2 第二十三層
俺はダンジョンの下層へと降りて行った。
アイテムの力もあり、二十三階層までやって来た。
と、
ぐるるるおおおおおおおおおおおっ!
雄たけびが聞こえてきた。
「あれは――」
十二層でも戦ったリトルミノタウロスだ。
このダンジョンの『中ボス』でCランクの強敵モンスター。
しかもそれが二体である。
五人組のパーティがそれに立ち向かっていた。
「くっ、こいつら強い――」
「陣形を崩すな! まずどちらか一体を集中攻撃で仕留めるんだ!」
「分かってるけど、こいつら隙がない――」
パーティはかなり苦戦しているようだった。
きゃう、きゃうんっ。
狐型のモンスターが中ボスの攻撃を引きつけている。
時折、尻尾から魔法を放ったりしているが、中ボスには効果が薄いようだ。
「駄目だ、勝てない! 撤退するぞ!」
とうとう諦めたようだった。
「そのまま敵を引きつけておけよ、ライゼル!」
「最悪、死んでもいいからな!」
「その間に俺たちは逃げる!」
ひどい言い草だった。
おそらく、あの狐は彼らの仲間か使い魔だろうに……狐が最前列にいる間に、残りのメンバーは一目散に逃げだした。
きゃうんっ。
と、リトルミノタウロスの攻撃が狐を吹っ飛ばした。
地面に叩きつけられ、弱々しく立ち上がろうとする狐。
そこへもう一体が斧を手に近づいてくる。
「危ない!」
俺はとっさに前に飛び出した。
――『魔導加速装置』起動。
両足に力がみなぎる。
俺は普段の五倍にアップした速力で一気に駆け抜けた。
狐を両手で抱え、その場から超速で離脱する。
「大丈夫だったか?」
狐に声をかけた。
きゅうん……。
弱々しい鳴き声とともに、狐が俺にすり寄る。
「大丈夫だ。俺が守ってやるからな」
狐にそう声をかけ、俺はリトルミノタウロス二体をにらんだ。
「――まずは魔法弾を試すか」
今までに稼いだ魔石で手持ちの魔法弾が二発ある。
即死魔法が込められた矢も持っているが、あれはCランクモンスターに発動する確率が70%……必殺じゃない。
まずは確実にダメージを与え、あわよくば倒せそうな魔法弾から試してみよう。
今の俺なら、奴らの攻撃をかいくぐって魔法弾を命中させることができるはずだ――。
「いくぞ」
俺はふたたび地面を蹴った。
五倍の速度で走りつつ、フェイントを何重にもかけて二体のリトルミノタウロスを幻惑する。
そして、隙を突いて奴らの背後に回りこんだ。
二発の魔法弾を近距離から放り投げる。
すぐに離脱――直後に、二体の背中に命中した魔法弾が、それぞれ大爆発を起こした。
「どうだ――」
爆炎が晴れていくと、地面にコロンと魔石が三つ転がった。
魔石R三つ――つまり、リトルミノタウロスを一体倒したわけだ。
「……ってことは、もう一体は生きてるのか」
まだ残っている爆炎の向こうを見据えた。