表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

少女格闘伝説シリーズ

あの日の約束

作者: 坂崎文明

 私の夢はアイドルになることだった。

 そして、やっとここまで来れた。

 今、あの人と同じステージに立っている。


 あの人に出会ったのは、とある人狼ゲーム映画の主題歌を歌うアイドルオーディションだった。

 あの人、彼女はその頃から誰よりも輝いていて、眩しい存在だった。

 ショートカットの黒髪、磁器で出来てるような透き通った肌、薄紅い唇がとても可愛らしい。 

 小柄で華奢な身体であるが、安定したダンスパフォーマンスを披露し、歌も高音が良く伸びて、おそらく、彼女がこのオーディションを射止めると、そこにいる皆が感じていただろう。


 私は待ち合い室で、たまたま彼女の隣の席になり、思い切って話しかけてみた。


「……あの、秋月玲奈さんですよね?」


 緊張でどきどきしながら言葉を絞りだした。


「あ、はい」


 かわいい小さな顔が自分を見返してきて、ちょっと感動した。


「歌上手いですね。ダンスも凄かった」


「そうですか。ありがとう」  


 はにかむような笑顔が可愛らしかった印象が残っている。 



 彼女はもちろん、一番にそのオーディションに受かり、私は当然のように落ちた。

 あまりにも何もかもが違って見えた。

 彼女は特別なオーラに包まれていた。


 その時、私は決心した。

 いつか自分もアイドルになって、あの人と共演できるようになりたいと。

 そんな夢を私は抱いて、心の中で自分と約束した。 



     †



 それから半年後に、私も今のグループのオーディションに受かり、あの人と一緒のアイドルの道を歩みはじめた。

 

 新型コロナなどの影響で、なかなかデビューできない日々を一年あまり送ったが、今、ネットライブで実質的なデビューを果たそうとしている。


 そのネットライブには、憧れのあの人も一緒に出演する。  

 すでに彼女はソロの人気歌手になっていた。

 永年、数年越しの夢が叶い、私はあの日の自分との約束をついに果たした。


「あの、秋月玲奈さんですよね?」


 私はあの時と同じように話しかけた。


「ああ、彼方カノンさんですね。今日はよろしくお願いします」


 あの人はあの時と同じ笑顔で、しっかりと私の名前を呼んでくれた。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ