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第37章 帰宅

心琴の両親やほかの被害者を警察に引き渡す連絡をした後、一向は三上の車で帰宅中だ。

この状況を見つけられると流石に大ごとになりかねないのでそそくさと退散した。

ボコボコになった車だが、なんとか動いてくれた。

三上の運転する車は肉の油でべとべとだ。

「お・・・お腹すいたぜぇ・・・。」

死神は今朝からごはんを食べていない。

肉のにおいが充満する車に揺られてお腹を鳴らした。

「帰ったら皆さんの分のごはんを用意しております。」

三上が笑顔で死神に話しかける。

「本当かぁ!!!やったぜ!!」

死神はガッツポーズをした。

「それにしても・・・足が引きちぎられたときはどうしようかと思った・・。」

紗理奈の足に変わってしまった自分の足をさすりながら鷲一が言う。

「いや、この状況も十分『どうしよう』だろ・・・。これでいつだって紗理奈達にお前の場所がバレるって事らしいじゃないか・・・。」

海馬はため息交じりにそう言った。

「でも、足がないよりはマシだ。」

「いや・・・まぁそうかもしれないが・・・能天気だなぁ。」

海馬はその発言に少し呆れた。

「まず、病院へ行き、皆さんの怪我の手当てをしてもらいますね。」

そう言う三上もボロボロだ。

「三上だって結構怪我したんじゃねぇか?」

鷲一が心配するが三上は首を横に振る。

「いえ、大丈夫です。ほとんど、役に立てなかったし、皆さんを運ぶくらいはしないと・・・。」

三上は今回の戦いで人狼に殆どやられっぱなしだった事を悔やんでいた。

「確かに、アイツ強かったからなぁ。俺様ももっと鍛えないとなぁ。」

死神も自分の弱さに嫌気がさしていた。

「そうだ!三上、てめぇと戦闘訓練してぇ!今度ガチで相手してくれよ!」

死神は一度手合わせした事のある三上に笑いかける。

前回は三上が死神を上回った。

「わ、私とですか?もちろん、望むところです!共に高め合いましょう!」

三上は思っても見ない訓練相手ができて、少し嬉しそうだった。

「そうだ。三上?パラサイトを捕まえたんだ。きちんと瓶に捕まえたぜ。」

鷲一が瓶を鞄から取り出す。

そこには気味の悪い緑色の生き物がうごめいている。

「本当ですか!?では、それを預かりますね!」

三上は声を弾ませてそう言った。

「三上?このパラサイトをどうするつもりなんだい??」

海馬は驚いて瓶を見る。

海馬は三上がこれを悪用する可能性を捨てきれない。

「このパラサイトを研究して・・・。」

「研究して?」

「Dの体からもパラサイトを排除する方法を探りたいと思っています。」

「!!」

その一言に海馬は目を見開いた。

以前、エリを身を挺して守ってくれた時もどうしても三上を疑ってしまった。

そんな自分に海馬は反省する。

「そりゃ、助かるぜぇ!」

死神はそれを聞いて嬉しそうにしている。

「そうか・・・ありがとうね、三上。」

海馬はそっと三上にお礼を言うのだった。


◇◇


海馬の両親が経営する病院に一行は到着した。

車が病院に到着するや否や海馬は車を飛び出し、真っ先に朱夏の元へ急ぐ。

病室に入るとそこには左手に大きなギブスをはめ、包帯やガーゼでいたる所を処置されつくした朱夏の姿があった。

「あ!!!海馬君!!無事だったのね!!」

意識ははっきりとしている朱夏は海馬をみて安堵の表情を浮かべた。

「朱夏・・・ごめん!!!本当にごめんなさい!!!」

体中傷だらけの朱夏を見て、海馬は頭を深々と下げた。

左手の傷以外はすべて海馬による怪我だ。

「ふふっ。海馬君。生きててくれて・・・本当に良かった。」

朱夏は海馬のボロボロな姿を見ると海馬の手を取ってそう言った。

「・・・紗理奈の事・・・言えなくて・・・。本当に・・・ごめん・・・。紗理奈のことを言ったら、また朱夏と喧嘩になっちゃうんじゃないかって思うとどうしても言えなくて・・・。」

海馬は静かにそう謝った。

どうしても勇気が出ずに夢の話を後回しにしてしまった。

その結果、周りを危険な目に合わせた。

その事をどうしても謝りたくてここへ来た。

「もう・・・。本当ですよ!もう少し、私の事も信じてください。私も、海馬君をもっと信じますから。ね?」

海馬は再び、朱夏と喧嘩になってしまう事を一番恐れていた。

けれども、もう、昔の自分たちとは違う。

「・・・うん。ごめん!僕・・・朱夏と・・・」

そう言いかけた時、後ろからノックの音が聞こえた。

「海馬!!この馬鹿息子!!」

海馬のお母さんだった。

怪我をしたと聞いて待っていたのに、真っ先に朱夏の所へ行くものだからお母さんはカンカンだ。

「こんな怪我して!!さっさと処置室に来なさい!!」

お母さんはそう言うと海馬の耳をひっぱった。

「あ・・・!!!え!!ちょっと!イデデ!優しく!!ちょっと!優しくしてくれ!!」

「ふふっ!!海馬君。手当、頑張ってくださいね!」

朱夏はその様子に手をやさしく振った。

病室を出ようとした時、海馬は朱夏にこう言った。

「あのさ!!明日!!お見舞い行くから!!!!」

「ふふっ!ありがとうございます。海馬君。」

海馬は引きずられるように朱夏の病室から出て行った。



「な・・・なんだねこれは・・・。」

海馬のお父さんは鷲一の足を見てぎょっとしている。

「えっと・・・なんか・・・足を持って行かれて・・・敵が切り口に指を刺したら、足が生えました。」

「・・・・。」

普通は信じてもらえない話だろう。

けれども、組織の事を裏で調べている海馬のお父さんはその異常さをこの足からひしひしと感じた。

そこに海馬と海馬のお母さんがやってくる。

「よぉ、海馬。って、あれ?その恰好・・・」

「・・・体に数カ所穴が開いてるからね。念のため今日は泊まってけってさ。」

手当の終わった海馬は病院服に着替えていた。

文句がありそうな顔で海馬はそう言う。

「あ、鷲一。ジャケットありがとな。」

借りていたジャケットを返す。

「おう。」

鷲一はそれを受け取ると軽く羽織った。

「おい、これを見てくれ。」

「まぁ・・・なんですかコレは・・・。」

射手矢夫妻は鷲一の足を改めてじろじろと見た。

「鷲一の足がもぎ取られたときは本気で焦ったよ。」

海馬も足を見てそう言う。

「これ以上、子供たちが巻き込まれない方法を何とか考えねばならないな・・・。」

お父さんは真剣な声でそう言う。

海馬のお母さんもそれに賛同するようにうなずいた。

「ええ。今回の事も、この子たちが居なければもっと被害が出ていました。」

「組織の本当の目的が解らぬ以上・・・どう対処していいものか・・・。」

射手矢夫妻が悩んでいると鷲一はキョロキョロとしてからお父さんに尋ねる。

「あの・・・心琴はどこっすか?」

「心琴さんは大きな怪我がなかったから待合室にいると思う。手当は終わったので行っても大丈夫だよ。」

海馬のお父さんがそう言うのを聞いて鷲一は立ち上がった。

「あざっす!」

鷲一はお礼を言って病室を後にした。



鷲一が病室から出て待合室に行くと、そこには心琴とポム助が座っていた。

「心琴!!!」

「鷲一!!!」

二人はお互いを確認するなり抱きしめあった。

「良かった!!!本気で良かった!!!」

鷲一は心琴の頬にそのままキスをした。

「ひゃっ!!」

突然のキスに心琴は顔を赤らめる。

「鷲一!!えへへ!!」

それでも、心琴は嬉しそうだ。

「心琴が無事で、俺本気で嬉しい。」

「私も!もう、二度と会えないと思った!!」

心琴は涙ぐんでいる。

そんな心琴を鷲一は離そうとしない。

そのままぎゅっと抱きしめた。

「そうだ!!・・・その・・・俺、心琴にプレゼントしたいものがあって。」

「え!?私に!?」

鷲一からプレゼントは貰ったことがない。

心琴はその響きに嬉しそうに反応した。

「明日、心琴の家に持って行っても・・・いいか?ちょっと・・・大きいんだけど・・・。」

もごもごと鷲一は心琴に言った。

「大きいの!?なんだろう!とっても楽しみ!!!」

心琴は屈託のない笑顔で鷲一を見た。

「あー・・・なんだろう。あげる為に用意したのに、いざあげるとなると緊張するな。」

「???」

鷲一はそんな事を言うが、心琴は何のことかわからなかった。

「とにかく!明日、心琴の家に行くから!」

「うん!わかった!」

二人は良い笑顔で笑いあうのだった。

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