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第24章 S-06

昨日、紗理奈に散々追い掛け回された2匹はとうとう追い詰められていた。

「て・・・てこずらせて!!もう!!怒ったっしょ!!」

元から研究員の紗理奈は身体能力は普通の人間同様だった。

息を切らせてようやく片方のポメラニアンを捕まえた。

「・・・あ。」

しかし、その片方のポメラニアンがポム吉ではなくて心湊だと言う事に気が付く。

(ど、ど、どうしよう!?捕まっちゃった!どうなるの、私!?)

「・・・はぁ。はずれっしょ。」

明らかな落胆に心湊はイラっとした。

(はぁ!?人を散々追いかけてその反応!?ふざけないでよね!!)

怒った心湊は、紗理奈の手に噛みついた。


ガブッ


「いったーい!!!!!」

思わず紗理奈は心湊を投げ捨てた。

「キャン!!!」

床にたたきつけられて心湊は痛みに鳴いた。

「おい!!来てるぞ!!逃げろ!!」

ポム吉は大きな声で危険を知らせる。

「許さない。あんたは殺す。」

殺意に満ちた目が心湊を睨んだ。

心湊は何とか立ち上がって、牙をむく。

「ウウウゥ!!!!!」

しかし紗理奈はそれをつまらなそうに見て、心湊を蹴飛ばした。

「キャン!!!!」

廊下に向かっておもいっきり吹っ飛ばされた。

ポム吉は心湊と紗理奈の間に入る。

「や、止めてくれ!この子は関係ない!!」

懇願する声でポム吉は紗理奈に訴える。

「それは違うっしょ・・・?」

酷くゆがんだ顔で吐き捨てるように紗理奈は言う。

()()()()()()()()()()()()は関係なかった・・・でしょ!?」

そう言うと心湊に向かって大きく足を振り上げる。


(もう・・・だめ!!!)


けれどもその足が振り下ろされるよりも先にポム吉が紗理奈に向かって飛び掛かった。

「やめろおおおおおおおおお!!!!!」

そういうと紗理奈の手に大きくかみつく。

紗理奈は痛みにポム吉を壁に投げつけた。

「ぐぁ!!に、逃げろ!!とにかく逃げるんだ!!」

ポム吉が作ってくれた隙に心湊は走り出した。

廊下を駆け、出口へと差し掛かったところで思いがけない人に遭遇する。

心湊は困惑しながらその人の前に立ちはだかった。

(え・・・なんでこんなところにいるの・・・!?)



(向井鷲一!!!!)

「キャン!!!」


急に飛び出してきた犬に鷲一も、死神も驚いた。

つい先ほど大きな部屋で海馬と別れたところだった。

「あ?なんだこの犬?なんでこいつゲージから出てるんだ?」

「さぁなぁ?」

心湊は一生懸命、鷲一のズボンを引っ張った。

「(お願い!!来て!!あなたでも良いから!!)キャン!キャン!!」

「わりぃ、急いでるんだ。足を離してくんねぇか?」

鷲一は優しく心湊を抱えるとそっとズボンから引き離す。

しかし、心湊はそれでも諦めなかった。

「(お願い・・・ポム吉が・・・殺されちゃう・・・)キュゥゥゥン。」

何度も何度も鷲一の行く手に心湊は立ちはだかった。

「??!?」

しつこく付きまとわれて、鷲一は戸惑う。

「な?なんだ??」

その様子を見て、先に気が付いたのは死神だった。

「・・・これ・・・“人間犬”なんじゃねぇか!?」

「・・・あ!!!」

その可能性を鷲一は失念していた。

「こいつ・・・って事は中身は人間?何かを伝えようとしてるのか!?」

鷲一の一言で心湊は「キャン!」と一声鳴いた。

心湊は元来た道を戻ってしっぽを振った。

「あっちに行けって事なのか?!」

「なっ・・・戻るのか?」

死神は驚いてそう言う。今は情報を伝えるのが先決だと思ったからだ。

「いや・・ほおっておけねぇし・・・。」

「これだから・・・甘ちゃんは嫌なんだ・・・。」

元組織のメンバーからすると慈善行為は自分の首を絞める。

しかし、そんな死神の事は構わず鷲一は心湊の後を追う。


そこにいたのは白衣の女性。

その女性は片手でポメラニアンの足を掴んでぶら下げ、もう片方の手で胸を突き刺していた。

その光景は、普通の人ではないことを物語っている。

「・・・さっきのポメラニアン?人を呼んでくるとは・・・思った以上に厄介っしょ!!」

女性はポメラニアンを乱暴にこちらへ投げ捨てた。

「(ぽ・・・ポム吉さん・・・!?)キャン!!!キャン!!!」

ポム吉が人間の言葉を話すことは二度と無かった。

「クゥゥン・・・。」

その代わりに普通の犬のように耳を伏せか弱く鳴いて見せる。

「(よくも・・・よくもポム吉さんに酷いことをしたね!!)グルルルルル」

心湊は紗理奈に牙を向いて唸った。

心湊をみた死神は誰が敵かを察知する。

「こいつが・・・敵・・・みてぇだなぁ!!」

死神は目を赤く光らせて赤い鎌を出した。

「え!?えええ?!なっ!!なんでパラサイトがここに!?」

紗理奈は死神の出現に驚きを隠せない。

「その能力・・・D-09!「スピリット・リッパー」だね・・・!!」

研究職の紗理奈はすぐさま能力を言い当てた。

「ご名答だぜぇ。」

死神はギザギザの歯を見せて笑った。

「おい、鷲一。お前は犬を連れたら行け!」

「わ、わかった・・・!!」

鷲一はポメラニアン二匹と共に走り出した。

「あ!!待つっしょ!!!」

「逃がさねぇぜぇ!?」

紗理奈の前に赤い目の死神が立ちはだかる。



鷲一は今度こそ2匹と一緒に玄関へ向かっていた。

それなのに、ポメラニアンの一匹が急に違う方向へ走り出す。

「あぁ!?」

鷲一は急な方向転換に驚いた。

「お、おい!?時間ねぇんだってば!!!」

けれどもそのポメラニアンはまるでいう事を聞かずにある部屋の前で突然止まった。

ドアをカリカリしてアピールする。

「はぁ・・・はぁ・・・!!なんだってんだ!?」

その声に扉の中から声が聞こえた。

「鷲一?鷲一なの!?!?!」

「え・・・心琴・・・!?心琴なのか!?」

鷲一はこの時初めてポメラニアンが心琴の所へ連れてきてくれたことに気が付いた。

「おまえ!・・・本当にありがとうな!!」

ポメラニアンに感謝を述べるとドアに手をかける。

鍵などは一切かかっていなかった。

あたりに警戒しつつそっとドアを開けると、そこには心琴がいた。

「心琴!!!!」

「鷲一!!!鷲一!!!!」

鷲一は心琴の元に駆け寄ると二人はしっかりとお互いの事を抱きしめる。

「もう、二度と会えないかと思った!!!」

心琴は泣きはらした顔で鷲一にそう言う。

「俺も・・・心配した。本気で・・・!!!」

心琴が生きていたことに安堵して鷲一は笑顔で心琴をみる。

そして心琴の目を見てハッっとした。

無事、とは言えない事を一瞬で悟る。

「・・・心琴・・・やっぱり・・・。」

その目はオレンジ色に変化している。

よく見ると髪の毛も一部オレンジだ。

「・・・ごめん・・・。俺があの時、席を外してなかったら・・・。」

鷲一はあの日から毎日自分を責め続けていた。

「鷲一のせいじゃないよ。」

心琴はいつだって相手を責めない。

けれども、辛そうな顔をしてこう言った。

「私ね・・・S-06なんだって・・・。」

「っ・・・!?」

鷲一はそれを聞いて膝をつく。

その一言で十分だった。

体の中にパラサイトを注入されて。

無理やり組織の人間にさせられてしまった事を意味しているからだ。

拳で床を殴って憤りをぶつける。

「ち・・・畜生・・・。なんで・・・なんでこんなことに・・・!?」

「鷲一・・・。」

「こんな手錠!!!!」

鷲一は心琴についている手錠を無理やり引っ張ってみるがびくともしない。

「さ、流石に無理だよ!」

手が真っ赤になった頃、鷲一は諦めた。

「・・・どう・・・したら・・・。」

「海馬さんに相談してみたら!?きっと今回もいい作戦を・・・!!」

心琴がそう言うと鷲一は首を横に振った。

「あいつはもう・・・。」

「え・・・・?」

心琴は思ってもみない返答に顔がこわばる。

「嘘・・・でしょ・・・?犬になっちゃったって事?」

その一言に鷲一は自分の推理が正しいことを確信した。

「お前の能力なのか?・・・犬にする能力。」

心琴は静かに首を縦に振る。

「しかも、紗理奈っていう白衣で三つ編みの女の子に・・・無理やり能力を使わされるの・・・。」

「そんなことが出来るのか!?ってか、さっきの女か!」

怒る鷲一を横目に心琴は自分の手を見る。

そこには忌々しい傷跡が残っていた。

「とにかく、心琴の居場所が分かった。生きてくれてる。俺は・・・それが何よりも嬉しい。」

「・・・うん。」

その優しい一言に心琴は涙が止まらなくなる。

「本当に・・・泣き虫だな、心琴は。」

鷲一は困ったように笑うと愛おしそうに心琴を抱きしめた。

しばらくそうしてから真剣な顔で心琴を見る。

「いいか?聞いてくれ。絶対に戻ってくる。気をしっかり持つんだ。必ず鍵を探し出して助けるからな!」

「・・・うん!!」

そう言うと心琴はようやく笑顔をみせる。

鷲一も歯を見せて笑うと扉へ戻っていった。


その様子を一部始終見ていた心湊は小さくため息をついた。

(なぁんだ・・・あの人、ちゃんとお姉ちゃんの事好きなんだ・・・。)

心湊は少しだけ鷲一の事を認めるのだった。

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