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第13章 生き残れ

その日の晩、エリはデジャヴ・ドリームを発動した。

そこは中華屋さんの2階。

床に就いたはずの桃は急な現実感に驚いた。

「これがデジャヴ・ドリームかぁ!!すごいすごい!!キャハッ!」

桃は無邪気にはしゃぐ。

エリはあたりを見回して困った顔をした。

「やっぱり・・・デジャブ・ドリーム発動してた・・・。」

「ふーん・・・って事はぁ、あんた死ぬのね?」

直球で話をしてくる桃にエリは嫌な顔をする。

「死神と杏は?」

「あれ?死神・・・呼べてない?杏も?」

布団の方を見ると、そこには杏がスヤスヤと寝ているのが見えた。

「あ・・・もしかして・・・まだ魂がくっついてないから呼べないのかもぉ。」

エリのデジャヴ・ドリームは魂を夢の世界に連れてくる。

死神と杏はいまだ生命線がきちんとくっついていないために能力が上手く発動できなかったのだ。

「なるほど・・・って、桃、エリ、二人きり?」

戦闘力では死神を当てにしていた分、エリは驚きを隠せない。

「いいじゃなぁい?守ってあげるよぉ?まぁ、私も今・・・あんまり能力使えないんだけどね?」

「え!?」

エリからすると初めて聞く情報だった。

「死神と桃とママの3人は魂との生命線を切断しちゃったでしょ?」

「う、うん。」

「あの事件以来ずっとインサート・ソール使い続けてるのぉ。凄くない?でもね、力使い続けてるから、今出せるのってせいぜいちっちゃいボール程度なの!ごめんね!キャハッ!!」

「・・・。」

その話を聞いてジトっとした目でエリは桃を見た。

つまり戦闘員はほぼいないと言う事に他ならない。

「なにさぁ。」

不満そうなエリに桃は口を尖らせた。

「もも、やく、たたない。」

「あ!!!エリには言われたくないしぃ!!!」

桃は元から非戦闘員のエリに憤慨するのだった。


「まぁ、いい。生き残る、情報持ち帰る、目的!今日は、いつ?」

「あ・・・カレンダーある。えっと・・・9月1日だよ。」

一日が終わるとカレンダーに×を付けるので今日の日付が解りやすい。

そのカレンダーには月の満ち欠けが記載されていた。

「十五夜・・・満月・・・?うん、覚えた覚えた!キャハッ!」

1日は満月だった。

「それに、みんなの場所、探す。大事!」

「わかった。まずは外の様子を見てみよっか!」

カレンダーの方とは逆の窓へ移動するとき桃はある事に気が付いた。

「・・・。」

驚いて布団を見ている。

エリは急に立ち止まる桃に首を傾げた。

「桃?なした?」

「・・・死神・・・いないみたいなのぉ。」

いつも杏の隣で寝ている死神が居なかった。

「こんな夜更けに普通外出は・・・しないよねぇ?何かある・・・あるいはあったんだ。」

桃は普通の夢探索ではない事を感じる。

「まって。」

「え?」

「何かが来る。」

「・・・!!」

桃が息を潜めて窓の外を見た。

エリもすぐに窓を見る。

そこには、酔っぱらったサラリーマンや帰宅途中のお姉さんが歩いていた。

「エリ!!見て見て!!あそこ!!」

「え!?なに!?」

目を凝らすと目が緑に光っている犬がいた。

しかも、1匹や2匹ではない。

見る限り30匹はこちらへ向かって走ってきている。

「う、うわあああ!!!」

通りすがりの酔っぱらったサラリーマンは襲われている。

「大変!!どうしよう!?」

桃は焦った。

エリも困惑を隠せない。

「きっと、ハウンド・マスターが犬を操ってるんだよ!!」

「犬、たくさん!!・・・どうする!?」

桃とエリは顔を見合わせる。

「ぐあ!!!ポチ!!どうしたんだ!?やめ!!やめるんじゃ!!!」

「さくら!!やめてよ!!痛い!!噛まないで!!」

商店街のあちこちで悲鳴や怒号が聞こえ始めた。

「見て!!あっちには・・・家の中にいる!!飼い犬も暴れてるんだわ!!」

「きゃぁぁぁ!!」

「ぐあ!!痛い!!いたい!!!」

商店街にいる人々に犬たちは容赦なくかみついていく。

「なんだこの犬!!あっちいけ!!」

「や、やめておくれ!!」

その中に聞き覚えのある声が聞こえて桃の血の気が引いた。

「おじちゃん!!おばちゃん!!!」

桃は居ても立っても居られなくて階段を駆け下りて行った。

慌ててエリもついて下に降りていく。

「きゃぁ!!!!」

下に降りると4匹の犬が叔父さんとおばさんに噛みついていた。

窓が破られ、一階に寝泊まりしている二人を襲っていた。

どの犬も目が不気味に光っている。

「おじちゃんとおばちゃんから・・離れなさい!!!!!」

バチバチっという静電気の音と共に桃の毛が逆立った。

「も・・・もも・・・ちゃん?」

おばちゃんが驚いた顔で桃を見た。

おじちゃんも目を見開いている。

「・・・。」

桃はその顔を直視できなかった。

以前、自分の両親が自分を見ていたのと同じ目のような気がしてならない。


『この、化け物!!出てけ!!!』


以前、両親を助けた時の罵声が頭をかけ廻った。

桃は一回だけ頭を左右に振ると息を吸う。

「今はぁ・・・そんな事・・・どうでもいい!!!おじちゃん、おばちゃん!!今助ける!!」

桃は静電気の球をたくさん作りだして犬たちに投げつけた。

―バチン!!!

―バチン!!!

静電気のボールは犬にあたってはじけていく。

「きゃん!!!」

「くぅぅん!!!」

攻撃が当たった犬は普通の犬のか細い声で吠えた。

そんな事おかまになしに桃はさらに静電気ボールを繰り出す。

「まだまだぁ!!!!!」

元から力が残されていない桃の額に汗がにじんだ。

―バチン!!!

―バチン!!!

「ワン!!」

「キュウン!!!」

犬たちは攻撃されて走って逃走するのだった。

犬が去ったのを確認してから、桃は怪我のひどいおじちゃんを抱きかかえる。

「今のうちに2階へ!!!エリも手伝って!!」

「解った!!!」

エリはおばちゃんの手を引いた。

おじちゃんとおばちゃんを2階の部屋に移動する。

エリは全員が部屋に入ってから急いで部屋のドアを閉め、鍵を掛けた。

おじちゃんとおばちゃんは見た所、様々な場所を噛みつかれていて、ひどい怪我を負っている。

「いつつ・・・。」

「おじちゃん・・おばちゃん・・・。大丈夫?」

桃は二人を布団に横にして心配そうに顔を覗いた。

「あんた・・・化け物・・・なのかい?」

「え・・・。」

桃の表情は一気に曇った。

「さっきのは人間業じゃないな?」

おじちゃんは桃をじっと見つめている。

「・・・化け物・・・。」

桃は涙をためた。

あの時、両親に言われた言葉と同じだった。

両親はその後自分を人間扱いしてはくれなかった。

「ちょっと!もも、ふたり、助けた!!もも、本当は優しい!!」

「エリ・・・。」

エリがすかさず怒った。

桃は驚いた顔でエリを見る。

そんなエリにおじちゃんは笑いかけた。

「本当・・・。優しい化け物がいたもんだな。」

「ええ。おかげで助かったわ。」

「え?」

中華屋さん夫婦は桃を軽蔑している訳ではなかった。

口が悪い店主の言葉のあやに過ぎない。

「ありがとう、ももちゃん。おかげで助かったよ。」

夫婦はにっこりと笑った。

「おじちゃん!!!おばちゃん!!!」

「3人は普通じゃないと思ってたけど・・・何か事情があるんだね。今度ゆっくり話しておくれ?」

「うん!!おじちゃん、おばちゃん。・・・大好き!!」

桃は思わぬところで涙にぬれるのだった。


けれども、感動している暇なく事態は急変した。

「うっ!!!ぐぐ!!」

おじちゃんが苦しみ始める。

「あなた!?どうしたの?」

おばちゃんが慌てておじちゃんを見ると、おじちゃんの体がどんどん変化しているように見えた。

「え!?ええ?!」

桃もエリも驚きを隠せない。

「きゃぁぁ!」

今度はおばちゃんも叫び始めた。

「こ、これ!!何が起こってるのぉ!?」

「わからない!!でも・・・これって・・・犬!?」

おじちゃんとおばちゃんは見る見るうちに犬に変化した。

小さな小型犬だったが明らかにこちらに牙をむいている。

そして、おじちゃんは寝ている杏に、おばちゃんはエリに向かって噛みついてきた。

「いたっ!!」

夢の住人の杏は噛みつかれて起きた。

杏は痛みに手を大きく振った。

遠心力に耐えきれないおじちゃん犬は壁にたたきつけられ動かなくなった。

エリに噛みついたおばちゃん犬は桃が引きはがした。

「ご、ごめん!気絶してて!!!」

小さな静電気ボールを作り出すとももはおばちゃん犬に突き付けた。

「キャン!!」

犬らしい声を上げるとおばちゃん犬も動かなくなった。

「おじちゃん・・・おばちゃん・・・。」

桃は先ほどまで自分をやさしいと言ってくれた夫妻の変わり果てた姿に愕然とした。

けれども悲しんでいる暇は与えられない。

「今のって・・・って、エリ!?大丈夫!?」

桃がエリに話しかけようとするとエリは血が垂れてきている腕を痛そうに抱えていた。

「い・・・いたい・・・。」

顔をしかめてうずくまっている。

「いたい!!噛まれたところがとっても痛いよ!!」

杏が叫ぶ。

杏の手にもしっかりと歯型が付いていた。

桃は異常に痛がる二人をみて2歩後ずさった。

「なに・・・これ!?」

エリの腕を見ると噛まれた歯型から犬の毛がどんどん広がっていく。

桃の目の前であっという間に犬が二匹出来上がった。


「これ・・・まずいよねぇ!?」


桃は噛まれてはいけない事を瞬時に察知した。

「ゾンビ的な奴だよね!?噛まれたらゾンビになっちゃう・・・じゃなかった犬になっちゃうってやつぅ!!」

窓から屋根に飛び移るが、後ろからエリ犬と杏犬も追ってきている。

「ど・・・どうしよう!?2人を殺す訳にはいかないけど・・・足が速いよぉ!!!」

桃は慌てて、電信柱にジャンプした。

足場のある所までよじ登る。

ギリギリのところで桃は犬達に噛みつかれるのを回避した。

2匹の犬は流石について来れないようで、屋根の上からキャンキャン吠えている。

「・・・これ、どうすることも出来ないかもぉ。」

商店街を見ると、襲われる人、そして犬になった人の2種類に分かれて地獄絵図が繰り広げられていた。

襲われた人はみんな犬の食料になるらしく、生き延びた人は怪我の部位から犬となる。

「っ・・・ううぅ。能力使い過ぎてフラフラする・・・。」

先ほど中華屋さんの夫妻を助けた時たくさんの静電気ボールを使った桃の余力は殆どない。

桃は必死に電信柱にしがみついた。

(このまま・・・朝まで耐えて・・・この様子をエリに伝えなきゃ・・・!!)


桃は夢が覚めるまで必死に耐えるのだった。

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