4 暫定パーティ
アリシアは三時間ほどで光のロープが解けるように設定した。
この辺りにはモンスターは寄ってこないようだが、彼女は念のために、と結界も作った。
この結界があれば、モンスターはまず近づけないという。
後は、三時間経ってロープが解除されれば、脱出するなり、探索を続けるなり、好きにすればいいという感じだ。
俺たちは彼らの元を離れた。
「助けていただき、ありがとうございました」
アリシアが頭を下げた。
「いや、俺はあいつらの非道を見過ごせなかっただけだから……」
「あたし一人では、あいつらの慰み者にされていたかもしれません。本当に感謝しかありません」
「とりあえず、アリシアが自由になってよかったよ」
俺は彼女に微笑んだ。
「けど、あんなに強い魔法が使えるなら、あいつらの言いなりになる必要はなかったんじゃないか?」
「あたしは……どうしてもこのダンジョンの中にあるという『スキル進化の間』に行きたいんです。彼らはそこへの行き方を知っているので、今まで彼らのために戦ってきました……」
アリシアが説明する。
「『スキル進化の間』?」
「そこに行くと、自分のユニークスキルを進化させられるんです。世界中のダンジョンを探しても、かなり希少な場所で……ただ、行き方がなかなか見つけられなくて、彼らだけが頼りだったんです」
と、アリシア。
「ですが、さすがにこれ以上、彼らのために戦うことはできません。さっきも言ったように、あたしが獣人だとバレてしまいましたしね」
「なるほど、アリシアの目的はそれか」
俺はうなった。
「っていうか、『スキル進化の間』なら俺が行き方を知ってるぞ」
「えっ」
「そもそも、俺自身のスキルがそこで進化したものだからな」
「な、なんだってーっ!?」
アリシアは心底驚いたようだった。
「じゃあ、帰り道に行き方を教えるよ。ただ、少しだけ待ってもらってもいいかな?」
俺はアリシアに言った。
「もちろん、教えていただけるなら、あたしはいくらでも待ちます」
一礼するアリシア。
「ゼノさんはこれからどうするんですか?」
「俺はもう少し下の階層まで行ってみる」
「では、あたしもお供します」
「えっ」
「助けていただいたお礼に、少しでもお手伝いしたいです」
アリシアが言った。
尻尾をふるふると振っている。
うっ、可愛いぞ……。
そのモフモフ具合に思わず視線を引きつけられる。
見ているだけで癒されるようだ。
「どうでしょうか? 足手まといになるようなら、そこで置いていってくださってかまいません」
「置いていったりしないよ。でも、そうだな……俺はソロだし、協力してもらえるのは助かる」
暫定パーティ、結成だ。