第12章 助っ人
中華屋さんの2階の部屋は思っていたより広かった。
3人が布団を敷いて寝れる程はある。
そして、そこには勉強机が一つとギターが置いてあった。
エリは何気なくそのギターを眺めた。
「あー・・・これかぁ?ここの息子さんが使ってたものらしいぜぇ。」
「お兄ちゃんさいきん毎晩ギターの練習してるさ!似合わないよね!」
「うっせー!」
兄妹がそんな話をしている。
「え・・・死神、ギター弾ける?すごい!」
エリはそんな死神に素直に驚いた。
死神はすこし照れてるようだった。
「あ・・いやぁ・・・まだまだ練習中だけどなぁ。・・・で。何があったんだぁ?」
死神は話を本題に戻す。
「心琴ちゃん大丈夫なのぉ?」
桃は心配でたまらない様子でエリを見た。
「大丈夫・・・じゃない。昨日、犬に手、噛まれた。熱出る。暴れる、今病院でぐるぐる巻き・・・。」
「犬に手を噛まれたの?それで暴れ回ってる?どう言う事?」
杏は首をかしげた。
エリはどちらかというと桃と死神を見ている。
「桃、死神、パラサイト、わかる?」
ここに来たのは実動部隊だった2人はエリよりも組織に詳しいと思ったのだ。
「悪りぃが俺は知らないぜぇ・・・。犬を使うDかぁ・・・。」
死神は腕を組んで頭を捻る。
けれども思いつく人物には誰一人居なかった。
「いや・・・Dじゃないかも。」
桃は顎に手を当てて目を見開いている。
「え?」
「桃、何か知ってる?」
死神もエリも桃をじっと見つめた。
「・・・ハウンド・マスター・・・。」
桃は呟くようにそう言った。
「ハウンド・マスター?聞いた事もねぇぜ?」
「私も無いよ。」
「誰?それ?」
3人は同じ施設にいたが一度もその名前を聞いたことがなかった。
「S-03。幹部の男の能力に犬を操る能力者がいる。」
桃は全員を見てそう言った。
「幹部・・・!?」
殆どのDは直属の幹部に会う事は無かった。
「私、ママと一緒に街中にある大きな建物について行った事があってね?その時にいた若い男の人がハウンド・マスターだってママが言ってたわ。背がすらっと高くて、腰くらいまである白い髪の毛をポニーテールみたいにしてた。」
桃は出来るだけ詳しく思い出してくれているようだった。
「そう、なんだ。」
エリは驚いた表情をしている。
やはり、組織が裏で手を引いているに違いなかった。「でも・・・犬を操るだけで・・・裏方の仕事が多かったはずよ?」
「裏方?」
「ええ。研究チームっていうのかな?あの時は死神のデータをS-03に届けてたの。キャハッ!」
桃は死神を見て笑った。
勝手にデータを取られていた事にちょっと怖さを感じる。
「油断ならねぇ。知らなかったぜぇ・・・。」
死神はちょっとだけ桃から離れた。
「うち等S-02・・・つまりママ率いる部隊は実戦や証拠隠滅の仕事が多かったの。だから実戦データは一番集めやすかったんじゃないかな?キャハッ!」
何も楽しい事を言っていなくても桃は楽しそうに笑う。
「だから、2人、魔女の所、配属?」
エリは2人を見る。
仕事には能力的に向き不向きがある。
エリなんかは戦闘は全く出来ないが、死神も桃も戦う術があった。
「多分そうじゃね?戦闘要員っての?」
「体張るの多かったよぉ!私女の子なのに!」
2人は思い出したく無い事を沢山思い出した。
眉間にシワがよる。
「S-01はどんなことをしてたの?」
桃も興味を持ったようでエリに話を促す。
S-01とは鷲一の叔父率いる部隊の事だ。
すると今度はエリの眉間にシワがよる。
「夢、使って・・・証拠出ないように・・・人殺し。」
「ウへ・・・そっちもろくなことしてねぇな。」
3人は揃いも揃って眉間にシワを寄せた。
「この話やめたら?皆んな、眉間のシワが取れなくなっちゃうよ?」
1人、話に入れない杏は苦笑いしながらそう言うのだった。
「そうだ。本題!お願いある!」
唐突にエリは大きな声をだす。
「私たちを頼ってくるなんて、ある意味凄いね!」
ついこの間まで命の取り扱いをしていた仲だ。
桃はエリの図太さに感心した。
「そんな事言ってられない。夢・・・覚えてられない・・・多分、エリ、もうじき死ぬ。」
一言で言い切る。
「・・・え?」
3人は突然のエリの死の宣言について行けずに聞き返した。
「なんだってぇ?どうしてそう言い切れるんだぁ?」
「そうだよ、幹部が動いてるからって、死ぬって決まった訳じゃないんじゃない?」
死神とそして特に杏はエリの能力をよく知らない。
エリはそんな杏に自分の能力をかい摘んで説明する。
「私の能力、デジャヴ・ドリーム。人の不幸・・・つまり死を察知。予知夢見る。夢を生き延びる、記憶を現実に持ち帰れる。でも、夢の中で殺される、私、記憶引き継げない。」
そこまで聞くと、杏は首を傾げた。
「って事は・・・。もうデジャブドリーム?を見てるってこと?」
エリはその問いに首を横に振った。
「それさえ分からない・・・。でも、もし、今日夢が発動したら・・・3人も生き延びるの、手伝ってほしい。」
真剣な眼差しに死神はため息をついた。
「俺・・・何回お前ら殺したと思ってるんだよ・・・。そんな奴に助け求めるお前の気が知れねぇよ。」
死神はエリの図太さと言うか手段を選ばない所に呆れて口をへの字にした。
「やっぱり・・・死神・・・覚えてた?」
今までのルールを考えると当然の事だった。
加害者、つまり犯人も夢に深く関係している。
その為生き残れば記憶は残る。
「そりゃそうだぁ。てめぇら毎度殺しまくったの俺だぜぇ。毎晩毎晩・・・殺すのだってつらいんだぜぇ?」
「はぁ・・・。」
エリはこの会話に頭が痛くなる。
前回は加害者側だった死神は町中の人を毎晩殺していた張本人だ。
「え!?そうなの!?」
桃は初めて聞く事実に驚いた。
「いいな・・・あ、じゃなかった。大変だったね!キャハッ!」
拷問癖がある桃は少し怖い発言をしてすぐに訂正した。
「おま・・・。今、良いなって言いかけたろ。拷問は魔女にやらされてたんじゃなかったのか?」
死神はさらに3歩桃から離れた。
「まぁね!でも、自分では、ドSだと自負してるしぃ。キャハッ!」
悪びれもせずに桃が笑う。
「お前、絶対誰とも結婚できねぇ奴だなぁ。」
「あっ!!ひっどーい!!!」
その一言に桃は憤慨する。
「・・・はぁ・・・。」
エリは大きなため息を吐くのだった。
「キャハッ!本題から話それちゃったけど、良いよぉ?桃、付き合ってあげる!楽しそうだしぃ?」
桃は笑顔でそう答えた。
その一言にエリは顔を上げた。
「ウチも行く行く!パラサイト体験したい!」
「お前、遊びに行くんじゃないんだぞぉ?まぁ、俺様も行ってやるよ。戦闘力じゃぁ負けねぇぜぇ?」
3人はなんだかんだ言いつつも協力に応じてくれた。
「ありがとう!!今晩、よろしく。」
エリは笑顔で3人に感謝した。
「あ。でもさ。」
「?」
桃が指を顎に当てて考える。
「どこに行けばいいかぁ、解んないかもぉ。夢で起きてもエリに会えないんじゃ意味なくなぁい?」
桃は困った顔でそう言った。
「確かに・・・。」
エリもそう言われて困った。
しかし、桃は逆に笑顔を見せる。
「って訳でぇ?事件が終わるまで、ここに寝泊まりするといいんじゃないかなぁ?キャハッ!」
「へ?」
思っても見ない提案に死神が嫌な顔をした。
けれども杏はノリノリだ。
「賛成!!」
手を上げて賛同する。
「それならいつが事件でも一緒の場所からスタートできるじゃなぁい?」
「桃、賢い!そうする!!」
エリは桃の賢い一面を見た気がした。
「あぁ!?マジかよぉ。ってか、ここに4人かよ!?」
ただでさえ女の子2人と同室で肩身の狭い死神は更なる女の子の追加に嫌な予感しかしない。
「大丈夫!エリ、小さい!」
「そういう問題じゃねぇから!!」
死神は全力でツッコミを入れるが、思春期前のお子ちゃまエリには何のことかさっぱり分からない。
「まぁ、いいや。エリ、朱夏に連絡する!」
「いってらっしゃい!」
「楽しくなりそうだね!」
女の子達は揃いも揃ってはしゃいでいる。
「マジかよぉ。」
死神だけがこの状況に1人頭を悩ますのだった。




