど、いきなり襲ってこないとも限らないからな。
「じゃあ、そういうことで」
「失礼します」
俺たちはジャイアントスライムに別れを告げた。
足早にその場を離れる。
よし、戦闘にはならなかったぞ――安堵しかけた瞬間、
うおおおおおおおおおおおおおおおんっ。
突然、背後から吠え声が聞こえた。
「あ、あれ……?」
「ま、まあ、そうですよね……」
俺とアリシアは顔を見合わせた。
振り向かなくても分かる。
ジャイアントスライムが俺たちを見逃すはずがない。
確か奴の捕食対象は――人間だ。





