3 決着と出会い
「これなら――」
俺は即死魔法が込められた矢を放った。
リトルミノタウロスの腕に命中する。
ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!
絶叫。
そしてリトルミノタウロスの巨体が倒れた。
よし、上手く即死魔法が発動したようだ。
もし発動しなかったら、さっき倒した方のリトルミノタウロスから回収した魔石で、もう一度アイテムを交換して、即死魔法の矢のおかわりをするつもりだったけど――。
うまく発動してよかった。
「ふう、死ぬかと思いました……」
突然、声が聞こえた。
「えっ?」
振り返ると、狐が俺を見ている。
いや――。
その姿が白煙に包まれたかと思うと、あっという間に十代半ばくらいの少女の姿に変化する。
長い黄金の髪に赤い瞳。
そして――狐耳と尻尾を備えた、絶世の美少女。
「き、君は……」
俺は驚いた。
狐型のモンスターかと思っていたら、獣人だったらしい。
「あ、気が抜けて戦闘モードが解けてしまいました……」
と、狐少女。
「あたし、アリシア・ライゼルといいます。助けていただきありがとうございました」
ぺこりと頭を下げる彼女――アリシア。
狐耳や尻尾がぴょこぴょこと揺れていた。
可愛い。
見ているだけで癒されるようだ。
俺はほっこりしてしまった。
と、
「お前……獣人だったのか!?」
パーティの連中が驚いた顔をしていた。
仲間のくせに、どうやらアリシアが獣人だったことさえ知らなかったらしい。
「おい、そいつは俺たちの仲間だ。返してもらおうか」
いつの間にか、さっきのメンバーが戻ってきていた。
彼女をオトリにして逃げ出そうとしたくせに、リトルミノタウロスが倒れたことを知ったとたん、これか。
なんて連中だ……。
「仲間?」
俺は奴らをにらんだ。
アリシアの前に立つ。
「本当にそう思ってるのか?」
俺は気づいてしまった。
こいつらの目に濁った欲望の色が灯っていることを。
アリシアを見る目には、欲情がこもっていた。
女だと気づいて、『そういう扱い』をするつもりなんだろうか。
だとすれば、見過ごせない。
「あ? 何様だ、お前」
「彼女に聞いてみるべきじゃないか、って言ってるんだ」
俺は退かない。
「あたしは――」
彼女が俺を見て、それから奴らを見た。
「あの人たちのところには、戻れません」
「何!?」
奴らが叫んだ。
「女だとバレないように過ごしていたので、今までそういう目に遭わずに済みましたが……きっとこれからは違います」
「――だな」
俺は奴らに向き直った。
「聞いた通りだ。彼女はあんたたちの元に戻ることを望んでいない。だから渡せない」
「お前、ふざけるなよ」
彼らがいっせいに剣を抜いた。
――まだぎりぎり『魔導加速装置』の効果時間は残っている。
「残り二分……か」
速攻でカタをつけてやる!
俺は一気に奴らとの間合いを詰めた。
足払いをかけて、次々に転ばせる。
「えっ、な、なんだ……!?」
「は、速すぎる……!」
よし、今のうちに一人一人拘束して――。
「離れてください!」
アリシアの声が聞こえた。
「えっ?」
怪訝に思いつつも、彼女の指示通りにその場から離れる。
直後、
「【戒めの輪】!」
アリシアの尻尾がゆらめき、そこから紫色の輝きが放たれた。
輝きは光のロープとなり、彼ら全員に巻きつく。
「くっ、これは――」
「獣人形態になると使える魔法です。物理的な力では外せませんよ」
と、アリシア。
この子、魔法を使えるのか……!?