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第27章 置手紙

朱夏は午前中、朱夏の部屋で丸尾に頼んだ防具の確認をしていた。

朱夏でもつけれるサイズと重さの防具を、さっそく手に装備してみる。

「薄くて頑丈・・・流石、丸尾ですね!」

丸尾は今日はいないが、代わりに三上と角田がいる。

「その手の買い物は丸尾に任せておけば大体なんとかなりますからね。」

角田がニヤッと笑う。

「朱夏様・・・本当に今日がそのXデーなんですか?」

三上は神妙な面持ちでそう聞きだす。

前回の事件で、体中傷だらけにされた三上と足と腕を横一直線に切り付けられた角田は嫌な予感しかしない。

「そうなんです・・・今回は・・・その・・・海馬君が・・・その・・・。」

朱夏は何と言ったらいいか迷って口ごもる。

「海馬お坊ちゃんがどうしたんだ?」

角田がいぶかしげな顔で尋ねてくる。

「その・・・狼になっちゃったんです・・・。」

「・・・?」

「は・・・?」

大人二人は顔を見合わせて困惑する。

「茶色い毛が全身に生えて・・・鋭い牙と爪がありました・・・。」

「・・・ごめんなさい。朱夏様?それは・・・パラサイトの能力で、と言う事でしょうか?」

困惑する三上は考えうる限りの回答を探す。

「多分・・・そうだと思うんです。」

「ずいぶん曖昧なんだな、今回は。」

その煮え切らない言い方に角田がため息交じりでそう言う。

「今回のデジャヴ・ドリーム・・・誰一人生き残れませんでした。」

「・・・なんですって・・・?」

三上は絶句した。

それはすなわち、今日朱夏が死ぬという事に他ならない。

「誰一人・・・?じゃぁなんで、Xデーが今日だってわかったんだ?」

当然の疑問を角田は朱夏に投げかける。

「桃が・・・気絶する直前に伝言を残してくれたんです。」

「げ・・・ピンク頭か!!・・・って気絶?」

病室が一緒だった桃と角田は仲が悪い。

桃は三上を拷問で傷だらけにした。

それを三上以上に角田は怒っているのだ。

けれども今回はどうやら敵というわけではなさそうだった。

「生き残るのに相当苦労したようで、力を使い果たしてまだ目覚めていません。」

「・・・。そう・・・なのか。」

複雑な面持ちで角田はうなずいた。

「今日もエリが桃の看病へ行ってくれているはずです。この確認が終わり次第私も行きます。」

「解りました。車を手配いたします。」

そう言うと三上は颯爽と部屋から出た。

「朱夏様、この防具はどうしますか?」

朱夏とエリ意外にも防具がもう一対ある。

「それは鷲一さんの分です。車へ運んでください。」

「かしこまりました。」

そう言うと角田もエリと鷲一の防具を持って部屋から出て行った。

朱夏は複雑な表情で窓から海馬の部屋を見た。

(海馬君・・・今、どこにいるのかな・・・。)

不安に押しつぶされそうになるのをぐっと我慢する。

そうして窓の外を覗いていた時、聞きなれない原付の音が近づいてきた。

「・・・え・・・?」

そこに乗っている人は全身血まみれ。

そして、とても親しい友人だった。

「鷲一さん!!!!!」

朱夏は叫び声に近い声で呼びかけた。

鷲一は原付を支える力もなくその場に倒れる。

そこへ丁度、車の手配のため外へ出た三上が玄関から出てきた。

「三上!!!三上!!!そこに鷲一さんが!!!!助けて!!!」

「なっ!?」

朱夏に声をかけられて指を指された方向を見るとひどい怪我の鷲一が原付に押しつぶされるように倒れていた。

三上は慌てて原付を避けた。

すると原付のボックスが開き、中から2匹のポメラニアンが姿を現した。

「クゥゥン。」

「キャンキャン!」

二匹は鷲一の体に寄り添って傷をなめている。

「な、なんですかこの犬は!?」

驚いたが、今はそれよりも鷲一だ。

足はあり得ない方向に曲がったままだった。

「だ!?大丈夫・・・じゃないです!?ひどい怪我です・・・!」

「今、そちらへ行きます!!!」

朱夏は慌てて外へ出て鷲一達の元へ駆けてきた。

「ひ・・・ひどい。どうして・・・?」

酷い出血量に朱夏がめまいを起こしそうになる。

すると鷲一は自分の首にかかっている海馬のペンダントを乱暴にちぎると朱夏に渡す。

「・・・あああ!!これ・・・海馬君のペンダント!?」

「裏・・・見てくれ・・・・・字が書いてあんだ・・・。」

息絶え絶えにそう言う。

「え!?・・・にっき・・・みろ?・・・日記見ろ!?」

普段きれいな字を書く海馬とは思えないミミズのような文字に必死さが伝わる。

朱夏は思わずペンダントを握りしめた。

「海馬の・・・日記・・・朱夏が・・見てくれ。」

「え!」

朱夏はそう言われて戸惑った。

海馬の日記だなんて、普通だったら絶対に見てはいけないものだ。

「俺よりも・・・きっとその方が・・・良い。」

「・・・・・。解りました。」

朱夏は静かにそう言った。

「私は鷲一様を一度家へ連れて行きます。病院へ行く前に日記の結果・・・知りたいですよね?」

「ああ・・。ありがとう三上。」

「角田!!手伝ってください!!」

三上が車庫の方にいる角田に呼びかけた。

「な!!なんだこりゃぁ!?」

角田は血まみれの鷲一に声がひっくり返る。

「家の中へ運びます!!!手伝って!!」

「了解っす!!!」

三上の合図で鷲一は角田に抱えられて朱夏の家へ移動する。

二匹のポメラニアン達も一緒について入っていった。


朱夏はその様子を見守った後、海馬の家へ行き、チャイムを押す。

家には誰もいないようだった。

海馬のご両親は時にこうして病院で寝泊まりすることがあるのを朱夏は知っていた。

鍵も開いたままだ。

「昨日のまま・・・ですか。お邪魔いたします。」

朱夏は一人で海馬の家に上がり込んだ。

まっすぐ海馬の部屋に向かうと日記を探す。

昨日、海馬狼が暴れまわったせいで、いつもとは全然違うぐちゃぐちゃな部屋になっていた。

その中から、朱夏は床に転がった日記を見つけ出す。

「・・・。海馬君・・・ごめんなさい。日記、拝見いたします。」

朱夏はいつも海馬が座る机に腰を掛けると、そっとページを開くのだった。


◇◇


親愛なる僕の友人たちへ


まずは詫びを入れておこうかな。


僕はどうしてもデジャヴ・ドリームの話が出来なかった。

それは、朱夏、君なら知っていると思うが「紗理奈」という女の子が関係している。

僕と朱夏と紗理奈はいわゆる幼馴染。

小学生を出るころまでは本当に仲のいい3人組だった。

特に、朱夏と紗理奈は・・・本当に仲が良かったんだ。


今回のデジャヴ・ドリームでその紗理奈が出てきた。

僕たちはその・・・色々あって喧嘩した。

紗理奈と朱夏と・・・そして僕は3年前に大喧嘩したんだ。


そして喧嘩したまま紗理奈は行方不明になっていた。


再会した紗理奈は僕が狼だと言う事を知っていた。

さらに言うと、僕がただの狼になることも知っていた。

今回、紗理奈は敵だったんだ。

「朱夏をどうやって苦しませて殺すか、が生きる糧だったと言っていた。」

・・・。


朱夏は・・・いきなりそんなことを言っても信じないだろうな・・・。

でも、僕は紗理奈の合図で急に体が動かなくなった。

自由を奪われて、紗理奈によって、朱夏を食い殺したんだ。

本当に最悪さ・・・。


ねぇ、朱夏?僕らはもう一度きちんと話をするべきだと思う。

この事件が終わったら・・・。

生き残っていたら・・・。

改めてあの日に何があったのか教えて欲しいんだ。


僕は、朱夏を信じたい。

でも、やっぱり紗理奈の事も信じたいんだ。

こんなこと言うとまた喧嘩になるよね・・・。

でもね、僕は、朱夏の事を本当に大事に思っているんだ。

それだけは忘れないで欲しい・・・。


さて、前置きが長くなったね!

ここからは時系列順に何があったか書いていくよ。

・・・・・・・・。

・・・・・・・。

・・・。


◇◇


一通り読んで朱夏は日記を閉じた。

「・・・海馬君・・・本当にずるいよ!・・・こんな形で置手紙するなんて。」

朱夏は海馬が自分に宛てて書いたであろうメッセージの多さに口を尖らせた。

「それに、紗理奈・・・どうして・・・?」

つぶやくように声にするが、誰も答えてくれる人はいない。

しばらく考えてみたが埒が明かない。

「・・・なんか・・・海馬君ばっかり・・・ずるいです!!」

朱夏はそこに転がっているペンを手に取ると、海馬の日記にぐりぐりと言いたいことを書いた。

「・・・ふぅ!」

書き終わるとすっきりしたように笑って朱夏は部屋を出ていった。



朱夏は今度はまっすぐ自分の家へ戻った。

そこで、鷲一は三上にできる手当てをしてもらっていた。

「行きますよ・・・きっと痛いです。歯を食いしばってください。」

「ああ・・・頼んだ。」

そう言うと三上は曲がった足を正しい方向へ力任せに直した。

「ぐあああああ!!!!!」

歯を食いしばりながらも絶叫が木霊した。

「何してるんですか!?!?」

叫び声を聞いて朱夏が慌てて部屋に入る。

「このままでは足が変な方向へ固まってしまいます・・・。硬直しかけていたので・・・何とか直そうと。」

三上も本当はやりたくはないのだろう。

困った顔で朱夏にそう言った。

「は、早くお医者様へ!!」

そう言うと鷲一が慌てて遮った。

「待ってくれ・・・俺が・・・頼んだんだ。」

「えええ?!」

予想外にも、鷲一の頼みを三上が聞いているだけだった。

「心琴が・・・それに・・・特に死神が・・・殺されそうなんだ・・・。戻らなきゃいけないんだ・・・!!」

「無理ですよ!!!そんな怪我で何ができるんですか!?」

息絶え絶えに言う鷲一に朱夏が真剣に抗議する。

「前回だって・・・死にかけだったが・・・行ってよかっただろ?・・・今回だって、死なない限り・・・できることを・・・する!!」

そう言われて朱夏も強く言えなくなる。

前回、海馬と鷲一が歩くのもやっとなのに助けに来てくれた。

そのおかげで助かったのだ。

「・・・ま、まず!状況を伝えてください!どうしてそんな血まみれに?」

話を聞けば何か打開策があるかもしれないと朱夏は思った。

「死神と一緒に大学に侵入してきた。・・・事の真相がだいたい分かったんだ。」

「本当ですか!?すごいじゃないですか!」

朱夏は驚いた表情で鷲一を素直に褒めた。

「でも、桃が必要なんだ。桃が居ないと心琴が死んじまう。」

それを聞いて、朱夏が頷いた。

「解りました。とにかく、まずはエリと桃の元へ移動しましょう。」

「了解です。今度こそ車を準備してきます。」

再び颯爽と三上は部屋を出て行った。

「ええ、頼みましたよ。」

朱夏は千切れたペンダントをそっとポケットにしまってそう言うのだった。

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