表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/39

第9章 嘘と真実

丸尾の出してくれた車で訳5分。

朱夏と海馬とエリは心琴の家に到着していた。

朱夏達は車を降り、早速呼び鈴を押す。


―ピンポン・・・・・バタン!!


チャイムを鳴らすと驚くほど早くドアが開いた。

「お父さん、お母さん!?」

飛び出してきたのは心琴の妹の心湊だった。

「え!?」

「あ!」

心湊は帰ってきたのが両親じゃない事に気がつき驚いた。

3人を眺めるように見る。

「あ、あの?誰ですか?」

思っても見ない来客に心湊は戸惑った。

朱夏は一歩前に出る。

「私達は心琴さんの友達です。貴女は確か・・・」

「妹の松木心湊まつきみなとです。」

「私は早乙女朱夏と申します。こちらは海馬君、そしてエリですわ。」

「どうも!」

「よろしく!」

2人は軽くお辞儀をした。

心湊も少し警戒しながら軽く頭を下げた。

「ねぇ、心湊さん。心琴ちゃんは大丈夫なのかい?」

海馬は如何にも心配そうな顔をした。

その様子に心湊は目を泳がせる。

「わ、私、何も知らないの。」

「え?」

ふと玄関に目をやるとそこには毛布や飲み物があった。

心湊はどうやらずっと玄関で家族の帰りを待っていたようだった。

「昨日、夜間にやってる緊急病院へ行ったのに、まだ帰ってこないんです!」

不安で仕方がなかったのだろう。

心湊の泣きそうな顔に3人は目配せする。

「ご両親からは何か連絡はありませんか?」 

「何も無いの。心配で心配で私、玄関にずっと座ってたんです。」

「それであんなに早くドアが開いたのですね?」

呼び鈴を押して玄関のドアが開くまでものの2秒といった所。

リビングから来たにしてはあまりに早い。

「差し支えなければ、どこの病院へ行ったのか教えていただけますか?お見舞いへ行きたいのです。」

「えっと、新聞紙に書いてあった所です。ちょっとだけ待って下さい。」

心湊は走って家の中に入るとすぐに新聞紙を持って戻ってきた。

「ここです。」

新聞紙には赤い丸で当番病院の名前が囲まれている。

「西森の上病院?」

その名前を聞いて海馬は顔を引きつらせた。

朱夏はこの名前を昨日聞いたことを思い出す。

「そこって。昨日、海馬君のお母様が危ない病院の筆頭にあげてた場所じゃありませんか!?」

反射的に口出してしまう。

「え!?」

その一言を聞いて心湊の顔は青ざめた。

朱夏は青ざめた心湊の顔を見て慌てて口を塞ぐ。

「ちょっと!!朱夏ちゃん!?」

海馬は言ってはいけないワードを朱夏が言ってしまった事に焦る。

しかし、口から出てしまった言葉はもう二度と取り戻せない。

「ごめんなさい!ただの噂だから、気にしないでください!!」

気にするなと言っても聞いてしまった以上、心湊はいてもたってもいられなくなった。

「あ、あの!私も連れて行って下さい!!西森の上病院に!!お願いです!!」

「えぇっ!」

覆水盆に返らず。

もう時すでに遅し。

一度火が付いた心湊は止まらない。

驚く3人を余所にとてつもないスピードで部屋へ駆けていく。

「絶対ついて行きますからね!!」

元からアクティブな性格の心湊は考えるよりも行動派。

直ぐに鞄などを準備して戻ってきた。

さらに、心湊はさっさと玄関のドアを閉めると、3人を車へ押しやる。

「もう・・・こちらの話を聞いてくれそうにないね。」

困った顔で海馬が言う。

「朱夏・・・うっかり多い。」

「う・・・二人ともごめんなさい。」

朱夏は素直に謝った。

この後に鷲一の家へ行く予定だったが止むなく変更となる。

「こうなっては仕方がないね・・・連れて行こう。心琴ちゃんが心配なのは変わりないんだし。」

朱夏は助手席に座って、残りの3人が後ろに座った。

「じゃぁ・・・行こうか。西森の上病院へ。」

車は鷲一の家を通り越して山の方へ向かっていくのだった。


◇◇


車を走らせる中、海馬はぼーっと外を眺めている。

「鷲一、大丈夫かな・・・。」

何気なくつぶやいたつもりだったが、隣に座っている心湊は目を見開いた。

「え!?あなた達も彼氏さんの事知ってるの!?」

心湊は驚いた様子だ。

「知ってるも何も・・・僕はとても仲がいい友人だと思っているよ?」

海馬は飾らずにそう言った。

「鷲一さんにはたくさん助けてもらいました。」

朱夏も笑顔でそう言う。

「鷲一、良い人!エリも鷲一大好き。」

もちろんエリも賛同する。

「え・・・?」

心湊は鷲一の好評っぷりに驚きを隠せない。

聞いている話とまるで違う。

「だ、だって!お父さんが・・・お姉ちゃんがこんな酷い目にあったのは・・・彼氏に襲われたからに違いないって・・・。」

心湊は昨日の家族の様子をそう語る。

「あの人・・・そんな事言ってるのか・・・。」

海馬は悲しい顔をした。

昨日の父親の様子からして不思議ではない。

父親は明らかに鷲一の事を犯人だと決め付けていた。

それをそのまま妹に伝えたのだろう。

そのせいで、妹は鷲一を怖い悪者だと思っている。

「あ、あのね・・・?」

海馬が誤解を解こうと口を開いたその時、凛とした朱夏の声がそれを遮った。

「昨日・・・鷲一さんから連絡があったのは4時過ぎでした。」

「・・・連絡ですか?」

いきなり話始める朱夏に心湊は聞き返す。

「それはすごい慌てっぷり・・・心琴さんが行方不明で、一緒に探して欲しいと言う旨の連絡でした。」

「・・・?」

心湊は一先ず朱夏の話を聞いている。

会話の真意を見いだせない。

「鷲一さんはそれまでも、ずっと走り回って心琴さんを探していたようでした。話を聞くと心琴ちゃんが居なくなったのが13時頃だそうです。その時点で3時間ですね?」

「??」

心湊は首をかしげて聞いている。

「合流して手分けして探して、心琴ちゃんを保護できたのは7時過ぎ。合計6時間ですよ?」

「あの・・・何が、言いたいのかよくわかりません。」

そう言われても心湊は朱夏が言いたいことが理解できずに困惑する。

朱夏は助手席から振り返り、心湊の目を見てしっかりとこう言った。


「本当に大切な人じゃなければ、6時間もの間、見知らぬ街を探し回ったりしますでしょうか?」


「・・・え・・・。」

そう言われてようやく心湊は気が付いた。

先程から3時間だの6時間だの言っていたのは鷲一が心琴を探し続けた時間の事だったのだ。

そう言われてみると、6時間とはとても長い時間のように思われる。

「あなたのお父さんはきっと、心琴さんの変わり果てた姿を見て頭に血が上ってしまっていたんだと思います。」

「そう・・・なのかな・・・?でも・・・。」

それでも、お父さんが言っている事が間違っているのか心湊には解らなかった。

今、朱夏が言っている事が真実かも嘘かもわからないからだ。

それなら初対面の人より自分の父親の発言の方を信じるのが普通というもの。

そう思い、朱夏も全てを否定はしなかった。

「私はこう言いましたが、心湊さん、・・・お父さんの方が正しいかもしれませんよ?」

「へ??」

朱夏は悪戯に笑って見せる。

心湊は目から鱗が落ちたような気分だった。

てっきり自分の父親の言う事が否定されると思っていた。

けれども、目の前の女性はそんなことは言わなかったのだ。

「ですので・・・鷲一さんに出会ったら、「鷲一さんという人」をありのままに見て感じてください。鷲一さんが良い人か悪い人かあなたが見て判断するのです。私たちの話やお父さんの話ではなくご自分の目で。」

そして、心湊は鷲一という人に会ってみたいと少し思うのだった。

「そっか・・・。うん。そうですね。私、お父さんから聞いた話で決めつけようとしてたかも。」

「うふふっ。わかっていただけてとても嬉しいです。」

朱夏は目の前を向くと優しく笑う。

(・・・この人・・・素敵だな・・・。)

心湊はむしろ朱夏に対して素敵だと感じていた。

(お姉ちゃん、いい友達いっぱいいるんだなぁ。)

そう思うと少しだけ心湊は笑顔になるのだった。

二人の会話を静かに聞いていたエリも海馬も優しい顔になっている。


心琴のいるはずの西森の上病院はもう目の前だった。


◇◇


一行は病院へ到着して真っ直ぐ入り口へ向かった。

受付へ心湊が駆け寄る。

「あの、私の家族来ませんでしたか?!夜間に・・・はい。患者の名前が・・・松木心琴です・・・はい。」

心湊は早速看護婦さんに話を聞いている。

朱夏と丸尾は心湊の話を後ろで聞いて、何かあったらサポートしているようだった。


「なぁエリちゃん。」

海馬とエリは待合室の椅子で座って待った。

待っている間、海馬は神妙な面持ちでエリに話を切り出した。

「海馬、どした?」

「昨日さ、デジャブ・ドリームを使った?」

「え?」

今朝の夢がどうしても気になっていた海馬はさりげなく聞いてみる。

「うーん・・・。わかんない。けど、確かに、朝少し、疲れてたかも?」

「疲れ?」

「うん。デジャブ・ドリームを使う、私、疲れる。」

「そうなんだ・・・?」

エリも能力を使うとやはり他の能力者同様に疲れを感じることを海馬はこの時初めて知った。

前回の事件で逮捕された魔女の娘の桃は静電気を操る能力者だが、途中から静電気ボールでの攻撃が出来なくなっていったのをうっすら覚えている。

「七夕の時、能力、何度も使ったみたい。朝、すごく、疲れた。」

「そうっか・・・って・・・あれ?」

そこまで聞いて海馬あることに気づく。

「どうした?」

「使ったみたい?みたいって・・・覚えてない事ってあるの?」

嫌な予感がした。

「うん。私、死ぬ。記憶、私も引き継げない。あの時毎回電車にひかれて死んでた。覚えてなかった。」

「!!!」

それを聞いて海馬は一気に汗をかいた。

「って事は・・・エリが死んだら・・・デジャブ・ドリームで起きた事って覚えてないの?」

てっきり能力者であるエリは全てを覚えているものだと思っていた海馬は驚いた。

「そう。エリ死ぬ。エリ覚えられない。他の人と同じ。」

少し困った顔でエリはそう言う。

エリの能力は広範囲で発動できる代わりに能力の細かい調整はほぼ出来ないらしい。

言ってしまえばデジャブ・ドリームは「今のままだと結果的に起こる未来」を映し出す鏡に過ぎない。

それを聞いて海馬は焦った。

自分の見た悪夢が「エリが覚えていない」悪夢だとするとまずい。

けれども、エリを心配させるのも悪いと思って海馬は作り笑いでこう言った。

「もし、もしだよ?明日の朝に疲れを感じたら教えてくれるかい?」

そんな海馬にエリは訝しげな顔をした。

「わかった。でも、どうして?」

探りを入れてくる海馬にエリは訳を聞く。

「いや、今朝悪夢を見たんだ。それで気になって・・・。」

「誰か死ぬ?」

「うん。」

海馬が寂しそうに笑うのをエリも感じる。

嫌な夢を見ると誰でも不安になる。

予知夢だと尚のことだ。

「・・・わかった。気を付けて感じてみる!」

エリは笑顔でそう言った。

「ありがとう!」

その顔に海馬も少し笑顔になった。


「おーい、病室わかったみたいだよ。」

そこまで話が終わった時、丸尾がこちらに手を振った。

「今、行きます!」

海馬とエリは手をつないで3人のいる方向へ走り出すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ