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第35章 過去との決別

キングと海馬と三上はいよいよ、鷲一をめぐっての決戦を繰り広げようとしていた。

「まぁ、良い。断られるのは百も承知!!力尽くで行くとしよう・・・。」

キングは鋭い爪を構えてそう言った。

「させねぇっての!」

「私たちが相手です!!」

鷲一とキングの間には海馬と三上がいる。


「キング!!・・・ごめん。車に逃げられたっしょ・・・。」


その時、車の行った方向から紗理奈が走って戻ってきた。

キングは紗理奈の体を見て驚いた声を上げる。

「紗理奈!?それは・・・!!」

紗理奈が最終奥義を使ったのを感じ、キングは紗理奈を眉をひそめて見た。

キングがよそ見をしたのを、海馬は見逃さない。

「お前の相手は、僕だああ!!」

すかさず海馬が狼に攻撃を仕掛けた。

鋭い牙で肩のあたりに噛みつくが、キングはものともしない。

首根っこを掴んで投げ飛ばされてしまった。

海馬は体を翻して足から着地する。

「こいつ・・・めちゃくちゃ固いんだけど!!」

海馬に噛まれた傷口からはちょっとだけ血が出ているたげだ。

全力で噛み付いて、ちょっとした怪我しか負わせることが出来ていない。

続けざまに三上がナイフを構えてキングの後ろから攻撃を試みる。

しかし、その奇襲もあっけなく振り払われ、三上はキングに腕を掴まれた。

強い握力により腕はミシミシという音を立て、三上はナイフを手から落とした。

「ぐ・・・!!離せ!!!クソ!!」

睨みつけて悪態をつくとキングはにやりと笑い、三上をぶん投げた。

「キャァ!!!」

三上は思わず女性らしい声を上げて叫びながら地面を転がった。

「三上!!」

鷲一は三上の元へ急いで駆け寄る。

「つ・・・強い・・・。今まで相手をしてきた中で一番強いです・・・。」

鷲一に抱えられるように起こされ、三上はそうこぼした。

掴まれた腕はすでに痣となり変色している。

それを聞いた海馬は最早、弱音を吐き始めた。

「こんなの、どうやって勝てばいいんだよぉ!!」

その様子にキングは虫けらを見るような目で海馬を見て笑った。

「クックック!!!この程度で我を倒せると思うなよ!!!!」

黄金に輝くキングは一気に海馬との間合いを詰めてきた。

振り上げられた手には先ほど朱夏を一瞬で切り裂いた爪が光る。

海馬はその斬撃を懐に突進するように避けた。

そのまま人狼に体当たりをかます。

「うおりゃぁぁぁぁあ!!!」

体当たりは直撃したはずだったが、キングはびくともしていない。

「嘘だろ!?」

「弱いな・・・。」

そう言うとキングは海馬の腹を思いっきり地面から蹴り上げた。

「ぐあっ!!!」

苦しそうな声が海馬から漏れる。

「海馬!!」

鷲一は思わず叫んだ。

海馬はキングの頭より上に吹っ飛ばされる。

さらに、地面に向かって落下してくる海馬をキングはボールをけるように横なぎに蹴り飛ばした。

なすすべなく土ぼこりを上げて海馬はグラウンドに叩き付けられてしまう。

「ガハッ!!!」

腹を蹴られて息が上手くできずに苦しそうな声が漏れた。

「僕・・・どっちかというと・・・インドアなんだってば・・・。」

海馬は元から運動神経がいいタイプではない。

それでも、よろよろと海馬は立ち上がろうとした。

「グ・・・グァァ!!!」

その時、今度は別の意味で海馬の体は痛みを感じた。

海馬の骨格が徐々に人間のそれに近づいて変形したのだ。

それ故、狼のような顔、獣のような毛深い体としっぽではあるが、海馬は二本足で立った。

その形はキングと同じ人狼に似ている姿だった。

指は長くなり、海馬は自分の手を見てグーパーしてみる。

それは、ほとんど人間の手の形に近かった。

海馬はそれを見て、鷲一に手を振る。

「鷲一!!なんか、武器を持ってないか!?ナイフとかあれば最高なんだけど!!」

それを聞いて、鷲一は三上が渡してくれた鞄の中に入っているサバイバルナイフを取り出す。

「受け取れ!!!」

鷲一はナイフを海馬に投げ渡した。

海馬はそれを口でキャッチする。

そして、ナイフを装備すると頷いた。

「まだ、この方がましだね。」

普段から護身用にナイフを持ち歩いている海馬はナイフの扱いはそれなりに自信があった。

しかもこのナイフは自分が持ち歩いているナイフなんかよりも上物だ。

銀色に光るナイフを海馬は構えて相手を見据える。

「そんなもので何ができる?」

キングはおもちゃを見るような目でそのナイフを見つめた。

「まぁ、やってみようじゃないか。」

海馬はいつになく真剣な顔でキングに向かって走り出す。

「うりゃああ!!!」

半人、半狼の海馬は思いっきりナイフを振りかぶる。

キングはそれを冷静に避けた・・・つもりだった。

しかし、海馬はその場でナイフは振り下ろさずにもう片方の手に持ち替えると逆手でキングを切り裂いた。

急なフェイントにキングは対応できない。

「ぐああぁ!!!!」

「キング!!!」

最高級のサバイバルナイフがキングの胸に横一線の血しぶきを上げた。

「僕・・・実は両利きなんだよね。」

海馬がニヤッと笑う。

「やった!!!」

遠くで三上と共に海馬を見ていた鷲一もガッツポーズをする。

初めてまともに攻撃が命中したように思えた。

キングは片膝を地面に着くと傷口を手で押さえる。

異形と化した紗理奈がキングに駆け寄ってきた。

「キング!!!!よくも!!よくもおおお!!!」

「紗理奈!!ダメだ!!来るな!!」

海馬が紗理奈をみると、そこには怒りに燃え狂った紗理奈が居た。

「・・・紗理奈・・・。」

その変わり果てた姿に海馬は複雑な表情だ。

昔、自分に笑いかけてくれた紗理奈は見る影もなかった。

「よくも!!!よくもキングを!!!傷つけたっしょ!!!!」

怒り狂う紗理奈に海馬は眉を顰める。

その怒りはどう見ても、上司に対しての怒り方ではない。

「紗理奈・・・。君は・・・キングの事を・・・?」

その続きを言えないで海馬は口ごもった。

けれども、紗理奈はしっかりと海馬を見据えてその質問にこう答えた。

「そうだよ!!私は、キングが大好きっしょ!!!キングを愛してるっしょ!!!」

その言葉を聞いた海馬は一度だけ目を瞑った。

ゆっくりと呼吸をする。

「・・・。そっか・・・。」

海馬はその一言を聞いて安心したように笑う。

過去と決別できたような気がした。

「紗理奈・・・ごめんね・・・。そして・・・ありがとう。」

海馬はとても優しく紗理奈の目を見てそう言った。

紗理奈は一瞬だけ目を逸らして泣きそうな顔をした。

けれども、すぐに元の怒りに満ちた目に戻っていく。

「うるさい・・・。いまさら過ぎるよ、海馬ちゃん。」

紗理奈は歯ぎしりをして海馬をにらむ。

「もう・・・良いよ!!話なんてうんざりだ!!海馬ちゃんの首をもって朱夏っちにお土産にするっしょ!!!!」

「僕も・・・朱夏を悲しませるわけにはいかない!!いくよ、紗理奈!!」

そう言ってナイフを構えなおす。

「よせ!!紗理奈!!!」

キングは紗理奈を制止しようとするが紗理奈は止まらない。

ドリルのような爪を海馬にに向けニヤッと笑う。

その長さは全然海馬に届いていない。

「え!?」

海馬は意味の分からない攻撃に首を傾げたがすぐに理解することになる。

止まっていたドリルのような爪は一瞬で海馬めがけて伸びたのだ。

あっという間に海馬の肩に突き刺さる。

「グァッ!!」

爪は肩を貫通した。

海馬はその爪をナイフでへし折り、もう片方の手で爪を肩から抜き払う。

肩からは血飛沫が上がった。

「か!海馬!!」

「海馬様!後ろ!」

手を出せずにいる鷲一と三上は海馬に向かって危険を知らせる。

「えっ?!」

海馬が後ろを振り返ると今度はキングが爪を振りかぶっていた。

2人の声のおかげで転がるようにその爪を避ける。

「グッ!!!」

しかし、更に避けた先に紗理奈がいた。

何とか、サバイバルナイフを振りあげて爪を牽制するが、間髪入れずにキングが真横から蹴りを繰り出した。

「グァァァ!!」

海馬は紗理奈とキングの息の合った猛攻に耐えられない。

蹴り飛ばされた海馬は手足を広げて地面に転がった。

痛みに目を細めると既に真上に紗理奈がいた。

「うそっ!?!?」

「終わりっしょ!」

紗理奈の爪はドリルを解き、四方向に別れて海馬の両手両足を突き刺した。

その爪は貫通し、地面まで突き刺さる。

「ああぁぁあぁあぁ!!」

海馬の悲痛な叫びが響いた。

「海馬!!!」

「海馬様!!!」

三上と鷲一は海馬に駆け寄ろうと何とか立ち上がった。

「グググッ・・・!!!」

地面に磔にされた海馬は何とか爪を振りほどこうと動くが傷がえぐれるばかりで身動き一つ出来なかった。

紗理奈は海馬を一瞥すると、トドメを刺すべく、もう片方の手を海馬の首に向けた。

「海馬ぁぁ!!」

「海馬様!!」

三上と鷲一は同時に飛び出した。

鷲一は松葉杖なんて投げ出して片足だけで駆けだす。

三上も打ち付けられて痛む全身を奮い立たせてなんとか走りだした。

けれども、その2人の前に立ちはだかったのはキングだった。

「邪魔です!!!!」

三上はすぐさまキングの怪我に向かって蹴りを繰り出す。

キングは傷口を狙われていると悟り、両手でそれを凌いだ。

その隙に鷲一はキングの脇を抜けるようにして海馬に向かった。

「死ねぇぇえ!!」

紗理奈が叫ぶ。

海馬はなす術がなく悔しい表情のまま紗理奈を睨んでいる。

「やめろおおおおお!!」

鷲一が決死の体当たりを紗理奈に繰り出す。

しかし、あと僅かで届きそうな所で紗理奈の爪は海馬の首に向かって伸びた。


――カキン


しかし、首に到達した爪は3秒もの間、突き刺さらなかったのだ。

「え・・・?」

紗理奈は何が起きたか分からずに目を見開いた。

たった3秒の出来事だった。

されども3秒の出来事だった。

海馬の首に紗理奈の爪が刺さらなかったその3秒のおかげで鷲一の体当たりは紗理奈に届いたのだ。

「ぐぁ!!」

バランスを崩して、紗理奈は転倒した。

転倒した拍子に海馬の両手両足に突き刺さった爪が折れる。


――カラン


紗理奈は海馬の首に刺したはずの自分の爪を見て、驚愕せざるを得なかった。

「こ、これ・・・!!」

銀色に光るそれを紗理奈は凝視する。

「私が、海馬ちゃんにプレゼントしたペンダント・・・??」

3年前の海馬の誕生日に、沢山の時間をかけて選んだペンダントを紗理奈は忘れてはいなかった。

なぜならこのペンダントにはちょっとした仕掛けがある。

正面から見ると何もないただのプレート型のペンダントだが、月明かりにそのペンダントを当てると文字が浮かび上がる。

【Sarina&Kaiba】

そこには、自分がオーダーメイドで作ってもらった文字が浮かび上がったのだ。

その思い出のペンダントが今、紗理奈の爪にひしゃげて食い込んでいる。

海馬の首に突き刺した時、毛の奥にはこのペンダントがあった事を紗理奈は知らなかった。

それは先程、朱夏が結んでくれたものだ。

「まだ、持ってたの?嘘っしょ?」

紗理奈は信じられないように首を振る。

「嘘じゃないさ。未だに、毎日身に付けてるんだ。いつ、紗理奈が戻ってきても良いように。」

鷲一がそっと、海馬を見るとその瞳は潤んでいるように思えた。

鷲一は何も言わずに海馬に突き刺さった爪を抜く。

「っ!!」

海馬は少し痛そうにしたが両手足が解放され起き上がる。

その目は紗理奈をじっと見つめたままだった。

「嘘だ。だってあの時!海馬ちゃんは私じゃなくて朱夏を選んだ!!」

紗理奈の目もうるんでいる。

「それは違う!!僕は2人共助けたかった!!でも・・・」


「話はそこまでだ。」


割って入るようにキングの低い声が轟いた。

キングの手には頭を鷲掴みにされた三上の姿がある。

その意識はもはや朦朧としていた。

「三上!!?」

海馬も鷲一も焦って戦闘態勢にもどった。

「三上を離せ!!」

そう海馬が叫んだがキングは更に力を加える。

「ぁっ・・・!!」

叫ぶ余力もない程弱った三上は小さな悲鳴をあげた。

「や!止めろ!!」

「やめて欲しくば、向井鷲一・・・こっちへ来い。」

「・・・っ!!」

鷲一は眉を顰める。海馬にも鷲一にも三上を開放する手段はない。少し迷ってから、鷲一はゆっくりとキングの方へ向かって歩き出した。

「だめだ!鷲一!!」

「だ、だけど!このままじゃ三上が!!」

二人が言い合いを始めたその時、見た事のある白黒の影が勢いよく飛び込んで来た。


「スピリット・リッパぁぁぁ!!」


死神の赤い一線がキングの腕を縦一直線に通過したのだった。

キングの腕は急にブランと垂れ下がる。

三上は重力のままに地面に落ちた。

「やっと、攻撃があたっなぁ、S-03よぉ!!」

「ま、また貴様か。D-09!!」

キングは何度でも立ち向かってくる死神に、牙を見せて唸るのだった。

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